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PANDoRA  作者: ソルテ
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展開

 修学会長からの指令で俺達は、関東地方のパンドラー調査へと向かった。 

 メンバーは4人、俺、咲耶さん、祐一、そして詩織。

 いずれも修学会長が指名したメンバーだから、心配ないだろう。ただ一人ユウを除けばの話だが。

 

 朝8時半WPP関東地区本部を出発。そして9時、現在地は東京渋谷区である。

 東京・・・過去の写真とのあまりの変貌具合に俺たちはただ沈黙する。


 「ここも随分変わった・・・」

 咲耶さんが沈黙を打ち消ししゃべり始めた。

 「変わったって、もしかして昔ここに住んでいたんですか?」

 「ああ、といっても物の3年くらいしか居た記憶はないけどな。」

 冷静に自分の過去を語る咲耶さんだったが、おれにはその声が少し悲しげに聞こえた。

 「なぁ、辰哉~なんでもいいからさ早くパンドラー調査しようぜ」

 いつもは空気の読めないバカな発言しかしない癖に今日だけはまともなことを言いやがる。

 「ああ、そうだな」

 「とりあえず上野方面へ向かうか。」

 流石咲耶さん、行動力には長けて・・・って上野?

 「えっと・・・咲耶さん?上野って渋谷から徒歩ってなまら遠いっすよ?」

 「何を言う日ごろから訓練しないから、そんな不抜けたセリフが出るんだ、しかもその変な北海道地方のなまりはやめろ」

 うん、僕みたいな奴にはもったいない説教をどうもありがとう咲耶さん。

 「はい・・・すんません」

 「よっしゃ、じゃあいこーぜー」

 ほぼお前は何もしてないだろユウ。


 それから数十分間歩いたが何も変わったものはない。あるのは建物残骸のみだ。

 そんなとき詩織が急に口を開いた。

「…ねえ、みんな」

「おっ!どうした詩織?」

 詩織がしゃべったのが珍しいのか、ユウが話しかける。

「疲れたか?どこかで休む?それとも腹減ったか?この辺にレストランは無 いしなぁ…。いや、もしかしてトイレ――」

「おいやめろユウ。詩織が引いてる」

 それにお前さっき食ったばかりじゃねえか。

「菊龍院…少し黙れ」

 咲耶さんが修羅のオーラを出している。これに対してユウは――。

「はいっ!菊龍院祐一、お口にチャアアアック!」

 ンー、ン~とうめくユウ。うざい。

「それで…なんだ、詩織」

 みんな忘れそうだから訊いておく。

「…えっと、会長はパンドラーが四人居るって言ってたよね」

「そう、四人だ!この菊龍院祐一君の記憶力をあなどるな!」

 お口にチャックはどうした。

「それで…調査が終わるまでは戻れないわけ、だよね」

「だろうな。会長が激怒するだろう」

「みんな早く帰りたい…よね?」

 真っ先に反応したのはユウだった。

「そう、俺は枕が変わると眠れないタチなんだ!それに今日は金曜日だ!こ の意味がわかるか辰也!」

「…なんだっけ」

「『Do(ドゥ) LOVE(ラビュ)る シャイニング』の放送日だろーが!」

 アニメかよ!

「桐生…その『ドゥラビュル』とは何なんだ?」

 咲耶さんが訊いてきたが――。まさかエロアニメと答えるわけにもいくま い。とりあえず、

「旅番組です」

 嘘も方便…ってな。これでごまかしきれたはずだ。

「旅番組か、面白いよな。私も帰ったらその『ドゥラビュル』を見るとしよう。楽しみだ」

 すまないユウ。俺のせいで大変なことになった。

「…早く帰りたいよね」

「あー、うん」

 さっきからユウのせいで会話が進まないじゃないか。詩織も多分イライラしてるだろう。

「それでさ、パンドラーは四人、私たちも四人でしょ。だからさ――四人に別れない?」

「ダメだ」

 俺はキッパリ断った。詩織はまさか断られると思ってなかったのか、意外そうな顔をした。咲耶さんも少し驚いていた。ユウは…聞いてなかった。

「…どうして?合理的だと思うけど」

 その問いに俺は答える。

「合理的とかそういうことじゃない。いくらパンドラーといっても、詩織 と咲耶さんは女の子じゃないか。一人になるのは危ない」

 至極真っ当な意見だと思う。詩織は少し考えこんだ顔をしていた。

 ポン、と後ろから肩を叩かれた。咲耶さんだ。

「意外と紳士的なところもあるじゃないか。見直したぞ」

 咲耶さんはどこか嬉しそうだった。たぶん詩織と同じ『女の子』に分類されたことが嬉しかったんだと思う。

「詩織。桐生もこう言ってくれていることだ。このままでもいいんじゃないか?」

「…そうね。それなら、二手に分かれるのは?私は佐倉さんと、桐生君は菊龍院と、二人ずつ。それでどう?」

 今どさくさに紛れてユウを呼び捨てにしてなかったか?

「…そんなに早く帰りたいのか?」

 俺が問うと、

「…ええ」

 詩織は頷いた。ここまで早く帰ることに執着する理由はわからなかったがそこまで言うのなら――。

「…わかった。二手に別れよう」

 まあ、咲耶さんがいるなら大丈夫だろう。

「ええ、ありがとう」

「よっし、行くかユウ!」

「え、何?ごっめん僕ちん聞いてなかった~~」

 やっぱ聞いてなかったコイツ!



 こうして、俺とユウは二人で目的地に向かうことになった。だがやはり女子二人だけでは心配だ。早く終わらせてサポートに行こう。

「辰也~~最初はどこだ~~?」

 ユウに言われ、WPPから渡された資料に目を通す。

「えーと、最初のパンドラーがいるのは…」

 東京都、下北沢。






 同時刻。都市部の中の、目立たない路地裏。

 男が立っていた。長身で、年齢は三十歳ほど。服装から察するに、いくらでもいるサラリーマンだろう。

「……」

 男は黙って自分の足下にある『もの』を見下ろす。その周りには、赤い液体が飛び散っていた。もしかしなくても血液である。飛び散った血液の中心にあったのは、人間の死体だった。たった今、このサラリーマンに殺されたのだ。

「…フゥー」

 男は自分のスーツのポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつける。人を一人殺したのに、一服するこの余裕。

 男の胸中に、罪悪感だとか後悔といった感情は微塵も無かった。

 被害者は、この男の上司だった。無能のくせにいつも自分の仕事を部下に押し付け、自分は毎晩キャバクラで贅沢三昧。部下たちは残業必至だった。

いい加減うんざりしていた。だから殺した。殺して何が悪い。

 しかし、男は異常に落ち着いていた。凶器はどこに隠すかなどの心配も無かった。

 それは、彼の『能力』によるものだったからだ。当然凶器など存在しない。そしてその『能力』があれば、このスプラッタな犯行現場も綺麗に掃除することが可能だった。

「イカしてるなぁ…この『能力』は」

 男は呟き、間をおいてゲラゲラと笑った。

 プルルルル、と携帯電話が鳴った。

「はい、もしもし栗畑(くりはた)です」

 男――栗畑は携帯を取り出し応答する。

「栗畑。今お前のもとに四名のパンドラーが向かっている」

 電話の相手はボイスチェンジャーを使用していて、何者なのかわからなかった。

「パンドラー…ですか?」

「栗畑。お前に命令しよう。『パンドラーを消せ!』――お前の『パンドラ』でな」


遂に現れた最初の敵・栗畑!この邪悪なパンドラーに桐生たちはどうする!?

次回、戦闘開始(バトルスタート)

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