#2 Three Years After
あの事件から3年後・・・・
――――――関東地区N市DD養成学校
「今日からお前達は仮免許だ。だが、まだ半年は研修員だ。いいな?」
「はいっ!!」
デーモンデリーター養成学校。主に午前からだが、学生などは午後からでも一日3時間講習を受ければ半年で仮免許は貰える。その中に高校1年生の少女希庄亜美の姿がある。
(これで・・・ようやくデーモンデリーターになれる・・・)
私の願い。デーモンデリーターになる事。みんなは彼らの事を犯罪者とか殺人犯とかいうけど、私はそうは思わない。中学に入る一日前。父親が悪魔化して死んでしまったのは悲しいことではあったが、でもあの時身を張って私を助けてくれたあの子の事が今でも忘れられない。
(もう一度会ってお礼をしよう。助けてくれてありがとうって)
「だから、貴様らの仕事は悪魔化した人を探し出し、周りの人々の避難程度だ」
(私の場合は午後からかな?)
高校に通っているから午後から仕事になる。周りからはすごい目で見られているが気にしない。別に私は周りに媚びるのは好きじゃないし、それに私を嫌うなら嫌えばいい。
何を言われようとも私はデーモンデリーターになる。
「そこでだ。悪魔化する時はレーダーにものすごい反応がある。METが解放されるからだ。今日から貴様らは研修員と言っても仮免許所得だ。見回りだけでもいい仕事だろう。いってこい」
「はい!!」
そう言ってデーモンデリーター仮免許所得の研修員達は教官につい最近企業が挙って開発中のスマートフォンっぽい物を渡す。これがいわゆる悪魔感知レーダーなのだろう。
「9時までには戻って来い。とは言ってもそう簡単には出てこないがな」
そんなこと言う前に彼らは秒速の速さで外へ出かけて行った。
「あれだけ張り切ったものの・・・」
もう見回り開始して2時間。既に夜7時だ。周りは街中。辺り一面光で眩しいが・・・自分の心には闇しか照らしていない。
「そう簡単に悪魔なんて見つかるもんじゃないわね・・・・」
当り前である。そんな毎日毎日悪魔化していて処分されていたら人口は減るばかりである。
「じゃあ、デーモンデリーターってほとんど見回りだけ?」
そんな馬鹿な・・・それ以外にも仕事あるでしょ?
心の中で何かよくわからない脱力感に襲われていたがそんなものすぐさま吹き飛ぶような光景が目に写った。
「な、なにこれ!!こんな強力な反応が?」
教官に教えられた悪魔化の時のMET反応の数百倍はあろうかというMET反応がレーダーには映っていた。
「・・・・・・」
足音を立てないでその方向へ向かう。そこには
「な、なんなのよこいつ・・・・」
黒い粒子をまとい、背中には巨大な翼。普通の悪魔の腕よりもより太く凶暴さを増し、何よりその腕は黒いオーラを放っている。養成学校で見た悪魔とは遥かにかけ離れた姿をしている。悪魔とは名ばかりでほとんどみんなモンスターに近かったが、これこそ本当に悪魔というのではないだろうかと思う。
「くたばれ!!」
悪魔は普通の物理的な攻撃ではなかなか死なない。
そのために作られたのがMETを使用する武器。
今彼女が持っている武器はMET投射機と呼ばれる部類に入る武器で、集めたMETを高エネルギー体にして発射し相手を攻撃する。
国際法上使用は禁止されているが対悪魔専用に許可されている。
METを使用する事により普通の物理的攻撃よりもより強力な攻撃力を持つからである。
そしてそれを使えるのは体中にMETを浴びた人たち・・・デーモンデリーターだけである。だが、その攻撃をよけずに、易々と受け止められる悪魔がいるだろうか?
「な、なんで・・・」
「この程度で俺を殺せると思ったか?」
「・・・は?悪魔が人語をしゃべった・・・・奇跡・・・これは奇跡よ。奇跡の大発見だわ。アストレイ社に連れていかなきゃ!!」
アストレイ社とは様々なMET機器を製造し、世界シェア3位のヨーロッパ大陸一の大企業で、たくさんのデーモンデリーターのスポンサー企業である。
他には国家が悪魔処理班の人員として雇うことも多いが、主にMET研究のために企業が雇うことの方が多い。
「待て待て。俺はデーモンデリーターだ。こんな体だがこれでも人間な。それとお前・・・研修員だろ?」
「どこかで聞いた事のある声・・・・まあいいわ。それでなんでわかったの?」
別に研修中とか、研修員専用の服とか着ているわけではない。
「そのMET兵器。そんなチャッチイもん使うの研修員ぐらいだ。どうせ護身用とかで渡されたんだろ?確かに研修員レベルじゃMETになれていなくて高レベルのMET兵器は操れないだろうからそれでいいのかもしれないが、こんなんじゃさすがに・・・低レベルの悪魔ですら倒せない。むしろ怪物化した生き物すら倒せないな」
「モンスター?」
「お前研修員なのに何も知らないのか?困った野郎だ」
「わ、悪かったわね!!研修員で」
「別に悪いなんて一言も言ってねぇ。俺達がいつも見周りばかりしてると思ったか?」
「うん」
素直に答える亜美。無論彼から思われたのは二文字。漢字で書いてうましか。
「バカだ。ったく、悪魔ってなんでなると思う?」
「人間の限界吸収量のMETを限界異常に浴びた人とか・・・」
「そりゃモンスター化の原因だ。まあ、じっさい悪魔化もモンスター化もあまり変わらな
いと思うが・・・簡単に言うと変性METを大量に浴びた人だな。他にも色々原因がある
らしいけど。じゃあ動物とかが大量のMET、もしくは変性METを浴びるとどうなると思
う?」
「モンスター化でしょ。それぐらい知っているわよ」
「デーモンデリーターはそこらの処理もやるの。蛇がMET浴びて大蛇化等はよく
ある話だ。山火事の原因の一つだぞ」
「そうなんだ。初知り」
「こいつ・・・緊張感まるでねぇ」
「仕方ないだろう?まだ研修員なんだし」
「あ、教官」
「何やらものすごい反応があったかと思ったらまたお前か」
呆れた声でため息を吐くアストレイ社DD担当教官。
「なんだよ。対応の遅いアストレイ社のDDに変わって俺がボランティアで悪魔を処分し
ているんだ」
「成程。だから反応がないわけだ。この頃DDの連中が獲物全部取られて困るとか嘆いて
いた」
「別に文句言われる筋合いないだろう?」
「で、結局あんた何なの?」
一人話についていけず困った彼女は謎の悪魔少年に話を振った。彼女自身彼の正体を知りたいと思っていたのもあるだろう。
「俺か?」
「取りあえず解除したら?」
なにやらこの悪魔少年の事を教官は知っているらしい。どういう接点があるのよ?
「ああ」
そう言うと彼は謎の緑色の光に包まれ元の人間に戻った。
そしてその姿を見て私は驚く。
「俺は「ああああ!!」」
「なんだよ・・・ったく」
「あんた・・・前の席の・・・・小笠慎耶!!」
そう。こいつは出席番号が一つ私より小さくて、そして私の席の前。小笠慎耶・・・話したことはないが、顔や声ぐらいわかる。
「・・・あんた誰だ?」
この日彼女は信じられない言葉を聞いた。