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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第4章 ~~最強魔法使いへの道程編~~
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第11話 ~ 缶蹴りをしようと思うんだ ~

第4章第11話です。

よろしくお願いします。

 3日後。

 ようやく全快したマサキは、ロトとエーデルンドと鬼ごっこをする事になったのだが……。


「えっと……」


 マサキは呆然と見つめる先には、金髪を揺らし男が立っていた。


「なんで、アヴィンがいるの?」

「ええ? ダメなのかい。僕も鬼ごっこをしてみたいんだけどなあ」

「いや……。ロトやエーデはともかく、アヴィンを掴まえられる気がしないんだけど」


 マサキはジト目で保護者を睨んだ。


「そんな! 僕だって遊びたいんだもん」


 アヴィンが完全にブリッ娘おじさんになっていた。

 中性的な顔立ちだからなのか。

 割と可愛いと思ってしまった。


「いいじゃねぇか、マサキ。早くやろうぜ!」

「なんでもいいから早くしておくれ。今日、ちょっと早く起きすぎて眠いんだよ、あたしゃ」


 大きな欠伸をする。


 時間が午後。

 お昼を食べてから、約1時間ぐらい経ってる。

 ポカポカ陽気で、マサキも少し眠たかった。


「ちょっと待ってよ、ロト。あとエーデはやる気なさすぎ」

「え~。アヴィンがいるからあたしはいいじゃないの~」


 マサキは「はあ」と深いため息を吐く。

 少し考えた後、3人に提案した。


「1人増えたから、鬼ごっこじゃなくて、缶蹴りをしようと思うんだ」

「おお! 缶蹴り」

「なんだ、それは? それも遊びなのか?」

「ふあ……。眠い……」


 すると、マサキは一旦ハウスに戻る。

 さすがにハインザルドには缶なんてないから、代わりになるようなもの探した。

 木のコップを持ってくる。


「あ、こら! マサキ! それ! あたしのカップだぞ」


 エーデルンドがプリプリ怒り始めた。


「ちょっと借りるだけだよ。後で洗って返すよ」

「まあまあ、エーデ。なんなら新しいのを買ってもいいから」

「マジ! この前、蚤の市で綺麗な陶器のカップを見つけたの。買っていい?」


 目をキラキラさせる。


「あ。うん。いいよ。ただお値段はほどほどにね」

「わかった」


 しかし、エーデルンドの瞳には、もう陶器のカップしか見えてなかった。


 缶蹴りとは別のところで盛り上がる保護者は放っておき、マサキは説明を続ける。


「簡単に説明すると、このコップを蹴る遊びなんだ」


 カップを草場に置く。


「まず2組みにチーム分けしよう。えっと、アヴィンはルールを知ってるの?」

「うん。概ね大丈夫だと思うよ」

「じゃあ、ボクとアヴィンは別れた方がいいね。エーデとロトでどっちのチームに入るか決めて」


 エーデルンドとロトはとりあえずじゃんけんで決める事になった。


 結果、マサキとロトチーム。

 そしてアヴィンとエーデルンドの夫婦チームに別れることになった。


「ちょっと戦力が固まった感があるけどいいか。……じゃあ、どちらが缶蹴るかを決めようか」


 これはマサキとアヴィンでじゃんけんで決めた。

 アヴィンの勝ち。

 夫婦チームが缶を蹴る方になる。


「ここまで来るとだいたい想像は付くよね。ようは缶を蹴る側は缶を蹴ったら勝ち。ボクとロトは、この缶を蹴られないようにして、かつ蹴る側をタッチして掴まえたら勝ちってゲームなんだけど。今の説明でわかるかな?」

「おう。問題ないぜ。ようは俺様は缶を蹴りに来たヤツらをぶっ飛ばせばいいんだな」

「ぶっ飛ばすのはなしね。タッチすればいいから」


 マサキは苦笑いを浮かべる。

 大丈夫かな……。


「タッチでいいなら、缶を守る方が有利じゃないの? ようは缶に貼り付いていればいいんだろ?」

「それがこの遊びの面白いところさ、エーデ。ようは如何に守る側をおびき出して、缶を無防備にするかが問題なんだよ。身を隠したりしながらしてね」

「は~、なるほどね。単純な割にはちょっと面白そうかも」


 アヴィンの説明に、ようやくエーデルンドはやる気になったらしい。


「となるとマサキ。遊びを面白くするためにも、少々セッティングを変えた方がいいかもしれないね」

「ああ。そうかも」


 マサキは振り返った。


 背の低い草が茂る草原には、遮蔽物があまりない。

 これでは缶を蹴る側が近づきにくいだろう。


 近くの森でやれればいいが、強いモンスターがわんさかいる場所で缶蹴りをするわけにはいかなかった。


「よし。ここはぼくに任せたまえ」


 アヴィンは手を大地に付ける。


 【森風緑依】アゼ・ブラッタ!


