表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

第10話 俺が頑張れたのはあの子のおかげ

「よく追いついたな……!」

正道が息を切らしながら言うと、修也は額の汗を拭いながら頷いた。

「でも、ここからが本当の勝負……!」

阿久津が選手たちを集め、短い指示を出す。

「延長戦では相手も疲れが見えてくる。隙を突いて、一気に決めるぞ!」

「はい!」

ピッチへ戻る選手たち。スタジアムの空気は緊張感に包まれていた。

ホイッスルが鳴り、延長戦がスタートする。


延長戦前半が始まった。

両チームとも極限状態にあった。足が重くなり、パスの精度が落ちる。

しかし、勝利を掴むために、選手たちは必死に戦い続ける。

そんな中、臼井高校が猛攻を仕掛けてきた。


「くそっ、まずい!」


裕樹が必死に戻るが、藤堂が巧みなパスワークで光星学園の守備をかいくぐる。


「橘、頼んだ!」


藤堂からのスルーパスを受け、エースストライカーの橘がゴールへ向かう。


「ここで決める!」


橘が振り抜いたシュートは、鋭い軌道を描いてゴールへ飛んでいく。


「止めろ……!」


榊が懸命に飛びつく——


「バシッ!!」


なんとか弾いたものの、こぼれ球がゴール前に転がる。

そこへ椎名が猛然と詰めてきた。


「決めさせるか!」


修也が体を投げ出すように飛び込む。しかし、一歩届かず——


「バシュッ!!」


「ゴール……!!」


臼井高校がついに勝ち越し点を奪った。スタジアムが歓声に包まれる。


光星学園の選手たちは愕然とした表情を浮かべる。

修也も膝をつき、悔しそうに唇を噛み締める。


「あと……5分か……」


観客席では美紀が心配そうにピッチを見つめる。

「大丈夫かな?」

すると、夕香が立ち上がった。

「夕香?」

夕香は立ち上がると、拳を握りしめ、大きく息を吸い込んだ。


「修也!!」


彼女の声が、静まりかけたスタジアムに響き渡る。


「修也!! あんたならできるって信じてるから!」


観客席のざわめきの中でも、その叫びは確かに修也の耳に届いた。


(夕香……)


心臓が激しく鼓動する。疲労も、焦りも、一瞬で吹き飛んだ。

まるで全身に熱い炎が灯るような感覚。


「……よし!!」


修也は力強く立ち上がると、チームメイトに向かって叫んだ。


「まだ終わってない! もう一回、取り返すぞ!!」

「当たり前だ!!」


正道が笑い、裕樹も拳を突き上げる。


残り時間はわずか——だが、光星学園の逆襲が今、始まる。


試合再開のホイッスルが鳴ると、光星学園は一気に攻め込んだ。

修也がボールを受けると、鋭いドリブルで相手DFを翻弄する。


「行け、修也!!」


裕樹の声援が飛ぶ。修也はゴール前へと突進し、シュート体勢に入る。


「ここで決める!!」


椎名がブロックに入るが、修也は華麗なフェイントでかわす。


「勝負を決めるのは俺だ!!」


修也が渾身のシュートを放つ。


「バシュッ!!」


ボールは鋭い弾道でゴールへ——


「ゴーーール!!!」


光星学園、土壇場で同点に追いついた!


スタジアムが熱狂に包まれる。ベンチの選手たちも飛び上がって喜ぶ。


「よし……!!」


修也は拳を握り締め、夕香の方を見上げた。


(ありがとう、夕香……!)


ここでホイッスルが鳴り、試合はPK戦に突入することになった。


PK戦が始まった。PK戦のコイントスが行われ、光星学園が先攻となった。


「いくぞ、落ち着いて決める!」


先陣を切るのは正道。ゆっくりとボールに近づき、冷静に蹴り込む——


「ゴール!」


続く臼井高校も決め、1-1。


次に修也がボールをセットする。彼の目には迷いはない。


「決める……!」


助走をとり、右足を振り抜く——


「ズドンッ!!」


ボールはゴール左隅へ突き刺さった!


「よっしゃ!!」


光星学園がリードするが、臼井高校も負けじと決め、2-2。


その後も両者譲らず、4-4のまま最終キッカーへ。


光星学園のラストキッカーは裕樹。緊張した表情でボールをセットする。


「頼む、裕樹……!」


静寂の中、榊が蹴った——


「バシッ!!」


ゴール右上へ完璧なシュートが突き刺さる!!


「ゴーーール!!!」


臼井高校のラストキッカー橘が登場。


「ここを止めれば勝ちだ……!」


GK榊がゴール前で構える。橘が蹴る——


「ドンッ!!」


榊が反応する。


「バシィィ!!!」


榊の手がボールを弾いた!!


「止めたァ!!」


試合終了のホイッスル!

選手たちが抱き合い、歓喜の声をあげる


「やった……!」


修也は観客席を見上げ、夕香を見つけると笑顔で手を振った。

それに気づいた夕香が微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