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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第2章 ~~勇者候補育成校入試編~~

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第3話(後編)

ちょっと短いですが、お楽しみ下さい。

「え……?」


 マリーはまた言葉を失った。

 リコに会ってから、驚いてばかりだ。


「あ? でも? たぶん、私……お姉ちゃんのパーティに参加、する……から。あ! そうだ! 良かったら、リコも一緒に!」


「死んでもイヤ!」

「え! ええ!?」

「私が欲しいのは、マリー……あなただけよ」

「でも、お姉ちゃんが……」


 リコは怒りを抑えるように長く息を吐き出した。


「一旦、私の話を聞いてくれる?」

「う、うん……」

「あなたは魔法で、私は信仰で、あんたのお姉ちゃんに勝ってる。あと何人か、エルナ・ワドナーに能力的に上回っている人材を探す。筋力や瞬発力が高い戦士なんかが理想……。もう目星はついてるわ。それで逆襲する!」

「ぎゃ、逆襲!」

「そうよ! トップで胡座をかいてるあんたの姉を引きずり下ろす。個の力ではなく、パーティの力によってね」

「そんな! 無理だよ!」

「何度も言わせないで! できる! 不可能なんて言わせない! パーティの強さを証明するためには。最高のパーティが、最高の個に負けてはいけないのよ!」


 リコの言わんとしていることを、マリーはなんとなく理解していた。

 姉より能力が上回った人材を結集し、トップである姉に対抗する。

 その1人にマリーが選ばれた。


 だけど、何故、リコがそこまで闘争心を剥き出しにして、姉に対抗するのかはわからない。


「あんたの疑問はわかるわよ。何故、あんたの姉に“私が”こだわってるかってことでしょ? あんたの姉をトップに引きずり下ろしたところで、成績が変わるわけがない。なら何故? ってとこ?」

「うん……」

「単に気にくわないの。本当なら私があそこにいたかもしれないのに!」


 姉が取材を受けているであろう部屋の方に、視線を向ける。

 部屋は煌々と明かりが灯り、まだ人だかりが出来ていた。


「それに――なんでも出来るからトップだなんて、ふざけているわ! そんなのがいたら、パーティいらなくない? それってアヴィンが目指したパーティなの?」

「あ……」

「あんただって、勇者候補を目指しているんだから、勇者アヴィンに少なからず憧れて受験しにきたんでしょ? その彼の理念が覆されようとしている。それを見過ごすなんて、あんたは出来るの?」


 勇者アヴィン……。


 その言葉を聞いた瞬間、マリーの中で今まで押されたことのないスイッチが入ったような気がした。

 闘争心……とでもいうのだろか。

 怒りとも、興奮とも呼べない、何かいてもたってもいられない――高揚感が生まれるのを感じる。


 心がざわつく。


 ここに今、立っていることさえ罪のような気がしてきて、無性に走り出したくなるような気持ちになってくる。


 ――そうだ。……思い、出した。


 小さい頃の記憶……。

 勇者アヴィンの『大戦史』を初めて自分の力で読み終わった時の感情に似ている。

 それは姉がまだアヴィンという存在を知らない時の話。


 ――そうだ。私は姉になりたかったんじゃない!


 勇者アヴィンになりたかったんだ!!


「心に炎は入ったかしら?」

「あの……」

「何も言わなくていいわ。……ただ、この手を握ってくれるだけでいい」


 リコは手を差し出す。


 マリーは一瞬戸惑いを見せたが、しっかりとその手を握った。


「よろしく! リコ!」

「よろしく、マリー。私のパーティにようこそ!」


 何故かその時、初めて自分の名前を呼んでもらえたような気がした。


個人的に全キャラの中で、リコが一番好きです。


※ 明日も前後編です。

  前編12時。後編18時です。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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