実験農村10200
Experiments Rural 09003
略称”ExpsR 09003”。
直訳すると実験農村09003。
宿礼院が所有する社会実験用の街。
いわゆる実験都市である。
―――宿礼院は、時々、文法が間違っていることがあるのだが、ここでもExperimentではなくExperimentsになっている
世界のあちこちに建設され、それぞれ実験目的で宿礼院が運営している。
その存在は、秘匿され、世間に公表されることはなかった。
3072年3月22日。
ザ・ニュース・オブ・オルビステラエの2面『謎の廃墟発見される』の記事。
これが宿礼院実験農村が世間の目に触れた最初の事件であった。
暗黒大陸のニュー・タデマ州で突如、謎の廃墟街が発見された。
人口20万人前後が住んでいたと見られる街が見つかったことが報じられている。
しかもこの街を近隣住民はもちろん帝国政府も植民地省も把握していない。
いつから誰が住んでいたのか?
それらの疑問に宿礼院が回答したのは、9月頭に入ってからだ。
この時、発見されたのが”ExpsR 09003”である。
実験が終了したことを受け、破棄されたとのことである。
それまでは、近づく人間に記憶抹消処置を施していたという。
しかもこの件は、狩人の騎士団も把握していない。
宿礼院が独自に行っていた活動であるという。
「この実験は、獣狩りと関係ない。
騎士団に報告する必要はないと考えた。」
それが回答であった。
では、具体的にどのような実験が為されていたのか。
宿礼院の次の回答は、以下である。
男、あるいは女しか住んでいない町の観察実験。
左ハンドル車と右ハンドル車の路上実験。
蒸気自動車は、三輪車と四輪車のどちらが効率的か。
奴隷制は、本当に社会に必要ないか。
共産主義は、どのような社会的影響をもたらすか。
決闘が廃止された社会の観察実験。
狩人がいない地域社会は、いつまで滅亡せずに存続するか。
水道水が歯に与える影響実験。
歴史を授業で教えないと人間は、どのような社会を構築するか。
いずれも他の地域の影響を受けないよう住民は、外界の情報を遮断されている。
その住民は、どこから連れて来られるのか。
実験が終わった後、彼らがどこに行ったのかは、明言されていない。
「記憶消去処置によって偏見やそれまでの知識を洗浄した人間を作られた環境に配置する。
無垢な彼らは、純粋に新しい環境に適合し、宿礼院の求める実験結果を与えてくれる。
残念ながら今の宿礼院には、記憶を消すことはできるが戻すことはできない。
しかし彼らが無事に実験後も生活していることは、請け負うよ。」
実験農村計画を主導する宿礼院のブリストウ教授は、そう注釈した。
”ExpsR 10200”。
この実験農村は、新大陸マレー州にある。
例のようにヴィネア帝国政府には知らされず地番は、存在しない。
この実験農村の人口は、0人である。
「シャルロット!」
7~8歳ぐらいの男の子が蒸気自動並行二輪車―――2つの車輪が前後に並んだ単線車両、例えばBicyclesではない、2つの車輪が横に並んだ乗り物Dicycleに乗って走って来る。
「買い物に行くんだね?
僕も行きたい!」
男の子の前を30後半ぐらいの中年女が乗る蒸気自動三輪車が走っていた。
「洗濯が済んだの?
