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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第4章 ~~最強魔法使いへの道程編~~
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第16話 ~ あれってドラゴンなの! ~

たまには更新。

短くてごめんなさい。

 その夜――。


 マサキが就寝していると、土の匂いがした。

 外の空気だ。

 瞼を持ち上げる。

 ベッド側の窓がひらりと開いていた。


 しっかり閉めたはずなのに――。


 マサキはそう思い、改めて閉めようとしたが、異変に気付いた。

 留め金が真っ二つに切れていた。

 まるで刃物で切られたみたいに。


 マサキは布団を蹴っ飛ばし、ベッドから飛び出した。

 辺りを警戒するが、部屋の中に人影はない。


 意を決し、外を見つめた。

 空の上には半月。

 煌々と光を大地へ放ち、かなり明るい月夜だった。


 月光を浴びて浮かんだのは、逆三角のシルエット。

 中央には一対の黄金色の光が輝いていた。


 マサキが知る限り、そのような偉業の姿をしているのは、1人――いや1匹しか知らない。


 少年は恐る恐る尋ねてみた。


「ロト……?」

「おう。マサキ、行くぞ!」

「どこへ?」


 首を傾げた。

 瞬間、ロトの手が伸びる。

 あっという間に少年を簀巻きにすると、一本釣りのように引っ張った。


 窓からハウスの外へと飛び出す。

 ロトの顔がすぐそこにあった。

 黄金色の瞳がニヤリと笑う。


「森だ」


 ロトは一本足に力を入れる。

 思いっきり大地を蹴った。


 跳んだ――。


 気が付けば、夜の空へと躍り出ていた。

 月が近く見える。

 ちょっと下を見ると、黒い森が広がっていた。


「すごい……」


 マサキは単純に驚いた。


 やがて高度が落ちてくる。

 黒い森がどんどん近づき、丁度真ん中付近に降り立った。


「ぺっぺっぺっ!」


 口の中に入った葉を吐き出す。

 枝を引っかけたらしく、寝間着の袖がボロボロになっていた。


「ロトぉ。強引だよ」

「へへ……。そんなことを言うなよ。ほら……」


 ロトは籠を差し出す。

 そこにはマサキの私服と靴が入っていた。

 計画的犯行だったわけだ。


「エーデに怒られて知らないからね」


 マサキは私服のボタンを結びながら、ロトを睨む。

 魔族は「へっへっへっ」と笑った。


「はん。エーデルンドなんて怖くねぇよ。俺様は魔族なんだ。人間の言う事なんていちいち聞いてられるか」


 マサキは大きく息を吐いた。

 ロトの言い分は、まるで子供の言い訳だ。

 これではどちらが年上で、年下なのかわからない。


「さーて。何をする。かくれんぼか? それとも缶蹴りか?」

「こ、ここで遊ぶの?」

「なんだ、イヤなのか?」

「そうじゃないけど……。さすがにロトから離れるのは怖いよ」

「なんだよ、ビビッてんのか?」

「ち、違うよ! でも、ここのモンスター超強いんでしょ」

「心配するなよ。俺様より弱い」

「ロトと比べないでよ!」


 マサキが思わず叫んだ。


 その瞬間、足元が震えた。


「え――」


 大地が浮き上がる。

 大量の土がざーと川のように流れていった。


 【風護操桿】ウルノ・ブール


 マサキは慌てて飛翔魔法をかけた。

 空へと逃げる。

 改めて眼下を見つめた。


 最初に目に映ったのは、大きな口だった。

 岩石をくり貫いたような四角い顎。

 そこに刃物のような三角の牙が見える。

 土色の口内は月光を反射してぬらぬらと光っていた。


「何これ?」


 大きな亀だった。

 蛇のような長い首。

 平べったい四足は一軒家を軽々とつぶせそうなほど広く、岩盤のようにゴツゴツしていた。


 一番目を引くのは、やはり甲羅だ。

 巨体の8割を閉め、土や黒い木がそのまま乗っかっていた。


