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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第2章 ~~勇者候補育成校入試編~~

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第1話(後編)

第1話後編です。

エルナ・ワドナーにとって、妹の存在は妹でしかなかった。


 時々、ため息をつきたくなるほど不器用で、同い年とは思えないほど小さな存在だが、それでも守ってあげたくなる可愛さを秘めている。

 故に「妹」は「妹」なのだ。


 ところが、冷静沈着なエルナも今回ばかりはいささか落ち着かなかった。


 妹が勇者候補育成校を受験するというのである。


 小さい頃から勇者候補になる夢を持っていたことは知っていた。

 エルナが勇者候補を目指したのも、実は妹に看過されたからだ。

 言ってみれば、妹の存在なくして、勇者候補を目指すことはなかっただろう。


 師匠をつけてほしいと父に願ったのはエルナだった。


 それから、同じ師の元で教えを受けた。


 実力差はすぐについた。

 こうなることはなんとなく予想はできていたが、エルナはおくびにも出さず、後ろから必死に追ってくる妹を引っ張り続けた。


 本当はやめてほしかった。

 勇者候補など彼女に向いているとは思えないし、何より危険だ。

 もしかしたら、エルナが言えば、2つ返事で妹は諦めてくれたかもしれない。


 でも、どうしてもエルナには、妹の道を閉ざすことが、彼女を守ることになるとは思えなかった。それなら、側にいて彼女の歩こうとする道を、切り拓いてやろうと考え、妹をサポートし続けた。


 しかし自分にはどうしようもない事が起こった。


 妹は賢者になれないとわかったのだ。


 包み隠さずいえば、妹はこれで諦めると思った。

 妹の勇者アヴィンに対する憧れは、人一倍強い。姉の自分が嫉妬を覚えるくらいにだ。

 その勇者アヴィンの職業である「賢者」になれない。

 妹の苦しみは、いかほどであったか、姉である自分でも想像できなかった。


 だから、エルナは自分から「やめろ」とは言えなかった。

 妹を守ると決めた彼女なりの矜持でもあった。


 結果的に、妹は「魔法使い」を選択した。


 エルナは単純に驚いたが、何も言わなかった。

 そしてとうとう魔法使い志望として、今日受ける事になったのだ。




 午前中の筆記試験が終わったが、エルナは心ここにあらずだった。

 試験時間中も、妹のことで気が気でなかった。


 幸いエルナからすれば試験は易しく、確実に満点だろうが、今はそれが問題ではなかった。


「へーい、カノジョ! ひとりぃ? オレたちとランチしない?」


 古典的なナンパ方法で声をかけてきたのは、如何にも頭悪そうな男だった。


 胸につけられた受験票代わりのバッチには『技術官志望』と書かれていた。

 その割に、男の姿はまるで盗賊のようだ。


 身体も細身で、腰に2本のナイフを差し、他にも何やら道具のようなものをじゃらじゃらと提げている。

 おそらくダンジョンに落ちてる遺品狙いの盗掘者か、『終わらない戦争』以前に作られた遺跡を探索する『遺跡ハンター』志望者だろう。


「いーや、マドモアゼル。ミーと川辺でティータイムとしゃれ込もうではあーりませんか」


 いきなり大輪の花束を差し出された。


 隣を見ると、人の大きさぐらいのカエルが2本足で立っていた。


 声こそ上げなかったが、エルナは驚き一歩退く。

 その反応を見て、カエルはべろりと長い舌を出して、笑った。


「おやー。マドモアゼルはミーたち蛙族とは、ファーストコンタクトですかな?」

「えっと……。ごめんなさい。ちょっと顔が近くて。驚いただけ」

「ほほう」


 カエルはずいっと顔を寄せてくる。


「ならば、このミーが蛙族悲劇の500年を、黎明期、黄金期、ポポタ誕生期の三部作に分けて、面白おかしく語ってあげましょう!」


 ――悲劇を面白おかしくなんだ……。


 引きつった笑みを浮かべながら、エルナは内心呟く。


「おい! ポポタ! 先に声かけたのは、オレだぞ! あ! ちなみにオレはイエッタ・タータッタ。見ての通りの技術官志望……」

「シャラップ、イエッタ! ユーはマドモアゼル扱い方がなっていないから、ミーが教えてやってるんだ!」

「何が悲しくて、蛙族からナンパを習わなければならないんだよ! てめぇは田んぼにでも入って、オタマジャクシで追いかけてろよ!」


「あの!」


「「なんだ?」」


「うるさいんで! あっち行っててくれませんか?」


 ムキッと青筋を浮かべたエルナが、にこやかな顔で微笑んでいた。

 何かを悟ったのだろう……。

 イエッタとポポタの顔がみるみる青くなっていく(ポポタは元々青かったが)。


「「失礼しました!」」


 2人はお手上げと言わんばかりに、諸手を挙げて逃げていった。


「まったく……。試験会場でナンパするなんて、何を考えているのかしら」


 腰に手を当て、息を吐く。

 すると。


「お、おおおおおお姉ちゃん……。だだだだ、だだだいじょうぶ?」

「うわあ! びっくりした!!」


 振り返ると、草場に幽霊――もとい、青白い顔した妹マリーが立っていた。


 一般的な魔法使いの黒装束に、とんがり帽子。師匠から贈られた精霊木の杖を握りしめている。今にも泣きそうな顔で、全身をぶるぶる震わせていた。


「ご、ごめんねぇ……。な、なんか声かけづらくって……。大丈夫だった?」

「大丈夫よ、あんなの……。マリーこそ大丈夫じゃなさそうだけど。試験はどうだった!」


 シャキ!! と音がするぐらい、マリーは背筋を伸ばす。

 その顔から今度は汗が溢れ出てきた。


 涙を流したり、汗を掻いたり、忙しい妹である。だがそこが可愛い。


「う、うん。たぶん大丈夫……」

「マリー。お姉ちゃんの目を見て話そうね」

「は、はい!」


 再びシャキ!


「そう。……あなたのことだから、長文記述の問題とかで時間とか使って、最後まで解かずに試験が終わったんじゃないかって気が気でならなかったけど」

「ドキッ! なんで知ってるの! だって、賢者と魔法使いの筆記試験は違うのに……」

「図星かあ……」


 エルナは頭を抱えた。

 マリーは必死に赤毛を振った。


「だい、大丈夫だから! 最後まで答えを書いたよ。……お姉ちゃんからもらった炭筆が役に立った」

「ああ……。そう言えば、そんなこと書いたわね。良かったわ。役に立って。さあ、昼食にしましょう」


 エルナは自前で用意したランチバスケットを掲げる。

 木の皮でできたバスケットから、いい匂いが漂ってくる。

 マリーは思わずその空気を一杯に吸い込んだ。


「行くわよ」

「うん!」


 そしてワドナー姉妹は昼食場所へと向かった。


というわけで、タイプの異なるワドナー姉妹が、

この章のメインヒロインになります。

お楽しみ下さい!


※ 明日も前後編です。

  前編12時。後編18時になります。

  よろしくお願いします。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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