じゃあ、一緒に行きましょう。」
女は、男の子にそう答えた。
二人は、実験農村の外に向かう。
実験農村の外縁には、宿礼院が張り巡らせたアールデコ様式の美麗な鉄柵が境界を示している。
2台の車が近づくと鉄柵門が自動で開き、二人は、外に出た。
住民が外に自由に出て良い実験農村は、珍しいタイプだ。
二人は、3マイル離れた最寄りの街を目指す。
辺りは、山のように巨大な岩と砂漠が広がっている。
この岩は、何十万年もかけて川が一つの岩を切り裂いたものだ。
今や川が枯れ果てゴツゴツした岩と砂だけが奇妙な風景を作っている。
もはや乾き切って赤茶けた曠野にサボテンの緑がちょん、ちょんと僅かな彩の対比を加えている。
見えてくるのは、ユニコーン・シティ。
こっちも宿礼院新大陸G&C(総督府および企業)が建設した植民市だ。
周辺の鉱山と大規模農場の経営基地となっている。
ここで世界需要の約12%にも及ぶ綿花が生産されている。
新大陸は、宿礼院の支配する世界だ。
ここには、血統鑑定局の目も届かない。
雑多な人種が交配を繰り返し、もはや元の人種も分からない。
ここでは、血質や一等人種という下らない価値観は存在しない。
肌や血で人間の価値は、左右されない。
ここは、自由な世界だ。
とはいえ彼らが幸福かは、疑問符が着く。
G&Cの支配は、中世の農奴制そのもので住民の生活は、苛烈の一言だ。
ただ世界全体を見渡した時、人種差別がないだけマシかも知れない。
それにこの街の活気は、その姿にも顕れている。
まずユニコーン・シティは、銀色に光り輝いている。
工場排煙で色褪んだ帝都ヤーネンドンとは、違う。
《星界の智慧》と呼ばれる宿礼院の将来技術の一つだ。
工場も蒸気自動車も排ガス対策を施している。
汚染をそのまま垂れ流すことは、少なくともユニコーン・シティは、許していない。
―――逆に世界のどの街より汚染された街も宿礼院の植民市や実験農村には存在した
また帰る家もなく路上で寝泊まりする労働者はいない。
G&Cは、全ての住民=労働者の衣食住を完全に管理しているからだ。
その分、自由はないが無責任に放り出されることはない。
そして何より彼らは、獣化に脅かされることはない。
何故なら彼らは、人間ではない―――血統鑑定局が定義するところの一等人種ではないからだ。
これは、宿礼院の発見した事実の一つである。
獣は、一等人種からしか出ないのだ。
ただ宿礼院の理事長は、結論を急ぐべきではないと慎重な姿勢を貫いている。
たかだが数万人を半世紀観察しただけで真実が見える訳がない。
一等人種以外からも獣が出る可能性は、まだあると考えて良いはずだ。
同時に獣の狩人と血統鑑定官に怯えなくてもいい。
彼らは、獣を狩り、一等人種を保護する役目を果たしている。
しかし時に無関係な人間にも襲い掛かる血狂れた殺人鬼だ。
”ExpsR 10200”からやって来た二人は、巨大なビルの間を走る。
巨大な12車線道路の上は、空いていて快適に走ることができる。
だが車が全く走っていない訳ではない。
むしろ旧大陸より車の台数は、ユニコーン・シティの方が多い。
どの車もアールデコ様式の幾何学図形と流れる曲線を組み合わせた美しいデザインに、例の宿礼院の怪物の紋章が入っているが、これは、支給品だからだ。
宿礼院は、一家に1台を目標に蒸気自動車の量産体制を確立している。
いずれは、”ExpsR 10200”からやって来た二人のように一人乗り自動車を個人が所有し、自由にどこにでも行ける時代が来るだろう。
やがて二人は、商店街に到着する。
やはりどの店も看板には、例の怪物の紋章が入っている。
「お子さんですか?」
買い物する女に店の主が訪ねた。
女は、パンを選んでいた。
「いいえ、主人です。」
微笑を浮かべて女がそう答えるが店の主は、首をかしげる。
「は、はあ。
………3422エキュになります。」
店の主が手を伸ばすと女は、コバルトブルーの硬貨を渡した。
ギラギラと光る青い硬貨には、6333と書かれている。
子供のおもちゃのようだがG&Cが発行する新大陸代用貨幣である。
店の主は、3枚の硬貨をお釣りで女に返した。
それぞれ2311、589、11と書かれている。
金銭交換調節器の中もビッシリと硬貨が列を作っている。
どの硬貨も額面が不揃いで見たこともない数字が書かれていた。
132エキュ硬貨や237エキュ硬貨は、どの場面で使うのだろう。
これも複雑な額面の貨幣は、数学的才能に影響を与えるかという実験の結果らしい。
少なくとも新大陸の人々は、計算が早くないとやっていけなさそうだ
「はあ。
どうしてこんなに計算し難いのかしら。」
女は、手のひらに乗せた自由気ままな数字が並ぶ硬貨を睨んだ。
「いっぱい種類がある方が楽しいじゃん。」
男の子は、そう言って面白がった。
それに女は、うんざりした様子で答える。
「オーブリーは、高度数学教育世代だから良いのよ。
昔は、もっと計算し易くなってたんだから。」
「1000エキュ硬貨2枚、100エキュ硬貨4枚、500エキュ硬貨と10エキュ硬貨と1エキュ硬貨を1枚ずつ貰う方がいいの?
