第70話【VSペロリスト20 ラストスパート】
空中から落ちていく間の無防備な時間をフロッガーがカバーするように、敵のバジュラに攻撃を仕掛けて注意を引いた。
(さすがにこれ以上は勝負する必要がないか)
熱した思考を切り替えて、アカリは撤退を選ぼうとした時だった。
空を裂くような鋭い音に気付いた時、フロッガーの視界は赤く染まっていた。
「やべ! ウィング戻ってきた!」
「あ、無理っす。戻りまーす」
リスポーンを完了したバジリコの狙撃がフロッガーの頭を捉えたのだ。
それに気づくとウォーカーは本隊へと撤収を始める。丁字路を曲がっていこうとした矢先、同様に後退を開始していたパラディンと直面することになった。
スキルの『突撃』での移動をしていたパラディンを間一髪、二段ジャンプで躱すことには成功した。だがパラディンは自暴自棄になっているのか、シールドの展開とハンマーの振り上げをものすごい速さで切り替え続けており、その攻撃の一部がニンジャの身体をかすめた。
かすめたと言っても生易しいものではない。パラディンのハンマーによるダメージは一〇〇もある。
これは体力が220しかないニンジャからしてみれば、体力の半分近くを削っていた。
バジリコはこれを逃さなかった。
すぐに照準器を覗き込むと弾丸エネルギーのフルチャージを待たずして引き金を引いた。
ホワイトウィングの最大の強みは、チャージ一〇〇パーセントの射撃を頭部にぶち込むと三〇〇ダメージを叩き出すことである。だが、じり貧の敵に対してわざわざヘッドショットやチャージを待つ時間など必要ない。
弾は二発消費した。
一発目はチャージが足りず、胴体に当たったため仕留めきれなかった。
二発目はチャージを待たず再度撃ち出した。残り三〇あるかどうかの撫でれば消えるようなHPをすぐさまゼロに変えてやった。
「あーっはっはっはっは! 形成逆転ってこういうのを言うんじゃないの? じゃあ、殴るね?」
もちなはパラディンの視点を反転させ、意気揚々にシールドを張りながら前進を開始する。
「こいつッ! ハッピーな顔して近づいて来るゥッ!」
「ULTだ! ULTあるよって顔してる!」。
アームズのシールドを展開させながら、パラディンのアルティメットスキルの射程範囲から逃れるため全力で後退。第二チェックポイントまで残り一五メートル。丁字の二画目中央まで差し掛かった頃、メイのブギーマンが前線復帰を完了した。
「戻ったわ!」
メイの復活に合わせてアカリは指示を伝える。
「絶対ウルト切って来るから、サイド取ってタンクにからんで。シールド割れるだけでもいいし、前に来たパルカを下がらせて」
「よくわかんないけどオーケイ!」
「死ぬな。ダメージをいれるだけでいいから!」
「完全に理解したわ!」
大丈夫かコイツ、という心配がアカリの脳裏をよぎっていた。
ここまでのゲームの流れを見て、実況解説陣は笑いながらも丁寧に解説をしていた。
『残り数メートルがなかなか届かない! もちなのパワースタンプで一気に勝負を決められるか!』
『シールドを解いた瞬間が勝負ですね。エイリアンズのホークアイはスタンバレッドが使えるようになってるんで、上手く当てられればいなせそうですね』
公式放送は各プレイヤーの視点を見ることもできるが、この大会はカメラ操作班が優秀だった。公式大会の設営にも携わったことのあるスタッフが何人かおり、中空から全体の動きを見せる画角によってジャックナイフタムラも状況を理解しやすかった。
序盤はペロリストの圧倒的リードで始まり、第二チェックポイントの攻略が行われた。しかしこの狭い路地ではそれぞれのチームがエリアの制圧と後退を繰り返し、いつの間にか序盤で稼いだ時間のリードは失われつつあった。
なぜここまで窮屈な戦いが続いたかと言えば、構成とプレイヤーの特徴だろうと解説の梅木は振り返っていた。
(パラディンが硬すぎて、エイリアンズもペロリストもウルトチャージがなかなか進まなかったな……。それにペロリストのDPSはバジリコさんのヘッショキルが主力で、アツシのボマーはシールドにダメージをたくさん入れていたけどHPにはあまり入っていない。エイリアンズもスナイパーに殺されないように派手なピークをしなかったから、結果的に被弾する機会が少なかったわけか)
そして被弾が少なくなれば、サポート陣が見方をヒールすることで得るウルトチャージの機会も少なくなる。そのため起点となる戦いが少なく、ヒーロー系シューターゲームでありながら、スキルを使わないプレイヤーの実力が試される試合運びとなったのだった。
スキルを使わない勝負であれば、エイリアンズは強かった。
元とは言え、プロであったリッカーとメイがいたから。ダメージを入れつつダメージを受けないという戦い方に差が生まれていた。
(め……めっちゃ語りてえぇー! でもここで早口になっても、説明をまとめるのが難しいし観てる人に伝わるかどうかもわからねぇー! 仕事で来てるんだし、無駄なことはできないな)
そして差し掛かった直線。リッカーの逃げ場はなくなっていた。
【壊れろ】というパラディンのULT発声が響き渡ると、大地に震動が伝播しながら、次の瞬間衝撃が地面の下から打ち上げられた




