第11話 俺とあの子で優勝祝い
「お前たちよくやった!」
阿久津が涙を流しながら選手たちを称える。
「今日は俺の奢りだ!お前たちに美味いものを食わせてやる!」
「よっしゃー!」
「先生!俺は焼肉がいいです!」
「ピザ!」
「寿司!」
「どれか一つにしろよ……」
修也はユニフォームから私服に着替えると荷物を持つ。
「修也は帰るのか?」
「俺は約束があるから」
「ふ~ん。折角あの阿久津先生が奢ってくれるのに」
「俺にとってはそれより大事な約束だから……じゃあな!」
修也が控室を出る。
「あれ?六皇子は?」
「彼女とデートで~す」
「さすがイケメンだな……」
「夕香!」
スタジアムを出ると夕香が待っていた。
「遅い」
「ごめんごめん!ミーティングが長引いて……」
「で?どこ行くの?」
「じ、じゃあカフェでも行くか」
「うん」
修也と夕香はカフェの方向へ歩き始める。
(ヤバい……緊張してる……)
修也は夕香と二人きりでいることにドキドキしていた。
夕香は何も喋らない修也の顔を見る。
(いつもしつこいほど話しかけてくるのに今日は静かね……)
「ねぇ……あんた疲れてるの?」
「えっ?」
「いつもうざいしつこさがないじゃない」
「うざいって思われてたのかよ……別に疲れてないよ。ただ……その……」
修也の顔が赤くなる。
「今日の夕香……可愛いなって……」
「……はぁ⁉」
「いや、いつも可愛いんだけど今日は一段と可愛いなって……」
「バカ……」
「何か言った?」
「何でもない!」
カフェに着くと修也はチーズケーキ、夕香は特大ジャンボパフェを注文した。
「美味しそう!」
夕香が特大ジャンボパフェの写真を撮る。
「夕香って結構食べるんだな」
「あんたが好きなもの頼んでいいって言ったじゃない」
「いやそうだけど……夕香がこれを注文するのは意外だったから」
「私はスイーツ好きだから。いただきます」
夕香がアイスを口に入れる。
「美味しい……」
その顔を見た修也が思わず顔をそらす。
(可愛いすぎる……)
「食べないの?」
「た、食べるよ」
修也はチーズケーキを口に入れるが、夕香の食べる姿から目を離せない。
「あんまりこっち見られると恥ずかしいんだけど……」
「ご、ごめん!」
あれから結局夕香から目を離せず、修也がチーズケーキの味を感じることができなかった。
「カフェのスイーツ美味しかったね」
「そ、そうだな……」
(夕香が可愛いすぎて味がしなかったとは言えない……)
「じゃあ私こっちだから。じゃあね」
修也は咄嗟に夕香の腕を掴んだ。
「何?」
「今日は……ありがとう。夕香が応援してくれたおかげで同点に追いつけて……PK戦まで持ち込むことができた」
「別に……あんたならいけるって思ったから」
「俺にとってあの言葉はすごく嬉しかったよ」
「そう……まぁあんたのためになったならよかった」
「俺……やっぱり夕香がいないとダメだ……」
「えっ?」
夕香が修也の顔を見ると修也は意を決したように口を開けた。
「俺……夕香のことが好きだ」