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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第2章 ~~勇者候補育成校入試編~~

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第5話

まさかの再登場。


(たぶん、きっと誰も望んでいなかったはず)

 姉と別れたマリーは、いまだショックから完全に立ち直れないでいた。


 顔を地面に向け、とぼとぼと歩くパートナーの背中を、リコは思いっきり叩く。

 勢い余ってマリーはつんのめった。


「痛いよ~。リコちゃん」

「いつまでもくよくよしない! 下を向いてる余裕なんてないわよ。――あと『ちゃん』付けはやめて。なんか私が年下みたいだから」

「う~~」


 背中をさするマリーは、少し涙を浮かべながら、恨みがましくリコを見つめた。


「そんな顔したってダメよ。とっとと他のメンバーと合流して、早いところダンジョンに行きましょう」

「え? もう他のメンバーって決まってるの?」

「当たり前でしょ! 昨日のうちに、話は付けてあるの。マリーと同じようにね」

「リコちゃん、スゴい!」

「だから、『ちゃん』付けはやめて。さ、行くわよ」

「うん」


 試験会場から離れ、2人がやってきたのは、中央広場だった。

 昨日、マリーがリコと初めて会った場所で成績表も残っていた。


「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!」


 下品な男の悲鳴が上がる。


「はあはあ……。イエッタ……。ユーの肌……意外とすべすべなんだな。雌のオタマジャクシみたいな」

「お、おおお落ち着け! ポポタ! 顔を近づけてくるな。いき、息がくせぇ! なんか田んぼの臭いがするぅ! やめろ! 近づくな! てか雌のオタマジャクシなんているのかよぉ!!」

「な、なめていい! コラーゲン摂取!」

「やめろ! オレは親父にだってなめられたことないんだ!」

「じゃ、じゃあ食っていい……?」

「え? えええ? なんですか? 食うって……。それって文字通りの意味ですか? それとも性て……隠語的なヤツですか? ちょっと待て! おいぃぃ!!」


「何やってんのよ? あんたら……」


 中央広場にいたのは、少年1人と蛙族1匹だった。

 少年は如何にも軽薄そうな顔をしていた。

 やや垂れ気味のヘーゼル色の瞳。無精なのか、それとも手入れしてそれなのかわからないが、短い顎髭を生やしている。

 砂柄の迷彩服に、同じ柄のバンダナを頭に巻いている。

 バッチには『技術官志望』と書かれていたが、格好は盗賊みたいに見える。それも親玉ではなく、下っ端という感じだ。


 よくわからないのは、その少年が木に縛られた状態でいることだ。


 そして縛られた少年以上に目を引くのは、蛙族の受験生だった。


 つるりとした明るい黄緑色の肌。本当に宣言通り、人を食ってしまいそうな大きな口。目は顔の半分ぐらいの大きさがあり、黒々と常に潤いを帯びている。

 三つ叉に別れた手と足は、ぷよぷよしていて柔らかく、前を開いたローブの下には鉄で出来た胴当てを着込み、真っ白なお腹を隠している。

 青いローブには『戦士志望』と書かれていて、腰には細身の剣を携えていた。


 厳密に言えば、蛙族は魔族だ。


 ただ、温厚で陽気、力の差も人間と対して変わらない事から、猫族や兎族、人魚と同じく古くから人間の社会に溶け込んでいた。

 パーティの中に、蛙族がいることは珍しくはないのだが、受験生に会うのはこれが初めてだった。


「お! リコ! てめぇ、早くこの縄をほどけよ!」

「あんたが逃げようとするからでしょ? 嫌なら自分でほどきなさいよ。あんた、技術官志望なら容易いでしょ?」

「勝手にほどいたら、ポポタに食っていいって言ったのはてめぇだろ! ヤツ、マジだぞ! 目がマジだ!」

「はいはい。ポポタ、イエッタを食うのは、私がトップ合格してからにして」

「ふむ……。仕方がない。……まあ、イエッタのような煮干しでは、ミーの至高の胃袋を満たすことはできまい」

「さっきまで涎ガンガン垂らしていたのは、どこの誰だよ!! ――お、おお! 女の子じゃん!」


 自分よりも小さなリコの後ろに隠れて様子を窺っていたマリーにいち早く反応したのは、イエッタという少年だった。


「彼女はマリー。私たちのパーティの新メンバーよ」

「ひょー! これは燃えてきたぜ! ……俺はイエッタ・タータッタってんだ。よろ――――」

「おおう! マドモアゼル! ミーの愛をお受け取り下さい!!」


 いきなり大輪の花と蛙のどアップが、マリーの視界に映し出される。

 うひぃ! と悲鳴を上げて、リコを盾にしながらマリーは顔を真っ青にして、ぶるぶる震えた。


「リコ! リコぉ! こ、この人たちなんなの?」

「あんたたちに手を出すなと言っても無駄なんでしょうけど……」


 ポポタとイエッタの瞳が、ピキューンと音を立てて光った。


「この子の姉の名前はエルナ・ワドナー……。知ってると思うけど、今のところ総合でトップに立ってる女よ」

「「…………!」」


 2人の顔が一気に沈んでいく。

 それを見て、マリーは急に思い出した。


「ああ! あなたたち! 確かお姉ちゃんをナンパしてた!」

「ナンパ?」


 青筋を浮かべて、リコが反応した。

 ゴゴゴ、と背に擬音を掲げ、2人に詰め寄る。

 袖をまくり、ぐるんぐるん腕を回した。


「あんたたち……。あの女にまで手を出してたの……」

「ひ! ひいぃぃぃぃ!! リコ、落ち着け! ほんの出来心だったんだ!」

「そ、そうである。……す、すべてイエッタが仕掛けた策略――」

「ポポタ! てめぇ! なに人のせいにしてやがる! お前がそもそも……」



 “やかましい!!”



