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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第2章 ~~勇者候補育成校入試編~~
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第18話(前編)

まずは前編です。

よろしくお願いします。

「本当に出てくるとはね」


 亡霊騎士は重い音を立てて、地面に降り立つ。


「嬉しいよ……。本当はね。出てきてくれないんじゃないかと思ってたんだけど……。さすがは勇者だね、と褒めてあげるよ」

「あんたたちの狙いは何?」


 後列に立つリコが尋ねた。


「それを言ったところで、どうなるって言うんだい? 君たちはここで死ぬっていうのにさ」


 亡霊騎士は漆黒の魔剣を抜いた。


 瞬きすら許されぬ緊張感が、4人にのしかかる。


「いい加減、君たちとこうして語り合うのも飽きてきたんだ」


 “だから……死ね――!”


 殺意が膨れる。

 開戦の合図だった。


 先手は、エルナたちだった。


 定石通り、リコが補助魔法をかける。

 ヴェルテと、もう1人はマリーだ。


 2人は迷わず魔族に向かっていく。


 仕掛けられた亡霊騎士は「はっ」と笑った。


「今気付いたけど、1人増えているねぇ……。もしかして君かな、僕の兜をこんな無様な形にしてくれたのは」


 鋭い殺意が、魔法使いに向けられる。


 後退したい気持ちを必死に堪えながら、マリーは距離を詰める。


 先に相対したのはヴェルテだ。

 手には剣を持っていない。補助魔法によってブーストされた無手だけ。


「あれ? 君……戦士じゃなかったっけ?」


 躊躇わずヴェルテは突っ込んだ。

 馬鹿が! 亡霊騎士は躊躇せず魔剣を振り下ろす。


 瞬間、剣が弾かれた。


「なに?」


 戦士の女がやったのではない。


 何か高速で打ち出されたものが、剣先に当たり弾かれた。


 なんとか剣は離さない。

 万歳をするような姿勢になった騎士の懐に、ヴェルテが潜り込む。

 迷わず拳を打ち込んだ。


 ゴン、と固い音が響く。

 魔法の補助を受けた拳が、わずかだが鎧に傷を付けた。


「くそ!」


 亡霊騎士は無理矢理身体をひねって、ヴェルテに振り下ろす。

 だが、再び剣が何かによって弾かれた。


 悪態を吐きながら、目の端で捉えたのは、魔法使いの少女――。

 後ろに回り込んだ瞬間。


 【熱限突破】ハウ・ブリーン!


 人間でいう肝臓がある部分を狙い撃ちする。


 強い衝撃に、亡霊騎士はぐらりとのけぞった。

 同時に確信する。

 先ほど、自分が受けた打撃だと――。


 騎士は怒りをみなぎらせて、身体を一回転させながら、横に――。


 ――薙ぐはずが、今度は肩に何かが当たり、回転が止まる。

 マリーは隙を見て、後退する。


 何が起こったのか、確認する必要があった。

 亡霊騎士は前衛のヴェルテ、マリーの奥を見る。


 エルナが大量の鉄の飛礫を持って狙い付けていた。


 ――あれか!


 エルナに直進した。


「ば~か」


 罵詈が聞こえた瞬間。


 【神罰】アルテラ!


 光の奔流が亡霊騎士に落ちてきた。


「ぐうぅ!!」


 魔族は呻き声を漏らす。

 兜や鎧の一部分の魔法耐性が機能しなくなり、アルテラの効果が浸透する。

 それでも鎧の上から火をあぶられる程度のものだが、亡霊騎士は足を止めた。


「効いてる!」


 リコが声を上げる。


 アルテラの光がなくなった瞬間、再びヴェルテ、マリーが突っ込む。


「なめるな!」


 痺れが残る身体を無理矢理動かし、魔剣を振るう。


 再び弾かれる。


 ヴェルテの拳が先ほどと同じ位置に突き刺さる。

 魔族は蠅を振り払うように、剣を持つ手とは逆の手を薙ぐ。

 が、戦士の女はすでにいない。


 現れたのは、魔法使いの女!


 【熱限突破】ハウ・ブリーン!


 また打撃。


 今度は堪えきれず、吹っ飛んだ。

 木の幹にぶち当たり、倒れる。


「くそ!」


 倒木の音を聞きながら、立ち上がる。

 目の前には戦士と魔法使い。


 亡霊騎士は剣を振るう。

 初動の前に、鉄の飛礫が剣を弾く。

 二者の拳が鎧を貫いた。


 後衛に目をやる。

 また神官の女がアルテラの準備をしていた。


 亡霊騎士は逃げるようにその場を離れる。


 ――なんなんだ、これは……。


 実は、ダメージはそれほどない。

 少し火傷をした程度だ。


 が、攻撃が全く出来ない。

 すべて初動から封じられる。

 賢者の女を攻撃しようにも、後衛を潰そうとすれば神罰魔法が降ってくる。


 このまま打撃を受ければ、鎧にかけられた魔法が完全に停止するかもしれない。


 ――くそが!


 また悪態を吐く。


 苛立たしい。全くピンチでもないのに、焦る自分に腹が立つ。


 兜や肩、腰の部分から黒い霞を吐き出しながら、亡霊騎士はそんな事を考えていた。


次の中編は18時投稿予定です。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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