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4 社畜は断れない

「なぁ、マサムネがわざわざこの三人にしたってことは何かあったんだろ?」


「お、さすが話が早いな」


「なになにどういうこと?」


「信玄と恵梨香には共有しておこうと思って、実は、俺らの中に裏切り者がいるかもしれないんだ」


「裏切り者?それってどういうこと?」


 俺はナビから聞いた情報などをありのまま二人に伝えた。


「なるほどな...」


「裏切り者...思ってみれば、政宗君のデモプレイ用のソフトが今日届いていたのも少しおかしかったのかもね」


 ぐ、言われてみれば確かにそうだ。早くプレイしたい気持ちが強すぎてつい忘れていた。


「とりあえず、この世界で生きていくための知識がなさすぎるから、三人分かれて情報収集をしよう」


「了解!」


「...はーい」


「...?なんで信玄ニヤニヤしてんの?」


「いや、お前が仕切るなんて昔じゃ考えられなくてつい。あと、なす姉の前でイキってんのかなって」


「くっ、善良プレイヤーの俺がPKできないことを恨む日がくるとは...」


 数秒間、信玄と目を合わせているとお互い耐えきれなくなり、思わず笑ってしまった。恵梨香もそれにつられて笑い始め、この二人とよく夜遅くまで通話していた頃を思い出して、少しジーンとなってしまった。


「...じゃあそろそろ探索しよっか」


「そうだな」


「じゃあ、ざっと一時間後に宿屋で集合しよう!」


「おけ」


「了解!政宗君も望月君も気を付けて!」


 そうして、俺たちは町での情報収集を始めた。とはいったものの、無計画でしかないのでナビに質問してみることにした。


「ナビはどうやって情報集めていくべきだと思う?」


「最初は冒険者ギルドに行くのがよろしいと思います」


「ありがとう...てかさ、ナビが色々教えてくれたりしてもいいんだよ?」


「やはり、マスターのご友人のお二方は自力で情報収集をしていると思うので、ここは自力で集めましょう」


「っち...ズルはできないか...」


 俺はナビに若干のお母さん味を感じつつも、マップを開き冒険者ギルドを目指す向かうことにした。そして、歩くこと数十分後...

 

「ここが冒険者ギルドか。変なとこになくてよかった...」


 幸いにも先ほどいた場所と同じ通りを真っ直ぐ歩くだけだったため、迷わずにたどり着くことができた。

 そして、冒険者ギルドの中に入ると、まばらに冒険者がいるだけで、中は閑散としていた。ひとまず、受付のお姉さんから話を聞こうと思い話しかける。


「あのーすみません」


「いらっしゃいませ!クエストの発注ですね!少々お待ちください!」


「えっ、あっ、え?」


「あの、マスター」


 受付の女性の間違いに戸惑っていると、突然ナビが話しかけてきた。


「忘れていたのですが、先ほど冒険者になっていただいた通り、この世界では冒険者がとても少ないため、それに比例し、クエストも有り余るほど存在しています。なので、一つでも多く消費させようとしているのかもしれないです」


 なるほど、だから話も聞かずにクエスト用意しにいったわけね。いや、超迷惑なんですけど?


「お待たせしました!こちらが今受けられるクエストでございます!」


「あの...」


「あ、ごめんなさい!」


 お、ようやく勘違いしてたことに気づいてくれたか。こういう間違い指摘するの昔から苦手なんだよな。


「お名前お聞きするの忘れてましたね!」


 ...もう仕方ない。


「マサムネです...」


「マ、マスター?断らないんですか?」


 だって、こんな目キラキラさせて訴えかけられたら断れないじゃん!!


「...はあ、では簡単なクエスト選んでくださいね」


 もちろんでございます。次は断るように頑張る...よ。


「マサムネ様ですね!そちらあてに受注できるクエストを送ったため、お好きなタイミングでお受けください!」


「はい、ありがとうございます...」


「では、またのご利用お待ちしております!」


 結局、情報を聞き出すことなく冒険者ギルドを後にした。せっかくなので、クエストを閲覧することにする。


 薬草集めに、お使いクエスト、住民の護衛...あ、これ受けられるんじゃないか?


『夜限定!!スライムを一体倒す度報酬UP!? 一体につき1000G 完全成果型報酬、低レベル歓迎、未経験歓迎! 帝国騎士団より』


 こんな単発バイトみたな感じで募集してるとこもあるんだ。なんか、安心したわ。まぁ、受けてみるか。スライムだったら経験上致命傷を負うこともないと思うし。


『クエストを受注しました。目的地までの経路をマップに表示させます』


 この経路通りに、行けばプロティフ草原ってとこに行けるのか。まぁ、マップに赤い線で経路まで表示されてるんだし、迷うわけないよね。




「マスター、ようやくプロティフ草原につきました」


 めちゃくちゃ迷った。本当に自分でも殴りたくなるほど、方向音痴である。だが、なんとかたどり着くことができた。


 疲れているが、クエストのスライムを探すためあたりを見渡してみる。すると、草原にスライムがポツンと一匹佇んでいる。


「まずは、『図鑑』を開き魔物の基本情報を見てみましょう」


「了解!開け(アプリーレ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


種族名

スライム


身長1cm~2m

体重1g~100g


ドロップ品

スライムの粘液、スライムボール


レアドロップ品

スライム・ストーン


弱点

真ん中の小さな核


説明

 スライムは個体の貧弱さから、群れて行動をする。

 群れず、一匹で行動しているものは生まれてまだ幼い個体であることが多い。

 冒険者の経験値上げや、スキルのお試しに使われることがほとんどである。

 こちらから攻撃しない限り襲われることはないため、飼っている物好きもいるという。

 また、とある地方ではドロップ品のスライムの粘液を使った郷土料理があり、観光客に非常に人気を誇っている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はえぇ、思ってたよりすごいな...」


 自分のスキルに少し感心していると、スライムがこちらへ近づいてくる。


「種族名『スライム』に遭遇しました」


 なるほど。モンスターが近くに近づいてくると、アナウンスしてくれるのか。俺は『図鑑』に書いてあった通り、スライムの身体にある核の位置をしっかり確認する。近づいても無害なのにこちらはワンパンでキルできるのは心が痛い。ごめんな...


 心の中で謝りながら、支給された剣でスライムを真っ二つにすると、スライムの身体が飛び散り少し罪悪感を覚えた。


「撃破した魔物(モンスター)の情報を更新しました。『図鑑』を使いご確認ください」


「更新とかあるんだ。ちょっと見てみるか。開け(アプリーレ)!」


 俺は呑気に『図鑑』を開き更新された情報を見ていた。遠くから密かに迫ってきている足音にも気づかず...


「えっと、「名前を名付けてください」?しかも、この下の...」


ザッザッザッ...


「死ねぇ!!」

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