 充血した白目が虫の複眼のように動かす。

 視線が合ったような気がした。


「ぎょああああああああああああああああ!!」


 吠声を上げた。

 空気が震える。


 マサキは距離を取り、近くの木の枝に降り立った。

 ロトも器用に一本足で枝を掴む。


「なにあれ?」


 視界一杯に広がった巨大な亀を指さす。


「お前らがボーグデッグって呼んでるモンスターだな」

「こ、こんなに大きなモンスター、初めて見たよ」

「そうか? 魔界に行ったらゴロゴロいるぞ。これぐらいのヤツ」


 ――魔界ってホントどんなところなんだろ……。


 悪寒が背筋を走っていく。

 ともかく、少年は目の前に集中した。


「確かあいつの仲間なんだよ。エヴィ……エヴィなんだっけ?」

「もしかして、エヴィルドラゴン……」

「そうそう。それだ」

「じゃあ、あれってドラゴンなの!」

「ああ。そうだな」


 じゃあ……。


 マサキは振り返る。

 ボーグデッグはゆっくりとした動作で身を動かす。

 首をこちらに向けると、大きく口を開けた。


 大気が動く。

 風……? いや、そうではない。

 木の葉がボーグデッグの方に向かう。

 吸い込まれているのだ。


 その吸引力は徐々に強くなっていく。

 マサキが立っていた木がしなる。先端をボーグデッグに倒れ、がっしりとした根が盛り上がった。


「ちょっと! これまずいんじゃない!」

「手を離すなよ。あいつの飯になりたくなかったらな」


 そう言われても、しがみついている樹木そのものが飛んでいきそうだ。

 ボーグデッグの近くの木はすでに飲み込まれ始めている。


 【森風緑依】アゼ・ブラッタ!


 土から蔦が伸びる

 マサキがしがみついている樹木に絡みつき、補強する。

 さらに自分のところまで蔦をのばすと、木から外れないように縛った。


 とりあえず、これで耐えきれるはずだ。


 次第に地肌が痛くなってきた。

 髪が、全身の毛が引っ張れている。


「ぶほッ!」


 ボーグデッグは奇声を上げる。

 吸い込みが終わった。


 ――助かった。


 脱力するマサキだったが、ロトは警戒心を緩めなかった。


「来るぞ!」

「え?」



 「ボウッ!!」



 瞬間、猛烈な突風が吹いた。

 圧縮された空気が黒い森を通り抜けてくる。


 それは風のブレスといっても差し支えないほど、強烈なものだった。


「うわああああああああ!!」


 マサキは悲鳴を上げる。

 木に巻き付いた蔦がラップ音のようなものを立てて、切れていった。


 やがて木から手が離れる。

 ふわりと宙に浮いた。

 そこからあっという間だった。


 視界が恐ろしい程の速さで変わっていく。


「マサキ!!」


 ロトが手を伸ばすも遅い。

 少年の小さな体躯は、すでに範囲外のところまで飛ばされていた。


「チッ!」


 魔族は舌打ちする。

 風に乗って、少年を追いかけた。




 気が付くと、黒い樹木の欠片が見えた。


 少年は上体を起こす。

 どうやら黒い木からして、まだラソルの樹海のようだが、周りにロトの姿はなかった。


 どうやらボーグデッグの風のブレスによって、かなり遠くまで飛ばされたらしい。

 周囲には、マサキと一緒に飛ばされたであろう枝や葉が落ちていた。


「――!!」


 不意に物音が聞こえた。

 マサキは咄嗟に振り返る。


 薄暗い闇の向こうで音が聞こえる。

 一切物音を隠さない――堂々とした足音だ。

 落ち葉を踏み分け、こちらに向かってくる。


 マサキは息を飲んだ。


 やがてシルエットが浮かぶ。

 人――いや、何かが違う。


「女の子?」


 差し込む月光を受け、その少女は現れた。


ボチボチですが、こちらも更新していきます。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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