全部で硬貨は、9枚になるよ。
僕は、2311エキュ硬貨と589エキュ硬貨と11エキュ硬貨で良いよ。」
そう男の子は、ニコニコ笑って話している。
女には、ちんぷんかんぷんだ。
「…どうして2911エキュ硬貨はなかったのかしらね。」
食料品を買い込んで二人は、”ExpsR 10200”に帰る。
2台の蒸気自動車は、赤い砂漠を抜けていく。
「シャルロット!
このまま僕は、貯水槽の点検に行く!」
男の子は、そう言って女と別れ、別の道を走っていった。
並行二輪車の向かう方向には、大きな金属製のタンクが見える。
女は、家に帰って三輪車を降りた。
もう夕日が沈もうとしている。
西の空は、物資を満載した宿礼院の飛行船団がユニコーン・シティから旧大陸に向かって飛んで行くところだ。
「…人間のやることは…。」
この”ExpsR 10200”で暮らす二人は、人間ではない。
コヴェキンシアと宿礼院は、記録している。
いわゆる収斂進化―――宿礼院は、集合的変質と呼んでいる現象でまったく異なる種の生物が似通った姿や生態を獲得することだがコヴェキンシアは、人間によく似た別の種である。
例えばイルカとシャチのような関係だ。
人間そっくりだがコヴェキンシアは、サル目に属さない。
今は、異なる種ということが分かっているだけで何もつかめていない。
宿礼院が把握する限り、シャルロットとオーブリーが最後の二頭である。
伝承や神話に登場する妖精や悪魔は、彼らのことだと安直に結びつける者もいる。
しかし生物変質研究者の第一人者、ユイスマンス教授は、彼らが星界からやってきた可能性を挙げている。
Hospitalとは、ラテン語の”巡礼者のための宿泊施設”に由来する。
かつて地球は、宇宙人が通過する中間地点だったと宿礼院に考えられている。
それが巡礼者の宿、宿礼院の名前の意味である。
「おそらくシャルロットとオーブリーは、第1世代ではない。
宇宙船が不時着し、この地球に残されたコヴェキンシアの子孫であろう。」
ユイスマンス教授は、そう結論付けた。
彼らは、あまりに他の生物と違い過ぎる。
しかも全く突然に地球に発生したことになる。
これは、他の天体から来訪したとしか考えられないというのだ。
「保護した時に子供だったオーブリーはともかくシャルロットは、自分たちの歴史を知っているだろう?」
理事長は、ユイスマンスに訊ねた。
彼は、怪訝そうに答えるだけだ。
「理事長。
医者は、患者のプライバシーを守ります。
それに客の身の上を聞き出すのは、よいホテルマンでしょうか?」
「ああ、そうか。
では、シモンズ、彼らを発見した時の状況を教えて貰えるかね?