 閑話休題――。


「もう一度、ちゃんと紹介するわ。男の方はイエッタ・タータッタ。一応、技術官志望だけど本人は遺跡ハンターを狙ってるらしいわ。神歴に作られた神々の遺産だっけ? ……まあ、こんなんだけど俊敏性と応用力は、トップクラスの能力の持ち主よ。俊敏性はエルナを超えて1位」

「よ、よぼじぐ……」


 目に青あざ、頬には殴られた痕を残したイエッタは、敗北を認めるように頭を下げた。


「で、目立つ風貌の蛙族が、ポポタ……なんだっけ?」

「誠に遺憾である! パーティの名前を忘れるとは! それに蛙族の王子であるミーへのこの仕打ち! これは外交問題である!」

「う・る・さ・い」


 まだしばき足りないのかしら――というオーラを発しながら、リコはにこやかに微笑む。


 黄緑の身体が、青く変色させ、ポポタは身体を震えさせる。


「な、なんでもないのである。ミーは、今後とも人間――リコ・モントーリネ殿と深い友好関係を結びたいのである。――ちなみにポポタ・マナイケル・タイヤというのが、ミーの正式な名前である。以後をお見知りおきを、マドモアゼル」

「よ、よろしくお願いします」

「まあ、見ての通り変人なんだけど、瞬発力はさすが蛙族ってとこね」

「お姉ちゃんよりスゴいの?」

「ええ……そうよ。ダントツのトップ――。基礎体力項目は、満遍なく高いわ」

「でも、よくこんな2人とパーティになることが出来たね」


 ――ちょっと変わってるから、メンバーに選ぶ人が少ないかもだけど……。


 マリーは感心しつつ、胸中で呟いた。


「ホント言えば、筋力トップのバールとか仲間にしたかったのよ。ところがあいつ、『オレのカノジョになるなら考えてもいい』とかくっだらないこと言ってきてさ。ムカつくから蹴っ飛ばしてやったわ。もっと紳士キャラだと思っていたのに。とんでもない女たらしよ。……で――腹が立ってたところに、こいつらが私をスカウトしにきたの」

「スゴい! リコ、有名人なんだ!」

「ええ。そうね。……でも初めて聞いたわ。『へい! 彼女ぉ! お茶しない!』っていうフレーズ。王都では見かけないわねぇ。田舎では常套句なのかしら……」

「さ、さあ……」


 ――リコにも同じように声かけてたんだ、この2人……。


 改めてリコによって、ボコボコにされた2人を見つめる。

 そしてマリーは1つの結論に至る。


 結局、一番怖いのはリコなのだ、と。


「さあ、とっとと出発よ! 行くは《ロケール渓谷》! 目指すはダンジョン最奥のチェックアイテム!」


 息巻くリコに、他の3人は「お、おおー」と小さく声を上げた。






 2日目の実技試験の内容は至ってシンプルだった。


 4、5人のパーティを編成し、E級ダンジョン《ロケール渓谷》に点在するチェックアイテムを回収し、戻ってくる。

 期間は、明日の夕方まで。

 チェックアイテムの未回収、もしくは期間までに帰ってこなければ、採点は0点。実質、実技試験にクリアできなければ、入学は諦めた方がいいだろう。


 点在するチェックアイテムの数は、80カ所。今年の受験者数から算出するに、出来上がるパーティの数は100から120組。つまり5分の1以上が最終結果を待たずして、不合格になるという計算だ。


 各チェックアイテムの点数は異なっており、ダンジョンの奥に行けば行くほど、配点が大きくなる。ただし戻ってこられなければ、すべてパー。パーティを急いで編成し、出発するのはこの理由からだ。


 チェックアイテムを複数所持は禁止。

 またそれぞれのパーティには、B級以上の勇者候補がひっそりと監視しており、パーティの連携やコミュニケーションの頻度、セーフポイントでの過ごし方、メンバーの役割、区分けなど、実に56項目で加点減点が行われる方式になっている。


 E級ダンジョンのモンスターは、少し腕っ節に自信がある大人ぐらいなら対応できる程度の強さだ。

 しかし、それはまともに対峙した時のみに限る。

 モンスターもまた生き物であり、捕食者だ。正面からぶつかってくることなどあり得ない。


 勇者候補育成校を受験しにきた子供達の大半は、何かしらの戦闘訓練を受けている。中にはエルナのように、暫定ライセンスを授与されたものもいるだろう。


 そういった人間からすれば、E級ダンジョンは容易い。


 ただ……。


 「ダンジョンは水物だ」という格言があるぐらい、何が起こるかわからない。

 前触れもなく、唐突にトラブルはやってくる。

 たとえ、それが年に1回行われる勇者候補育成校の試験日だったとしても……。


 そして、ダンジョン内に立ちこめ始めた黒い空気に、気付いたものはまだいなかった。


次話はとうとうダンジョン攻略編です。


※ 明日は前後編になります。

  前編12時。後編18時です。

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