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5 はじめての召喚

「え?っ危っな!」


 怒号が聞こえ咄嗟に後ろを振り向くと、ナイフを持って襲い掛かってくる女性の姿があった。俺は奇跡的に今の攻撃を避けられたが、次は避けられる自信がない。


「ちょ、誰!?」


「マスター、これは冒険者狩りといって装備支給日に...」


「そんな呑気に説明してる場合か!」


「ごちゃごちゃうるせぇな!」


 すると、冒険者狩りは再度急所目掛けて刺そうとしてきた。


「一旦、『図鑑』閉じ...あ。」


 殺されるかもという焦りから、急いで図鑑を閉じようとしら、間違えてどこか違うボタンを押してしまった。


「個体名、『スライム』を召喚します」


「ん?今、召喚って言った...?」


 すると、図鑑から強い風が吹き出て冒険者狩りは吹き飛ばされた。そして、図鑑から魔法陣のようなものが出てきて、そこからなんと、スライムが出てきたのだ。


「ぷるぷるー!」


「.........はぁ!?こいつさっき倒したスライムだよな??いや、今喋った!?」


「何でスライムが出てきやがったんだ。てめぇの仕業か?」


「いやぁ?なんなんでしょうねこのスライム!ちょっと自分もわかんないんで今日のとこは勘弁...」


「あー今の声、ご主人様ぷる!」


「へ?ご主人さ...ま...?も、もしかして俺のことか?とりあえず、この冒険者狩りをどうにかしないと...」


「...ご主人様、もしかして、こいつ敵ぷる?」


「え、えっと...?そうだけど...」


 さっき図鑑を見ていた時、疑問に感じた所があった。一番下の方に『召喚しますか?』と書かれていたはずだ。だとすると、俺のスキル『図鑑』は倒したモンスターを召喚できるんじゃないか?


「もしかして、手を貸してくれるのか?」


「もちろんぷるー!」


 話がわかるスライムだ、と感心しているが、どこか不安な気持ちでいっぱいになる。そう、スライムとは全てのプレイヤーが考えるザ・雑魚モンスターだからだ。


「ここは任せて、ご主人様は逃げるぷる!」


「あ、あぁ助かる!」


「さっきから一人で何しゃべってるんだてめぇ?」


 どうやら、スライムの声は俺にしか聞こえていないらしく、幸いにも作戦はバレていない模様。勢いのまま、俺は都市ミレアスを目指し走っていく。


「おい!待て!レベル差のあるお前とあたしとじゃスピードが違ぇから逃げきれるわけ...」


「そっちは行かせないぷる!」


「なんだこのスライム?急に目の前に...っんぐ!」


 スライムは追いかけようとする冒険者狩りに対して、身体全部を使い顔に飛びかかった。当然、顔を何かで覆われたら呼吸ができなくなる。


(い、息ができない...しかも核を分離させてやがる...!)


「ご主人様を甘く見た罰ぷるよ」


(くそ、なんだこのスライムは...!こんな上位種がいるなんて聞いてないぞ...!もう、だめだ。意識が遠のいて...)


 そうしていると、冒険者狩りは酸欠を起こして倒れてしまった。


「よし、ご主人様の元へ帰るぷる!」


 



 スライムが足止めしていてくれた頃、俺は無我夢中で走り続け、都市ミレアスの近くまで逃げ切ることに成功した。


「はぁ...はぁ...ここまでくればもう大丈夫だろう...にしても、あのスライム大丈夫なのかなぁ?」


 命大事さに突発的にスライムに助けてもらったが、モンスターに助けられるという前代未聞な事が起こったため、少しあのスライムのことが心配になっている。


「とりあえず、『図鑑』を開いてみるか。開け(アプリーレ)!」


「個体名『スライム』のレベルが1→11に上がりました。ご確認ください」


「レベルが上がった...?」


 まさか、あの冒険者狩りを倒したのか?まず、スライムが仲間に加わっているのは間違えなさそうだ。


 『図鑑』を確認すると、スライムのページの下に『召喚しますか?』という、問いかけがやはり存在した。おそらく、先ほどはこの召喚の欄のはいを焦って押してしまったのであろう。ということは、また呼び出せるのかもしれない。

 幸い、ミレアスまではまだ距離があるから呼び出してみることにした。


「えいっ」


「個体名、『スライム』を召喚します」


「ぷるぷるー!」


 やっぱり、さっきのスライムだよな...?おそるおそる、会話を試みる。


「君がさっき助けてくれたスライムだよね?」


「そうですぷる!」


「なんかレベル上がったって通知来たんだけど...?」


「あー、多分あの人間を倒したからだと思いますぷる!」


 おいおい。あの冒険者狩り、見た目が明らかに俺より格上だったのによく倒したな。


「ご主人様が無事でよかったぷる!」


「そのご主人様ってなんなの?」


「ぷる!?ひどいですよご主人様!お供にしてくれたじゃないぷるですか!」


「お供...?」


 当然、俺にはそんなことをした覚えはない。


 ...思い返してみると、このスライムの情報が更新されたのはスライムを倒したときだということを思い出す。そして、俺は色々な妄想をした


 やっぱり、俺のスキル『図鑑』は、出会ったモンスターの情報を見れるだけではなく、倒したモンスターを召喚することができるのか...?

 だとしたら、外れスキルなんかじゃなくて、超ロマンスキルじゃないか!!もしや、あの魔王も倒したらいつでも召喚できちゃう感じなのか...?


 うっひょーー!!めっちゃやる気でてきた!さっきは魔王とかどうでもいいとか思ってたけど、今は討伐する気満々だよ!


「ご主人様...?」


「ごめんごめん。少し考え事してて。あ、てか名前付けてなかったよね?」


「え、いいんですかぷる!?」


「もちろん!俺の命を救ってくれたし」


 とは言ったが、ペットなどの名前考えたりするのは大苦手分野である。実家で飼ってた犬も悩んでポチになった記憶がある、結局1時間は掛かった末につけた名前だ。


「うーーん。スライムからとるかぁ?いや、安直すぎるか」


「マスター、名前ならこの地名である()()()()()草原からとるのはどうでしょうか」


「なるほど...あ!思い付いたぞ!」


「個体名『スライム』の名前を変更しますか?」


「もちろん、はい。だ!」


「個体名『スライム』を個体名『ロティ』に変更しました」


「今日から君の名前はロティだ!」


「ロティ...!さすがご主人様ぷる!」


 かくして、政宗とモンスター達とのもう一つの冒険が幕を開けたのであった...

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