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エイリアンズゲーミング  作者: 春木千明
1 エイリアンズ入団編
7/66

第7話【ヒーローとの邂逅】

 少し例え話をしよう。

 プロ野球選手はどうやって生まれるか。

 努力の内容の話ではない。どうやって見つかるのかの話だ。


 入団試験やスカウトが一般的だが、前提条件として試合に出ることで活躍するなど目に見える形でのアピールが必要となってくる。


 ゲームのクランも有名どころになるとある程度の人気や技量をもとに勧誘することがあるが、公募をしているところは数少ない。

 少なくとも、ウォーカーこと木原進の記憶してる範囲ではそういった話は聞かない。


 言うなれば青天の霹靂というものだろうか。

 火のないところに煙は立たないというが、順当な段取りや流れを組まずに、いきなり事象が起こることは基本的にあり得ない。

 雷雲のない青空を稲光が走ることは基本ないのだ。


「おォ? これがアカリの言ってた助っ人の人?」

「正確には候補ね。本人の確認も取ってないし」

 送られてきたチャットアプリのチーム通話に招待されると、そこには憧れの存在の声があった。


 その時、進に一筋の稲妻が走る。

 そういう面で見てみれば、ある意味順当な流れというべきだったのだろう。

 伝手というのは意外にも強力で、古くからある優秀な手段でもあった。


 ただ意外だったのはその相手が野良のランクで見つかった上に、それがあのトキシックプレイヤーだったことだった。


「アカリさん!? ちょっと聞いてないんですけど! なんでリッカーさんがこんなところに!」

「こんなところってなんか失礼だな。やったねリッカー。ファンボーイだよこの子」

「マジか。よろしくねー」


 いつも動画で見ている。人気者がすぐそこにいた。

 ウォーカーは人並みに礼儀を知る人間ではあったが、この急な邂逅には心の準備ができていなかった。

 クラスのアイドルオタクな女子がキャーキャーと黄色い声で姦しく叫んでいるのを遠目に見て、「そんなにテンションあがるかよ」とドライな目で見ていたが、こうして好きな人が身近に現れるとなると進も猿のようにキーキーと喚声を上げるしかなかった。

 我ながら驚く。


「リッカーさんて、あの元プロのリッカーさんですよね!」

「そうだョ~」

「バーテックスで一〇万ダメージ耐久配信とかやってた!」

「そうだョ~」

「エイリアンズのストリーマーやってる!」

「そうだョ~」

「大ファンです! 毎日動画見返してるし、過去の大会も見てます!」

「うわァ! うれしいね~!」


「とりあえず話進めていいですか?」とアカリが切りあげさせ、ウォーカーは正常な呼吸を取り戻した。息を整えるのを感じ取ると、アカリは続けて話をした。


「まあウォーカーくんを呼んだのは理由があってね。フリークダンスカップって知ってる?」

「知ってます。いつも見てます」

「一月後にあるんだけど、今度BLが大会のゲームになったんですよ」

「はぁ……」

「それにエイリアンズチームとして出てもらおうかなぁって思ったんですよ」

「はぁ!?」

 

 だははは、と笑うアカリは予想通りに驚いてくれたウォーカーのリアクションにご満悦だった。

 それもそうだろう。


 無名の人間が河川敷でバットの素振りをしていたらスカウトされたかのような出来事だ。

 軽い返事でやったと手放しで喜べる人間の方が少ないだろう。

 それくらい、道理でなさすぎる。


 それはもちろん憧れのプロと一緒にゲームができるというのは嬉しいが、一緒のチームとして入るとなるとまた話は別だ。嬉しいを通り越して疑惑の念がわいてくる。

 しかも全国的にライブ配信される大会が目標とはどういうことだとさらに謎が深まった。


 だからこそ、聞くべきだ。なぜ自分なのかと。


「な、なんで俺なんですか? エイリアンズって有名なチームで他に配信者もいるじゃないですか」

「ん? 命令通りに動ける人が欲しかったから」


 ウォーカーはアカリのことを嫌いになりそうだった。

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