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2 魔王と伝説種

「マスター、考え事をしている最中に申し訳ないのですがチュートリアルを終了してよろしいですか?」


「あ、ごめんごめん。終了していいよ」


「では、チュートリアルを終了します」


 ナビがそう言うと、先ほどと同じく目の前がまばゆい光で包まれ目をつぶる。そして、目を開けると先ほどの行列の前に立っていた。ここは一体...?


「ここは、都市ミレアスです。冒険者を目指す者が一番最初に訪れる町として有名です」


「冒険者志願の方ー、装備支給の最後尾はこちらでーす」


 おそらく、兵士であろう人が俺の後ろに立った。これは、なんの行列はなのでしょうか...


「今、この世界は魔王が1/3ほどを支配領域として拡大させているほど、冒険者が足りていません。その焦りもあってか王様は冒険者を志願した人に装備一式とゴールドを配っているのですが、今日がその装備の支給日なのです」


 俺の疑問をすぐさま解決すべくナビが言う。MMOにしては、魔王とかいるの結構珍しいな。こういうのって、ストーリー上はでてくるけど戦ったりできなそう...戦えたらさぞ面白いだろうなぁ。


「お前ニヤニヤしてないで前つめろ!」


 一人で妄想を繰り広げていると、後ろから怒鳴られる。


「あ、すみません...」


 にしても、周りの人の格好を見るとスーツの自分が浮いてるのがよくわかる。視線が痛いから早く冒険者用の装備貰って着替えないと。

 そして、待つこと30分ようやくお城の目の前までたどり着いた。列長すぎね?こんなの現実世界だったら絶対並ばなかったわ。

 さらに、5分ほど経ったときようやく自分の番が来た。


「はい、じゃあこの冒険者届けに名前書いて」


 少し、適当な対応にイラっとしつつも自分のゲームで使用している名前である、『マサムネ』という字を丁寧に書いた。


「よし、じゃあこのゴールド受け取って、あっちにある装備を一着だけ持っていって」


 完全に流れ作業で渡されるとは思っていなかった。スーツは多分NPCからしたら見慣れない服なのに疑われず、冒険者装備貰えるのはでかい。




 ...ふっふーん。装備一式とゴールドもらってきちゃったー。とりあえず、もらえたのは3万ゴールドくらいか。このゲームでどのくらいの価値かわからないから慎重に使わないとな。


「マスター、この世界を知るためにまず図書館に行くことをおすすめします」


 たしかに。クラメンとの集合時間までまだ時間あるし、とりあえず図書館目指して出発しますか。魔王の情報とか見てみたいしな...

 で、図書館ってどこなの?


「決して私が知らない訳ではないですが、自分で探すことを推奨します」


 俺は気づいた。ナビはめんどくさい性格であることに。

 メニューを起動させ、マップの項目をタップし図書館の場所を確認する。しかし、ここで重要なことを思い出す。自分自身が大の方向音痴であることを。


 かえこれ、歩くこと15分ほどしたところでようやく図書館にたどり着くことができた。マップで確認したときは到着推定時間3分って書いてたのにな。こ、これもバグか...!

 迷っていたことはさておき、目の前の予想していた図書館よりも大きい建物に入って、お目当ての本を探す。まずは、魔物(モンスター)の知識を増やさないとな。お、これなんかどうだ?


 『十体の伝説種』

 

 伝説種?事前情報では特異種、いわゆるユニークモンスターとよばれるランクまでしかなかったはずだが。このゲームの考察要素かな?とりあえず、読んでおこう。俺は本に手を伸ばした。


「あっ、ごめんなさい!」


 本を取ろうとすると女性と手が当たってしまい、咄嗟に女性が謝ってきた。


「こ、こちらこそすみません!えっと、先に読んでもいいですか?」


「もちろんです!もちろんです!」


「ありがとうございます」


 ん?この人、お尻のとこに白くて丸い何かが付いてるな...いやいや何見てるんだ俺。指摘したら変態に思われるかもだし言わないでおこう。


 ...よいしょと、さてさて読んでいきますか。


『この世界における魔物モンスターは基本的に普通種、上位種、特異種に分類される。だが、そのモンスター達とは一線を画し、人々の恐怖などから、十体の伝説種と呼ばれる魔物モンスターが存在するらしい。』


 いや、曖昧なんかい。


『その圧倒的強さから、目撃情報のある伝説種には個体名がつけられている。以下の通りである。


一、竜聖 ミュートス・ドラゴニア

ニ、黄泉の使者 タナトス

三、深淵の盟主 ポセイド

四、災厄の悪夢 オネイロス

五、銀狼の大神 リュコス

六、魅惑の化兎 クネーラ

七、????

八、????

九、????

十、????


