僕の嫌いな出会いの季節:3
だが、またしても僕の目に映ったのは少女だった。
でもさっきとは少し違って、向こうも僕のことを見ていたのだ。
大きい目はまるで僕の事を見透かしているようで、もしかたら化け物より怖かったかもしれない。
僕のさっきの声が大きかったのか、思ったより距離が近かったのかは知らないが、少女は僕に気付いていた。
そして見つめ会うこと数秒。
少女はニコッと微笑むと、小さく僕を手招きした。
その笑顔は可愛くて、さっきまで遠くに感じていた少女が急に近くなって。
その事が嬉しかったのか、僕は小走りでその少女の所へと駆けていった。
最初に声をかけたのは僕の方だった。
「ねぇ、そこで何をしてたの?」
ブランコに座る少女はとても可愛かった。
さっきは暗くて良く見えなかった少女が良く見える。
肩まで伸ばしている赤い髪の毛。
折れてしまいそうな手足。
髪の毛の色よりも薄い赤色の大きい目。
どこか寂しそうな笑顔。
「えっとね、お星様を見ていたの。」
初対面で恥ずかしいのか、少しモジモジしながらも答えてくれた。
「あぁ。すっごくキレイだったよね!」
「そうでしょ?私はお星様すっごく詳しいんだよ。」
「じゃあ、あの一番眩しい星は何て言うの?」
人差し指を空に向けながら言った僕の質問に対して、少しウーンと唸りながら考えていた。
やっぱり分かんないんじゃんと言おうとした僕よりも早く、思い出したのかパッっと顔を輝かせた少女は自慢気にこう言った。
「あれはねっ、ほっきょくせいって言うんだよ?」
「ほっきょくせい?」
ほっきょくせいと言われてもピンと来ない僕に少女は説明を始めた。
「ほっきょくせいっていうのはね――――――――――――
「へぇー、いっぱい知ってるんだね!」
あれから北極星以外の星の話もいっぱい聞いた僕は、一つ大事な事を忘れていたのに気がついた。
「あ、そーいえばさ、君の名前は何て言うの?」
何気なく言った僕の言葉に少女は体をビクンと震わせ、ばつが悪そうに話題を変えようとした。
「そ、そんな事より――――――」
「僕は、おきざきさいって言うんだよ!」
話題を変えようとしたのだが、無邪気な小さい頃の僕は笑顔でそう言ってのけた。
お父さんに、相手に名前を聞くときはまず自分から。というのを思い出したからだ。
我ながら親の言いつけを守るいい子供だった。
···遊びの約束は守れて無かったけど。