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第17話 夕香と夏祭り

真夏の猛暑。光星学園のサッカーグラウンドで練習試合が行われていた。

「……暑いな」

額の汗を拭いながら、修也は息を整える。

容赦ない日差しがグラウンドを照りつけ、まるで灼熱の砂漠のようだった。

それでも試合のペースは緩むことなく、激しい攻防が続いていた。


「修也、右サイド!」


裕樹が中盤から素早く指示を飛ばす。

修也はすぐに反応し、ディフェンスの裏を取る動きを見せる。

ボールが転がってきた瞬間、素早くトラップし、前を向く。


(ここで一気に仕掛ける!)


一人、二人と相手ディフェンダーをかわしながらゴール前へと迫る。

しかし、シュート体勢に入る前に相手DFが激しく寄せてきた。


「……っ!」


瞬間的に横へパスを送る。そこには裕樹が走り込んでいた。


「ナイス!」


裕樹がダイレクトでミドルシュートを放つ。相手GKの指を掠め、シュートが決まり、試合が終了した。



「お前たちよくやった!」


阿久津が労う。飛鳥もクーラーボックスを持ってくる。


「スポーツドリンクです!水分しっかり取ってくださいね!」


サッカー部の部員がスポーツドリンクを飲む。


「ぷはっ!生き返る!」

「今日、結構暑いなぁ」

「各自水分をしっかり取れよ。午後も練習試合があるからな」

「はい!」



修也がグラウンドを離れると家庭科室にやってきた。


「やっほ~夕香!遊びに来たぞ!」

「なんでいつもこっちに来るのよ」

夕香が刺繡していた手を止める。


「大好きな彼女のところに来たらダメ?」

「そういうこと言うのやめなさいよ……皆見てるから……」

「皆が見てなかったら良いの?」

「……お弁当あげないわよ」

「冗談だって!今日も夕香の愛情弁当頂戴!」


夏休みに入ってから修也と夕香が学校に来ていると夕香がお弁当を作ってくれるようになった。


「やっぱり夕香の玉子焼きは美味いよな~」

「そう?」

「夕香の愛情が入ってるからかな?」

「……もう作ってあげないわよ」

「なんで?褒めてるのに」

「自分で考えなさいよ」


修也と夕香が食べているところを家庭科部の女子たちが見つめる。


「ねぇ……あの二人尊いよね?」

「分かる!夕香ちゃんの態度冷たく見えるけどなんだかんだ言って六皇子君に優しいよね!」

「私も彼氏欲しいなぁ~」



「ごちそうさまでした!」

「もう来なくていいわよ」

「そう言っていつもお弁当作ってくれるくせに」

「……ぶっとばすわよ」

「怖……ところで夕香」

「何?」

「今度夏祭り一緒に行かない?」

「!」

「ダメか?」

「……いいよ」

「やった!楽しみにしてる!」


修也が家庭科室を去る。


(着物あったかな……)


夕香の表情が明るくなっていた。



夏祭り当日。修也は集合場所で待っていた。


(楽しみすぎて早く着きすぎた……)


時間はまだあるからジュースでも買おうと移動しようとする。


「お待たせ」


声がしたので振り返ると着物を着た夕香が立っていた。


「夕香!着物じゃん!」

「夏祭りだし……それに……」

夕香の頬が赤くなる。


「修也が喜ぶかな……って思って……」

「!!!」

修也の頬が赤くなる。


「うん……すごく可愛い……」

「あ、ありがとう……」


お互い恥ずかしくなる。


「と、とりあえずお腹空いただろ?花火まで時間あるから屋台行こう!」

「う、うん……」



「夕香は何食べたい?」

「修也が食べたいものでいいよ」

「じゃあ焼きそばでいい?」

「うん」


修也は焼きそばを食べ始める。


「美味っ!やっぱ屋台の焼きそばって美味いよな」

「うん」

「次は何食べたい?」

「焼きとうもろこしはどう?」

「いいね!」


それから修也と夕香は屋台のご飯を食べまくる。

夕香が射的を見つけたので挑戦するが、景品に当たらない。


「難しい……」

「どれが欲しいの?」

「あのお菓子……」

「わかった」


修也が銃を持ち、狙いを定める。


「バンッ!」


弾が当たり、お菓子が倒れる。


「よし!取れた!」

「すごい……」


修也が景品のお菓子を渡す。


「あ、ありがとう……」

「全然いいよ!夕香の欲しいもの取れてよかった!」

「……」

「ヤバい!もうすぐ花火の時間だ!行こう!」

「う、うん」



修也と夕香は花火が見える場所に移動する。


「あちゃ~!もう上がってる!」

「!」


空を見上げると花火がどんどん打ちあがる。


「綺麗だな」

「うん……」


修也と夕香は終わるまで静かに夜空に浮かび上がる花火を見上げていた。


「花火すごかったな」

「うん」

「それにしても夕香が着物で来るとは思わなかったな」

「そう?」

「本当に……可愛い……」


夕香が修也の顔を見ると赤くなっている。


「修也って本当に私のこと大好きだよね」

「あ、当たり前だろ!俺は夕香に一途なんだから!」

「……ありがとう」


夕香が修也の手を握る。


「!」

「私も修也が大好きだよ」

「あ、ありがとう……」


いつも修也が夕香を照れさせてたのに付き合うと逆になってしまった。

でも……すごく幸せだ。

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