 魔法を唱える。

 途端、地面が揺れた。

 下の方から何かがせり上がってくる。


 すると、大地を突き破り、太い幹が現れた。

 しかも何本もだ。

 爆発的に成長し、さらに枝葉を伸ばしていく。

 あっという間に、何もなかった草原に、森が出現した。


「こんなものでどうかな?」


 アヴィンは軽く汗を拭う。

 口を開けて、マサキはただただ呆然とするしかなかった。


 気を取り直して、缶蹴りを始める。


「はじめは、缶を蹴る側がこの缶を任意の方向に蹴るんだ。守り手が缶を探している間に攻撃側は隠れる。所定位置に戻したら、ゲーム開始だよ」

「よし! やるぞ。アヴィンとエーデを掴まえてやる」


 ロトはやる気満々だ。

 手を天に向かって伸ばし、ヒラヒラと動かした。

 金色の目は、心なしか充血している。


「ふふん。遊びといえど、容赦はしないからね」


 エーデルンドもエンジンがかかってきたらしい。

 白い歯を光らせ、自信に満ちた笑みを浮かべた。


「でも、エーデ。ぼくたちは魔法禁止だよ」

「な! ちょっと! それって」

「当たり前だよ、エーデ」


 マサキは顔を赤くして叫んだ。


「アヴィンとエーデが本気でやったら、ボクたち太刀打ち出来ないだろ? これぐらいのハンデないとゲームにならないよ」

「そういうこと……」

「ええ……。なんだよ、折角こてんぱんにしてやろうと思ったのに」


 保護者は大人げない発言をする。


「その代わり、ロトの手も制限を加えよう。伸ばしたりするのは禁止ね」

「な! それはちょっと不公平ではないか、アヴィン」

「君の手の伸びる長さは無限に近いからね。缶のところにいて、手を伸ばされたら、手も足もでないよ」

「チッ!」


 ロトは舌打ちする。

 どうやら、そういう作戦を考えていたらしい。


 みんな油断も隙もない。

 あらかじめ決めて置いて良かった。


「ハンデがないのはマサキだけかい?」

「そりゃそうだよ。さすがに魔法を使ってブーストしたりしないと、アヴィンやエーデの動きに付いていけないしね」

「ただし、マサキ……。あくまでタッチは自分の手で行うんだよ。魔法による創造物で人にタッチするのは無効にするからね」


 マサキは心の中で「チッ!」と舌打ちした。



 ★



 かくして第1回【魔界の道】缶蹴り杯が開催された。


 1回目を蹴るのはアヴィンだ。


「アヴィン。そっと蹴るんだよ」


 エーデルンドがアドバイスを送る。

 どうやらまだコップに未練があるらしい。


 コップにはすでにアヴィンの手によって強化魔法がかけられていた。


「では……。行くよ!!」


 スコォォォォオオオオオオンンンン!!


 乾いた音が森林にこだます。

 コップは見事木々の間を抜けると、放物線を描いて空へと舞い上がった。


 視界から消える。


 特大のホームランだ。


「アヴィン……。飛ばしすぎじゃない」

「大丈夫。この森林の向こうまでは飛ばないように力を抑えたよ。さて、では隠れようか。エーデ」

「ちょ! アヴィン」


 さりげなく伴侶の手を掴んだ。

 不意打ちのスキンシップに、エーデルンドは赤くなる。


「では、また会おう。次会った時は敵同士だ」


 まるでアニメの後半で仲間になるようなライバルキャラの台詞を言う。

 そして夫婦は仲良く森林の奥へと消えた。


 ともかく缶を探さなければならない。


 ――よく考えたら、こんな広い森で探せるかな……。


 鬱蒼と茂る木々を見ながら、マサキは早くも諦めムードだった。

 すると、横にいたロトは言った。


「マサキ! 缶を探しに行くぞ」

「う、うん。でも、探すの大変だよ、これ」

「大丈夫だ。匂いで追跡できる」


 ふんふん、と顔を動かした。

 ちなみにロトの能面みたいな顔に、鼻穴らしきものはない。


 だが、今はそれに頼るしかなさそうだ。


 マサキはロトの後について、缶を探し始めた。


異世界缶蹴りバトルの始まりです。


来週末もよろしくお願いします。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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