私は、良く分からない異星人と思しい謎の生物に年間30億エキュも投資して彼らに人類が考え得る最上級の医療を提供するのは、納得できないのだが。」
理事長は、不愉快そうに顔をしかめて白髪の老人にそう言った。
シモンズの引き締まった体は、冒険家という彼の半生を黙して語る。
事実彼は、荒涼とした黒真珠海のど真ん中の孤島でシャルロットとオーブリーを発見したのだ。
「毎日、彼らの糞尿から何から何まで医師たちは、成分分析をしている。
防疫用輸血液も精製に精製を重ねたものを湯水のように使っている。
まさか人間でしたでは、株主総会でドヤされるんだよ。」
そう話しながら理事長は、腕組みして唸った。
「……彼らを発見した孤島は、陸地から遠く離れています。
宿礼院の船でもなければ到達できない海域だ。
人間であるはずがありません、理事長。」
シモンズは、大自然で鍛えられた逞しい顔で答えた。
これだけで多くの人が反論を躊躇う威圧感がある。
しかしそこは、宿礼院の理事長だ。
簡単には引き下がらない。
「それだけで宇宙人だと納得できんよ。
コヴェキンシア星とやらがあるとして、そこは、例の孤島から最も近い海岸より近いかね?
私は、遠い天体の来訪者という可能性より大航海時代の生き残りと考える方がはるかに理性的だと思うのだが。」
「彼らの血液や便まで調べ尽くしているのでしょう。」
「数字や成分表など株主は、信じない。
異星人の使っていたフォークかナイフでも見つからんかね?」
理事長は、ナイフとフォークを使う手の動きをしながら言った。
その仕種がおかしかったのでユイスマンスは、思わず顔を背ける。
「…彼らを裸にして株主たちの前に連れ出せとは言わない。
だが連中が本気で喚き始めれば、それを回避できん。
宇宙人とセックスしたいなどと抜かす金持ちも出ているんだぞ?」
「なら宇宙人と証明しない方がいい。」
「ワシの首が飛ぶわ。」
「それでいい。」
「ワシは、お前の敵か、シモンズ?
ええ?」
真剣な顔で理事長は、シモンズの瞳を覗き込む。
「発掘チームを発足し、宇宙人の痕跡を探します。」
シモンズは、耐え兼ねたようにそう答えた。
その顔には、怒りが込み上げている。
「……彼らの墓を暴くというのですか、理事長。
宿礼院は、星界の宿であるのに。
その眠りを妨げることになるなんて屈辱です。」
シモンズは、握り拳を作ってそう言った。
理事長も不満気に頭を振る。
「可哀そうだがシャルロットとオーブリーは、一銭も払っておらん。
彼らの代わりに宿代を支払う株主の意向に沿う他ない。」
「結局、金ですか。」
「血で出来た金だよ!」
流石に理事長も我慢ができなくなった。
「シャルロットとオーブリーは、良いだろう!
パンダやゴリラのように見世物になっている訳ではないからな!!
