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第4話 私があいつを嫌いになった理由

「は?」


夕香が驚いた表情で修也を見つめる。


「嫌に決まってるでしょ。誰かに見られたらまた他の女子に言われるんだから!」


夕香は修也が掴んだ袖を外し、学校を去る。

修也は再び手を伸ばそうとするが、夕香に届かない。


(なんでそんな態度をとるんだよ……前はもっと優しかったのに……)


修也は下を向いた。



「ただいま」

「おかえり~」


家の奥から母親の由美子ゆみこの声が聞こえる。


「今日早いね」

「部活休みって言ったじゃん」

「そういえばそんなこと言ってたわね」

「私、勉強するから。ご飯できたら呼んで」

「了解!」


夕香が部屋に入ると鞄から教科書とノートと宿題プリントを取り出す。

そして教科書とノートを広げてプリントの問題を解き始めた。


(ここをこうして……あとはxを代入して……終わった~)


夕香は背伸びをして、ベッドに寝転がる。


(少し言い過ぎたかな……)


夕香は修也と別れ際のことを思い出していた。


(あいつは悪くなかったのに一方的に攻めちゃった……)



一年前。修也が夕香に話しかけてきた時のことだ。


「浅田!昨日のクッキー美味しかったよ。ありがとな」

「よかった。それにしてもサッカー部って大変そうだね」

「そうなんだよ。何より全国レベルだからな。初心者が入部するとスタメンどころかボールにすら触らせてもらえない」

「そっか……頑張ってね!応援してるよ!」

「お、おう!」


あれから修也と夕香は休み時間でも会ったら会話をするほどの仲になった。


「浅田!俺、今度の練習試合にベンチで参加することになった!」

「すごい!頑張ったんだね!」

「でもまだまだだ。スタメンに入れるようにこれからも頑張る!」



夜遅くに夕香がグラウンドを見ると修也がシュート練習をしていた。


「はぁ……はぁ……」

「頑張ってるね」

「浅田……まだ残ってたんだ」

「今日はカレー作ったから時間かかっちゃった」

「いいな~」

「六皇子にはこれをあげる」


夕香はオレンジジュースを差し出す。


「ありがとう浅田!」

「ふふっ……夕香でいいよ。練習頑張ってね!」

「あぁ!またな浅田!……じゃなくて夕香!」



休み時間に夕香が本を読んでいると三人の女子生徒たちが教室に入ってきた。


「あんたが浅田夕香?」

「そうだけど……あなたたちは?」

「あんたって六皇子君と付き合ってるの?」

「えっ?付き合ってないけど……」

「そう。ならいいけど」

「急にやってきてあんたたちは誰なのよ!」

「私たちは六皇子君のファンよ。だから六皇子君に悪い虫がつかないように見張ってるの」

「もう六皇子君に関わらないでね」


女子生徒たちが教室を去る。


(何今の……)


夕香は恐怖を覚えた。



あれから夕香は修也と関わらないようになった。


「おはよう!夕香!」

「……」

「夕香?」


修也を無視するのはしんどかったがまた修也と話せば何か言われるかもしれない。

そう思うと会話はできなかった。



放課後、夕香はあの女子生徒たちに絡まれていた。


「ねぇ?本当に付き合ってないの?」

「つ、付き合ってないわよ。あれから話してないんだから!」

「にしては六皇子君、あんたに話しかけるよね?他の女子には話しかけないのに」

「そんなの知らないわよ……」

「じゃあ教えてあげる。あんたと六皇子君付き合ってるからでしょ?」

「だから付き合ってないって……」

「嘘つかないで!」


夕香は思いっきり頬を叩かれた。


「ちょっと麗奈!それはやりすぎだよ……」

「そうよ!もし先生に言われたら……」

「うるさい!こいつが噓をつくのが悪いのよ!」

「でも付き合ってないって何回も言ってるじゃない」

「そうよ。信じてあげようよ……」

「わかったわ。じゃあ……スマホで六皇子君にあなたのことが嫌いですってメールで送って」

「……えっ?」

「麗奈⁉」

「やりすぎだって!」

「あんたたちは黙ってて!で?どうする?」


夕香は手を震わせながら文字を入力し、送信した。


「アッハッハッハ!本当に送った!じゃあ信じてあげる」


麗奈は二人を連れて、どこかに行った。夕香はスマホに大粒の涙を流した。



朝、修也が夕香の席に近づいた。


「あの……夕香……昨日のメールって……」

「そのままの意味よ。私はあんたなんか大っ嫌い」


夕香は修也を見る目は嫌悪感を示している。

その顔には明るく可愛かった夕香はどこにもいなかった。


「二度と話しかけないで」


修也が呆然とするなか、チャイムがなった。


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