 となっている。十体の伝説種は、過去の書物にその存在だけが記載されており、残り四体の詳細はいまだに不明である。


 確認されている六体に関しても、過去の文献や、数少ない目撃証言を参考にしているため、信憑性は低いと考えた方がよい。』

 

 って感じか、なるほどなぁ...てか、この本に書いてる通り、そもそも伝説種なんているのか...?


開け(アプリーレ)


 やはりだ。『図鑑』の魔物(モンスター)の情報も、特異種の項目までしか記載されていない。


 もし、存在するんだとしたらおそらく、この世界に一体しか湧かない系の魔物(モンスター)なはずだから。次はセンゴクのみんなと一緒に討伐できるといいな...


 よし、次は先ほど持ってきておいた、魔王の本を読むことにした。 


『魔王フォビア・ロードは約30年前に突然現れ、その絶大な力で魔物(モンスター)達を配下にしていき、自身の支配領域を拡大させていった。


 配下になった魔物モンスターは、魔族と呼ばれ、魔物(モンスター)ではなくなってしまう。

 魔王フォビアの瘴気にあてられるだけで、普通種と上位種は、魔族へ変異し、魔王の支配下になる。

 このような事例から推測するに、魔王フォビアもスキルのようなものを所持していると考えられる。


 また、その異質さから別世界から来たと考える者もそう少なくないそうだ...』


「なるほど。魔王フォビア・ロード...」


 こいつが、俺らの倒すべき相手ってことか。にしても魔王に伝説種に事前情報にない、新機能がたくさんあってめちゃくちゃワクワクするな。


『なお、魔族の中でも特に力があり、魔王に絶大な忠誠を誓っている者たちを六大魔神と呼ぶ。


『断罪のハルマティ』

『業炎のフロガ』

『終焉のロス』

『白虎のティグラ』

『神秘のクリュプティス』

『黒白のメテルト』


 と、名付けられている。いづれも、魔王フォビアと同じく、スキルのようなものを所持しており、その強さは特異種の魔物以上と言われている。

 また、六大魔神は特異種が魔王の影響を受け、魔族になったと考えられているため、人間の言葉を扱う。』


 こいつらも一体しかいないんだろうな。にしても、ユニークモンスター以上か。早くレベリングしてデモ版のうちに討伐できたらネットはさぞ盛り上がるのが見える。


『魔王フォビア・ロードが拠点としている魔王城は、この大陸の北に位置し、その周辺は全て支配領域となっているため迂闊に近づいてはいけない。


 十体の伝説種である、竜聖ミュートス・ドラゴニアがいるとされている、アルテマス山脈を越えた先に魔王城が見えてくる。


 学者の見解によると、近年、魔王が支配領域を広げなくなったのは、竜聖ミュートス・ドラゴニアが守っているからなのではないか。という、見解もある。』


 ほほう。ここにも、伝説種が出てきたな。魔王城の近くに住んでるなんて肝が座ってるねー。いやはや、戦ってみたいもんですなー。


 って、もうこんな時間か。ナビが図書館の場所教えてくれなかったせいで、全然本読めなかった。


「なにかおっしゃいましたか?」


「い、いえ何も...」


 俺はナビの圧に怯えながら、集合時間も迫っていたため図書館を後にした。あ、そうえば、さっきの女性(ひと)もこの伝説種の本読みたがってたよな、返すの忘れてた...。俺は、怒っていることを危惧して、恐る恐る先ほどの女性に話しかける。


「すみませんー、この本読み終わったんで返しますよー...」


「あっ、ありがとうございます」


 そう言い深々と頭を下げた。帽子を深々と被っているため顔があまり見えないのが残念だ。


「いえいえ!」


 ジーッと女性がローレの顔を見つめている。


「...」


「...?」


 無言の時間が流れている。はっ!まさか、返すの遅くて怒ってる!?


「えっと、返すの遅くなってごめ...」


「あ、あの、この本どうでした?」


 気を利かせて謝ろうとしたが、それを遮り女性は興奮気味に本の感想を求めてきた。


「?ああぁ、面白かったですよ!」


「そうですか...わざわざありがとうございます」


 女性が軽く会釈をした。顔を見ると、少し口角が上がっているように見えたが、深堀はしないようにする。


「いえいえ!こちらこそ遅くなって、ごめんなさい!」


「大丈夫ですよー。暇でしたし!」


 よし、ひとまず怒ってなさそうでよかったー...


「では、俺はこの辺で」


「はい!ではまた!」


 また、という部分に違和感を覚えつつも、集合時間に遅れるとロクなことにならないので足早に図書館を後にした。


「じゃ、さよならー!」


「さようならー...」


 お互い頭を下げて、挨拶が済むと少し足早にその場を後にした。






「...あの冒険者さん、微かに魔物の匂いがしたなぁ。またどっかで会うことになりそうだね」

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