第2章part3
なかなか忙しくて更新出来ませんねぇ(´・ω・`)
したいんですがねぇ
暇な合間を縫って作ったので、なんかおかしいかもしれませんが、生暖かい目で見守ってください
それはさておき前回のおさらい
やってきましたアルメリア!
……終了
前回は短かったですね…
獣が飛び立つと、エレベーターより激しい「内臓をひっぱられる感じ」がした。これはかなり気持ちが悪い。それにどんどん高度が上がっていく。どんな遊園地のアトラクションより不安定で危険だ。
司は必死につかまって目を瞑っているしかなかった。
「姫様?あの、着きましたよ」
気付くと、もう獣は地面に足をつけていた。目の前には煉瓦造りの建物が沢山並んだ大きな都市があった。ここは都市が見渡せる小高い丘だ。多分獣はここまでしか運べないのだろう。都市まではまだ遠く、歩いていくのは酔いでふらふらしている司には辛いことだった。
「もちろん歩いて行くわけではございません。今乗り物を呼びますね」
またアルバは指笛を吹いた。
ピー…。
次は何が来るんだろう…。そう司が思っていると、目の前にアルバが来て、真面目な顔で言った。
「これから城に行ってこの国の王に会いに行きます。つまり、貴女の父君にお会いするのですよ」
そんなことを言われても、司は戸惑うばかりだった。父親のことなど知らずに生きてきたのだから。
司はこれから自分が住むであろう城を見た。多くの人が想像し、憧れるお伽の国の城にそっくりだ。夢じゃないかと疑うけれど、これは本物の世界だ。
司は試しに頬を抓ってみたけれど、夢から醒めることはなかった。痛がる司をアルバが不思議そうに見る。司は笑ってすまし、アルバもいつもの笑顔を返してきた。
そうしていると遠くからドスドスッという音が聞こえた。リズムは馬の足音だが、蹄とは違い、地面に鈍く刺さるような音がする。
しばらくすると、遠くに光る何かが見えた。近づいてくると、それは鱗のびっしり生えた…一頭の何かだった。
「何ですか、これ…?」
背中には鞍が付いていて、乗り物だということは分かる…。しかし、ツルツルの鱗に覆われ、首にいたっては、丸くカットしてあるにしても体に刺さりそうな鬣状の棘があるのを見ると恐ろしいとしか言いようがなかった。
黒い目玉は二対あり、両頬の部分からは一対の黒い鞭のような髭?が伸びていた。乗るときはこれを手綱にするのかもしれない。
脚は例えるならば蟹のようになっていて、先は鋭く尖っている。刺されたら、一発でやられるような。
額には緑色の宝石のようなものが付いている。よく見れば、空色の鱗は綺麗かもしれない。アルバが気軽に触っているのを見ていると、司はなんとなく慣れてきたように思えた。
「これは鎧馬です。馬と皆呼びますが、竜の一種です」
そう言われてみれば納得出来るかもしれない。司は恐る恐る近づいてみることにした。
アルバが触っていた鼻面辺りを撫でてみる。鎧馬は意外にも頭を擦り付けてきた。
「わ…」
司は思わず微笑んだ。今まで動物に懐かれなくて、寂しかったからだ。道行く猫には威嚇され、家の近所で飼われている犬には吠えられ、動物園に行くと動物は檻の奥に逃げ…。とにかく動物に懐かれなかった。しかし今確かに動物に懐かれている。見た目では感情を感じられない、触ってみても生き物の温かさもない鎧馬でも、嬉しかった。
「私が乗る鎧馬も来ますので、乗ってみてください」
アルバにそう言われて、司は頑張って乗ろうとした。しかし背の高い鎧馬には簡単には乗れない。見かねたアルバが助けてくれた。長身のアルバは楽々と鎧馬の上へ司を押し上げた。
乗ってみると、普通の馬より細身だが安定している。
「私、馬とか乗れないんですけど!」
司は重要なことを思い出した。乗馬なんてしたことがない。
不安げな司をよそに、アルバは明るい声で言った。
「心配ご無用、ですよ。彼らはよっぽどのことがなければ暴れません」
そのうちに、赤色の鱗の鎧馬がやってきた。アルバは慣れた様子で軽々と乗った。
「本当に大丈夫ですか?」
そう言っている間にも、赤色の鎧馬は歩き始め、司が乗っている空色の鎧馬もつられて歩き始めた。
「大丈夫です。貴女は竜と対等に向き合う『竜姫』ですから」
