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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第1章 ~~セラフィ編~~

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エピローグ  ~~ セラフィ編 ~~

セラフィ編のエピローグです。

 私の名前はセラフィ・ヤーマンド。


 ジョブは賢者。


 かつてパーティに属していたが、今はソロで勇者候補をしている。


 ソロで勇者候補は、パーティと“契約”することによってダンジョンに潜り、獲得した代金の一部を報酬としてもらう職業だ。

 実力があれば、普通にパーティにいるよりも、実入りはいい。

 だから、ソロの勇者候補はさほど少なくない。


 それに……私のように仲間を失い、たった1人残ってしまった勇者候補という例は、勇者候補大時代と呼ばれる世界で、さほど珍しいことでもなかった。


 先ほども言ったが、私もかつてパーティに属す普通の勇者候補だった。


 つまり、仲間というものがいたんだ。


 そして失った。


 当たり前のように悲しかった。


 けれど、それ以上に怖かった。

 物言わぬ骸が、仲間の魂が、ずっと私の聞こえないところで、恨み言をいっているのではないか。私を指さし、罵倒し続けているのではないか……。


 ――お前を信じていたのに……。


 悪夢は何度もこの言葉とともに終わった。


 そんな時、酒場で知り合った吟遊詩人に諭され、ソロの勇者候補をやってみることにした。


 いつか自分の罪悪感を消してくれる人間が、パーティが現れるかもしれない。

 月並みな激励に、あっさり私が従ったのは、吟遊詩人の口の上手さと、自分の心がそれほど弱っていたからかもしれない。


 やってみてわかった。


 自分にはソロは向いていない。


 運や巡り合わせが悪いだけだったのかもしれないが、ソロの勇者候補と契約しようというヤツにろくな人間はいなかった。


 金にがめついヤツ。

 自分たちに有利な契約に持ち込もうとするヤツ。

 実力が伴っていないのに、無茶なダンジョン攻略を進めようとするヤツ。

 すぐ人のせいにするヤツ。

 身体を求めてくるヤツ。


 そう言えば……コミュ症の魔法使い、というのもいたな。

 まあ、あれは可愛い方だ。


 無論、自分を変えてくれる人間など現れようはずがなかった。


 結局、私を助けたのは酒だけだ。


 残念ながら、こいつには代金というもの必要らしい。

 大人しくソロの勇者候補をしていられたのも、酒場のツケを払うためだった、というのはなんとも皮肉なことだ。


 そんな中、私は『ワナードドラゴン』の面々と出会った。


 賢者バリン。

 重装騎士カヨーテ。

 神官クリュナ。

 計3人組。


 彼らについて、多くを語ることもないだろう。

 結果は、見た通りだ。


 私なりに、あいつらの経歴を調べてみた。


 初期は、割とありふれた4人組のパーティだったらしい。

 実力もそこそこ。目立った功績はないが、着実にランクを上げていった堅実なパーティだったという。


 最初の被害者は、彼らのパーティの1人。

 紅一点の魔獣使いだった。


 かなり優秀だったらしく、ワイバーンを手懐けていたという。竜種の中でも下位のモンスターだが、そもそも竜は滅多になつかないので、一種の才能があったのだろう。


『ワナードドラゴン』――つまり“火袋の竜”もそこから名付けられたなら、パーティの中で中心人物だったと推測できる。


 ある時を境に、パーティのムードが険悪になった。

 理由を知ることは出来なかったが、痴情のもつれがあったのかもしれない。


 そしてあるB級のダンジョンに行くと、彼女だけが戻らなかった。

 ギルドには、モンスターに殺されたと報告したという。


 彼らの特殊な性癖は、そこから始まった。


 セラフィのようなソロで勇者候補をしている女を捕まえ、無茶なダンジョン攻略によって疲弊させ、最後はモンスターか自分たちの手でとどめを刺す。


 そして屍姦する……。


 そんな悪魔のような所業が繰り返された。


 周りから怪しまれ始めると、別のギルドへ行って新しい仲間を探したという。

 結局、“魔法使い”に見つかるまで、恐ろしい犯行は繰り返された。


 取り調べた街の衛士に語ったところによれば、犯行は次第にエスカレートしていったという。


 性的興奮を増加させるため、よりスリルある犯行場所と、強いモンスターを求めた。

 ソロで勇者候補している女の心理を付くような筋書きを描き、役作りまでして徹底させた。クリュナが女に扮していたのも、女の勇者候補を安心させるためだ。


 そうして綿密な計画を打ち、達成した興奮は最高だったと彼らは、半ば歪んだ笑みを浮かべて語ったと、衛士は話す。



 胸くそ悪い話をしてしまったな。すまない……。



 しかし――こういうのもなんだが――彼らには僅かだが感謝している。


 たとえ、筋書きであったとしても、私はやっと“仲間”というものを感じられたのは確かだ。

 一緒に鍋を囲った時も。

 声を上げて笑った時も。

 一緒にエヴィルドラゴンの火袋を持ち帰ると誓った時も。

 私は本気だった。


 馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれないが、彼らを“仲間”に思えたのだ。


 それは彼らがどんな悪人であったとしても、変えることの出来ない事実だった。


 だが、何よりも――――。


 “彼”と出会う事が出来た。


 魔族をものともしない。

 パーティというシステムを嘲笑うかのように……。

 たった1人の“個”による――。


 圧倒的な武力……!


 雷撃による大きな光の柱を見ながら、私は――。


 憧れた。


 単純な力に……。


 これが答えなのかもしれない。


 そう思った。


 そうだ。


 私は弱い。


 結局、そのことを見つめることができないほど、弱かっただけなのだと思った。

 死んだ仲間のせいするほど、心の弱い人間だったのだ。


 そう――。



 悪夢の中で、私を罵っていたのは、死んだ仲間ではない。


 私がずっと彼らを罵倒していただけなのだ。



 光の柱を見ながら、私はふと悟った。


 あの時、巨大な魔法が消し飛ばしたのは、魔族だけではなかった。


 それは、私の罪悪感の一部だった。


 私は決めた。


 強くなると……。


 そして、そのために教えを請おうと考えた。


 私のすべて変えてしまった――――年下の男の子。


 やや可愛げはないが、師として尊敬できるほど強い少年に、一から鍛えて欲しいと思った。


 今日は、その1日目だ。


 朝食も作った。


 ちょっと失敗してしまったが、初めて作ったにしては上出来だろう。


 喜んでくれるかどうかはわからないが……。


 さて、そろそろ起こそうか。


 我が師匠を……。


「起きろ。マサキ」


 こうして私の弟子生活は、幕を開けたのだ。




長い序章。

なかなか出てこない主人公。

一風変わった作品を愚考して参りましたが、いかがだったでしょうか?


明日からの第2章は、また主人公を変えて、勇者候補育成校入試編をお送りしたいと思います。この物語の核となるキャラたちが数多く登場しますので、お楽しみいただければと思います。


第一章までお付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m

また明日18時に……。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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