第1章part1
ありがちなネタだし、大好きな小説にかなり影響を受けてるので見たことがあるっていうシーンがあるかもしれません…。拙い作品ですが読んでいただけると幸いです。
ここは架空の国日本帝国。これはそこに暮らす一人の少女のお話…。
~第一章~司
「司!聞いてる?ちょっと」
司は自分の名前を呼ばれて驚いた。なにしろ授業中に寝ていたところで話しかけられたのだ。
「ねぇ、先生見てるよ」
司は急いで起きてみたものの、
「西尾、ここの答え」
見事先生にあてられ答えも言えず立ち尽くしてしまった。もちろん先生に怒られるし、クラスの皆に笑われた。
情けない笑顔で笑う彼女、西尾司は何処にでもいる女子高生だ。いや、ドジさと食欲は人並み以上の女子高生だ。
そういう女子高生ならこの国に何人かいるかもしれない。しかし、司には徹底的に人と違うところがあった。
それは司の瞳の色だ。司は生まれつき、南国の美しい海の浅瀬のような青緑色の瞳だった。もちろんそんな色の瞳の人はカラーコンタクトとかをつけている場合以外では見つからなかった。
それに司のいる地域では珍しいのだが、彼女の両親はいないのだ。物覚えのつかない小さい頃から司は祖父母と一緒に暮らしてきた。祖父母は司が今の17歳になるまで一度も両親について話してくれたことがない。
「司!またボーっとしてるよ!そんなんじゃひかれちゃう」
司は我に返って、肩甲骨のあたりまである黒髪を揺らして声のした方向を見た。
そこには司を心配そうに見つめる少女がいた。少しつり目の目もとと綺麗に結ったポニーテールが彼女の気の強さを表している。
「ごめん…考え事しててまたボーっとしちゃった。麻里は面倒見がいいなぁー」
司が麻里と呼んだ少女は小さい頃からの司の親友で、いつもボケッとしている司を注意してくれるしっかり者なのだ。
司の言葉を聞いて、麻里は少し苦笑いをした。何度注意しても司の「症状」は治らないからだ。
「もう…。ねえ司、今度東京に行かない?美帆が秋葉原行くから一緒にどう?ってさ。一泊二日で」
もう高校生とはいえ全てが自由になるわけではない。司は少し考えてから答えた。
「おばあちゃんに相談してみるね」
すると背後から大きな声が聞こえてきた。
「司!麻里!遅れてごめん。先生に呼び出しくらって」
振り向くと男の子のように髪を短くした少女が走ってきた。見るからに快活そうで、明るい茶色の瞳が魅力的だ。
「美帆!今丁度旅行の話してたの。司も相談しといてくれるってさ」
合流した少女は美帆という名前で、とても格好いい。運動ができるし、司はよく知らないがアニメなどが好きらしい。自然と人が集まる性格なのだ。
「秋葉はいいよ。僕はホントに行けることになって嬉しい」
男っぽい口調だがそれが彼女らしく、魅力的だ。
司はまだまだ二人の会話に参加していたかったが、帰り道が違うのでいつも途中で別れなければならない。
「あっ、もうここまで来ちゃった。じゃあね、麻里、美帆」
「相談しといてねー!」
「一緒に行けるといいな!」
二人の友人に別れを告げ、司は帰路を急いだ。
無事、祖父母から心配されながらも出発出来た司は、青緑の瞳の人を探しながらも、まず一日目の東京を楽しんだ。特に、いつもクールな美帆は秋葉原で人が変わったと言っていいほどはしゃいでいた。
二日目、ありきたりな観光名所を巡り、ショッピングを楽しみ、美味しい物を食べ、渋谷の人ごみの中を必死に歩いていると、司は何かに呼ばれている気がしてまたボーっとしてしまった。
ハッと気がついて前を見たときにはもう遅く、目の前を歩く美帆と麻里は目の前から消えていた。慣れない人ごみの中、必死に目を凝らす司だったが、そこに慣れ親しんだ友人達の姿は見えなかった。
『やばい!見失っちゃった!ケータイつながんない…どうして?』
司は見事に迷ってしまったのだった。自分はどこか抜けていると自覚していたつもりだったが、ここまでとは思わなかった。
しかし、何かが呼んでいる気がして、その直感のままに進むことにした。
「なにこれ?なんかよくわかんない。さっきまでもっと広い道だったのに…」
だんだん歩いていくうちに、道は暗く、狭くなっていった。看板がどこの国の言葉でない言葉で書かれていて何が何だか良く分からない。戻ろうと裏を振り返るとそこもまた知らない場所になっていた。
とにかく前に進むしかない。
しばらく歩くと、唯一看板が日本語で書いてある店があった。古い看板だがちゃんと読める。
『はざま雑貨店…なんとか話ができそう。道を訊こう』
そう思って恐る恐るドアを開けると、そこには人魚のミイラとか、ツチノコの剥製とか、妖しいモノばかりが並んでいた。
「すいませーん!誰かいませんか?あのぅ…」
人を呼びながら奥に進んでいくと、後姿の人影が見えてきた。碧い着物と後ろに結った白髪はなんとなく老人を連想したが、返ってきた返事の声は若い男性の声だった。
「はい」
と言いながらこちらを向いたのは、声の通り若い男性で、髪は白く背が高い。
そして何より驚いたのは、彼の切れ長の瞼の下にある瞳の色が、司と同じ澄んだ青緑色だったこと。司は何とも言えない気持ちになった。
「すみません、私迷ってしまってここがどこだか分からないんです。道を教えていただけないでしょうか」
彼はゆっくりとした口調で答えた。
「ここは、異世界と異世界のはざまなんです。ですから迷うと大変なことになります」
最初の方はあんまりファンタジーじゃないですね…。そのうちぶっ飛んだ話になるので私も頑張りたいと思います。
なんとなく次回予告
謎の青年は頭は大丈夫なのだろうか…?