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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第4章 ~~最強魔法使いへの道程編~~

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第1話 ~ エーデの秘蔵っ子 ~

新作がアップされるまで少し余裕があるので、

更新を続けることにしました。

相変わらず土日更新ですが、よろしくお願いします。

 ゼルデ=ディファス地方――。


 プリミラ王国の領内にありながら、その存在は特殊だ。

 1つに領主が存在しない。

 土地のほとんどが、名目上の自然保護区とダンジョンになっており、区長と呼ばれるものは存在するが、実質的な管理は国がすべて行っている。


 その国の管理もどちらかといえば、杜撰なものだ。

 というのも、地方の80%を占める部分がダンジョンであり、さらに言えばその半分がB級以上のモンスターが出る高難度ダンジョンなのだ。


 B級の基準は、国の一般的な衛士や兵では対処できないモンスターと、各国の法律では定められている。

 つまり、王国側では手に負えないモンスターが、地方にいる人間の人口よりも存在するということだ。国の管理がおろそかになってしまうのも、無理のないことだった。


 そんな危険地帯を管理するものがいる。

 1つは【魔界の道】を管理する【塚守(タボス)】。

 そしてもう1つは、この地方にあるギルドである。


 ゼルデ=ディファス地方のギルド――正確には町の名前をとって『アタラス支部』と呼ばれている――には、様々なダンジョンの情報が入る。

 内部情報や攻略、もしくはレアアイテムの未確認情報。クエストの70%が、B難度という有様だった。


 高難度なダンジョンの近くにあるギルド。

 冒険者にとって、そこのギルドに登録し、クエストをこなすことは、1つの誉れでもあった。


 そのアタラス支部の一角に人だかりが出来ていた。

 正確には支部横にある広場。

 円形に杭を打ち付けられ、その間にロープが張られている。

 人だかりはその規制線の外側に出来ていて、歓声をあげていた。


 皆、冒険者だ。

 役職は様々だが、どれも手練れであることは、武器や体格などから察する事が出来る。アタラス支部登録の冒険者なのだろう。


 変わって円の内側にいたのは、ベテランの冒険者とまだあどけない感じが残る少年だった。


 大剣を斜に構えたベテランの冒険者は、ギッと対峙者を睨む。

 対する少年は明らかに気後れした様子で、ショートスピアを構え直した。

 冒険者は汗1つ掻いていないのに、こちらは一生分の水分を出し尽くしたかのように、べっとりと額を濡らしている。


 お互いの戦意は明らかだった。

 勝負はもはやついたも同然だったが、冒険者は手を緩めない。


 ザッと土を蹴ると、少年との距離を詰める。


 野ねずみのような小さな悲鳴を上げると、少年は唱えた。


炎断砲撃(バル・ヴロッド)!】


 槍の穂先から5つの炎の弾が飛び出す、

 炎属性の初級魔法の連続打ち。


 少年の年齢は定かではないが、12、3歳というところだろう。

 勇者育成学校に入学する前であることは間違いあるまい。


 その年で、初級魔法を放てることすら希有だ。

 さらに少年は連続で撃ち出してみせた。


 才能と呼んでいいだろう。


 しかし――。


 冒険者は放物線を描き、襲いかかってきた炎弾を難なく回避する。


 少年は慌てて呪唱(キャスト)するも、撃ち出せたのは1発の炎弾だった。

 動揺した割に、弾は一直線に男へ向かっていく。


 だが、渾身の炎弾も冒険者の大剣にあっさりなぎ倒された。


 再び少年は呪唱キャスト――。

 しかし、間に合わない。


「ふぅん!!」


 気合い一閃。

 冒険者の大剣が振り下ろされた。


 何かが爆発したような音が、サークル内に鳴り響く。

 土煙が上がり、しばし周囲の視界を奪った。


 煙にむせ混む者。

 魔法でなぎ払う者。


 対応はそれぞれであったが、彼らがそれを見たのはほぼ同時だった。


 大剣が地面を抉り飛ばし、さらに土の中に突き刺さっていた。

 綺麗に磨かれた刃面に、少年の真っ青な顔が映っている。


「それまで……」


 静かに声がかかる。

 サークル内に入ってきたのは、ギルドの制服を着た職員だった。


 冒険者が「よっ」と声を上げ、愛剣を地面から引き抜く。

 力強く剣を振り払って、土を払うと肩に担いだ。


 何事もなかったかのようにサークルの中央に立つ。


 少年は腰砕けになり、砲弾を受けたような跡の上にへたり込んだ。

 小さな肩に、先ほど職員が手を置く。


 眼鏡の奥にある瞳は鋭く光っていた。

 審査する側の目だ。


「審技の結果。不合格とします。次までに鍛錬を怠らないで下さい」


 それを聞くと、少年はがくりと肩を落とした。

 しまいには、目から涙を溢れさせ、ワンワンと泣き始める。


 そこに駆け寄ったのは、別の冒険者だ。

 おそらく彼の師匠なのだろう。

 優しくあやすと、2人はサークルを出て、街中に消えて行った。


「あれはダメだな。学校で鍛えてもらった方がいい」


 大剣の冒険者は仁王立ちのまま、師匠とその弟子が向かった先を見つめる。

 やがて目の前の職員に視線を戻した時には、先ほどの戦いも少年のことも忘れていた。


「さて。もう終わりかい?」


 と尋ねる。

 職員はポケットから麻の紙を取り出した。


「もう1組いますね」

「そうか。何歳だ?」

「10歳です!」

「はっ?」


 声を上げたのは、冒険者だけではなかった。

 周りを囲んでいた観衆も、同様に呆気にとられている。

 顔を見回し、ざわつく。

 熱狂的な雰囲気が、一気に冷やされ、鎮火した形だ。


「10歳ってか? 俺が出っ張るということはB級暫定ライセンス志望ってことだろう? そいつはもうC級を持ってるってことか?」

「ええ……。数ヶ月前、B級の冒険者を倒して、C級の暫定ライセンスを獲得しました。すでにC級のダンジョンにおいて、400時間の経験も持っているようです」

「なんかの間違いじゃないのかよ?」

「書類に偽造された形跡はありません。師匠も確かです」

「名前は?」

「エーデルンド・プリサーラ」


 冒険者は一瞬、息をするの忘れた。

 おかしなことに、またしても観衆たちも同じような反応を見せる。

 沈黙というよりは、何か時間が停止したような静寂が訪れた。


 ギルドに登録する冒険者なら、誰もが知っている名前なのだ。


「なるほどね。噂のエーデの秘蔵っ子というヤツか」

「ええ……」


 冒険者たちが額に汗を浮かべて息を呑むのに対して、職員は妙に冷静だった。

 修羅場に慣れていることもあるだろうが、あまり顔に感情が出ないタイプらしい。

 それがより一層、場の雰囲気を硬質化させていた。


「で――。どこにいるんだ?」

「もう来ているはずですが……」



 マサキ・タチバナ! 出てきなさい!!



 職員は声を張り上げる。

 能面顔から出たとは思えない。よく通る声だった。


 職員も冒険者も、そして観衆も周囲を見回す。

 しかし、10歳の子供らしき姿はない。


 その時だった。

 上空で飛行音が響く。


 皆の視線が同時に空へと向けられた。

 だが、何もない。

 穏やかな青空が広がっていた。


 目をこらす。

 すると何かが光った。

 帚星のような光が大空を横切ると、転進する。


 そのまま地面へ向けて、真っ逆さまに落ちてきた。


ちょっと中途半端ですが、明日もよろしくお願いします。

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最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、伝説の道を歩み始める。
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