あの二人の生活を支えるために他に犠牲になっている人間や珍しい動植物が大勢いるんだよ!?」
理事長が怒鳴るとシモンズも睨み返した。
大きく深呼吸してまた口を開く。
「貴方は、キングだ。
金を出すだけの連中の言いなりにならないでください。」
「理事長。
宿礼院を引っ張っていけるのは、貴方しかいない。
みな貴方の苦労には感謝しています。」
ユイスマンスも慰めるように太った中年男に優しく声をかけた。
理事長は、自分専用のペリカンのペストマスクを横目で見つめている。
「最善を尽くす。」
”ExpsR 10200”が夜の帳に包まれる。
「あ、巨人!」
オーブリーが窓の外を指さした。
外は、濃紺の夜空に白い星々が輝いている。
時々、星を遮って黒い何かが動いているのが分かった。
宿礼院の新兵器という噂だ。
「オーブリー、冷める前に食べて。」
シャルロットがピシャリとそう言うとオーブリーは、テーブルの方を向いた。
シチューを食べるオーブリーを見てシャルロットは、意味深な笑みを浮かべる。
地球最後の二人だから夫婦になっているが彼女は、オーブリーをどう思っているのか。
保護した絶滅危惧動物をつがいにしておくのとは、訳が違う。
きっと人間らしい恋愛感情があるはずだ。
コヴェキンシアは、外見だけでなく生態も人間に近い。
これも収斂進化の結果だろう。
これまで地球で生存できたのも人間に近いためだ。
オーブリーの年齢は、両手の指で数える程度だがシャルロットと性交している。
もう立派な夫という訳だ。
二人の関係を発見したシモンズも知らない。
だがシャルロットがオーブリーとの性行為を嫌がらないことは、観察員も確認している。
「二人は、いったいどういう関係なんでしょう。
……兄弟ではないということですか?」
4㎞離れた場所からシャルロットとオーブリーを観察する観察員がいる。
監視塔の中で双眼鏡を手にペストマスクの観察員たちが口々に喋っていた。
「姉弟でも他に相手がいないんじゃ選びようがないだろ。」
「変な妄想しないで。
二人を監視してるだけでも最低なのに。」
「おい、まただよ。
この話題は、この職場では、禁じ手なんだぜ。」
「もし子供ができたらどうするんだ?
子供たちも兄弟で結婚すると望んだら俺たちは、止めるべきか?
それともコヴェキンシアたちの意思を尊重する?」
「気持ち悪い話は止してくれ。」
「兄弟で繁殖すればいいだろ。
始祖アルスと十三神妃もそうやって繁殖したんだ。
宗教を信じてるバカ共に言わせりゃな。」
「そうだぜ。
シャルロットとオーブリーは、アルスと女神様なのさ。」
「はあ…眩暈してきた。」
「今からでも人間との繁殖実験をするべきだ。」
「オーブリーが種馬になってオーブリーの子らがアルスの子らを駆逐してくれればいい。
俺たちのおふくろや兄弟をバラバラにした鬼どもだ。」
「その鬼も一緒に働いてるんだが?」
「もし一等人種が絶滅危惧種になったらこうやって隔離されるんだろうか。」
「間違いねえ。
血質の近い者同士が交配し続けてたら滅びるに決まってる。」
「じゃあ、コヴェキンシアは、人類の救い主だ。
彼らの血が俺たちの血を変えてくれる。」
「もしコヴェキンシアの母星が人類を見たら………。
救うより滅ぼすかも知れないぜ?」
「あり得ないよ!
僕らは、彼らを保護してる!」
「ああ…天に坐します我らがコヴェキンシアよ。
願わくば罪深き我らをお救いくださぁい、ぎひひひ…。」
「Amen。」
「そうさ。
コヴェキンシアが人類を見付けて征服者が原住民を殺戮する時みたいになっても俺たち宿礼院だけは、見逃してもらえるんだ!」
「そしてゴリラの隣に並んで連中の星で見世物になるんじゃん。」
「ふふっ。
…それが古代人が信じる天国って奴の正体なんだろうな。」
秘密は、最期まで守り通されるだろう。
シャルロットは、隣で眠るオーブリーを見ながら妖しく微笑む。
彼女は、彼を見ていると微笑みが浮かんで堪らないのだ。
これは、復讐だ。
コヴェキンシアが地球に、いつ、どのようにやって来たか。
その歴史については、シャルロットも教えられていない。
彼女が産まれてすぐ教え込まれたのは、憎しみだ。
コヴェキンシアは、二つの集団に別れ、絶海の孤島で争い続けていた。
文字通り最後の二人になるまで続いた途方もない憎しみの連鎖だ。
敵方の皇帝の子孫であるオーブリーが穢れた女の夫に納まること。
彼の両親が唾を吐いた呪われた女奴隷に彼が愛情を向けること。
神聖な皇帝の血を邪悪な咎人の血と交わらせ、汚辱し、堕落させること。
それがシャルロットにとって一族の憎悪を濯ぐ生涯の悦であるを。