「…竜姫?」
聞いたことのない言葉に司は困惑した。
「貴女がここに来た理由をお教えしましょう。ここアルメリアは、王制で主に男が王になりますが、実際王に関しては、血筋なんてどうでもいいのです。重要なのは王女の血筋なのです。代々王女は竜姫と呼ばれ、この世界の二つの大陸のうち、こことは違うもう一つの大陸にある、リグリシア・スー王国との戦で竜に乗って戦っていただくのです。ですから獣が貴女を避けるのも、貴女の血筋に潜む竜の力を感じ取ったからでしょう」
アルバはさっきは詳しくないから言えないと言ったくせに、今はすらすらと喋っている。
「戦うだなんて無理です!人を殺すんでしょう?それに竜になんて乗れません!」
アルバはこうして司が反対するのを分かっていたに違いない。今更反対しても、アルバの助けなしでは元の世界に戻れないし、今頼れるのはアルバしかいない。半ば強制的だ。
「貴女が戦わなければ、戦いは長引き、更に多くの人間が死にますよ。それに、貴女の母君もそのまた母君も、この国の王女は皆竜に乗って戦っていらっしゃったのですよ」
返す言葉が見つからず、そしてどうしていいかわからず、司は泣きそうになった。しかし、見知らぬ人の前で泣くわけにはいかないので歯を食いしばって耐えた。
違うことに考えを巡らせようと、これから会うらしい父親のことを考えた。厳しいのか優しいのか…?
『…お母さんは?』
司はふと気がついた。アルバは父親に会うとは言ったけれど、母親に会うとは言っていない。
「アルバさん…私の母親は…」
アルバは数秒間の沈黙の後、きっぱりと言い切った。
「既に他界されております」
司は小さい頃から、親はいないものだと、どこかで思っていた。確かに寂しくはあったが、今の生活が充分楽しかった。
でももしかしたらいるかもしれない、という甘い幻想は失われることはなかった。
今、父親は生きていて、出会える。母親は死んでいて出会えない。複雑な心境と不安が綯い交ぜになって、虚しいばかりだった。
司はとうとう耐えきれなくなって、瞳から涙が零れ落ちた。声を殺して泣いたけれど、アルバは気づいていたかもしれない。泣き止むまでしばらくかかった。しかし、これも知るべき真実だ。
心の虚しさに何をするでもなく馬の背に揺られていると、目の前に街が広がっていた。
人々が往来する様子を見て、司は重要な問題を発見した。
「…言葉って通じるんですか…?」
アルバは司の方に振り返って答えた。
「大丈夫ですよ。無限にある異世界の中で、私が言葉や容姿が似ている世界を探し出し、貴女をその世界に預けたのです。さすがに文字などは違いますが、生活に困るほどではありません」
その言葉を聞いて安心したのもつかの間、司を沢山の視線が貫いた。
「見られていますね…。私もこんな格好ですし」
落ち込んでいる司の気を紛らわそうとしてくれているのか、アルバは呟いた。
司も何か言わないといけないような気にされる…。
「そういえば、何でそんな格好してるんですか?」
「うーん…前に一度日本帝国を見たときに、着ている人が沢山いたので興味を持ったんです。精神統一にも良さそうですし」
確か日本帝国の人々が着物を着ていたのはかなり昔だった気がするが、司は細かいことを気にしている暇はなかった。
周りは白い髪と青緑の目ばかりで、服装は例えるならば、ヨーロッパ中世の服装で、自分はかなり場違いな雰囲気だった。
自分がこの国の住人だということを示す事実は瞳の色だけだった。黒髪も服装も違う。不信感をそのまま表した視線に司は固まってしまったのだ。
それでも鎧馬は前へと進む。人々が自然と道を開けるのは、鎧馬が恐ろしいからかもしれない。街を見渡しても鎧馬は見当たらない。きっと鎧馬は戦に使ったり、高貴な人が乗ったりする生き物なのだろう。
そんなことをぼんやり考えていると、城が目の前に迫ってきた。石造りの壮大な城…司はその威圧感に押しつぶされそうだった。
これからのことを考えると、不安しかなかった。
やっと話の本質が見えてきました!
この調子でちょくちょく頑張ります!
何となく次回予告(予定は未定)
お城のセレブ生活は最高だね!
……終了。