第67話【VSペロリスト17 ラストスパート】
リスポーンが完了すると、アカリは移動速度強化のスキルを纏いながら、壁を飛び跳ねるようにして走った。いち早く本隊に合流して陣形を整えるためだ。
「ごめん。ちょっと油断して死んじゃった」
「そんなことないですよ。アカリさんが前出てくれたから、俺生きてましたから」
「アカリもウォーカーもナイスだよ! ゴーゴーネクスト! ファイト始まるよ~」
アカリが到着するなり、前線での戦闘が開始した。
ペロリスト側のリスポーンが完了し、再度進攻が始まった。
両チーム、先の戦いで利用していたs字カーブの道でタンク同士の当たり合いが始まるが、エイリアンズはゆっくりと後退するように戦っていた。いわゆる退き撃ちだ。
フロッガーの移動速度強化と回復を交互に切り替えながら、パラディンのハンマーの射程圏内から離れるように全員が動いていた。
「そろそろパラディンULTあるんじゃァない?」
リッカーがパラディンのアルティメットスキルを警戒していたためだ。
だが実際の所、まだウルトのチャージまで二割足らずというところだった。それでもエイリアンズが警戒していたのは、もちな自身が持つ特有の滅茶苦茶な戦い方にあった。いつ何をしでかしてくるかわからない。
根拠のない自信満々なもちなの立ち振る舞いが、エイリアンズに警戒心を植え付けていたのだった。
そんなエイリアンズ側の都合などつゆ知らず、ペロリスト達は進行を進めていく。
交戦時間が長くなれば長くなるほど、互いにウルトがチャージされていくのは明白だった。
ここでバジリコはホワイトウィングのウルトを発動させる。
【それで隠れているつもり?】
ホワイトウィングのウルト『サーマルアイ』は敵の体温をもとに、位置を特定させる能力だ。ゲーム用語でわかりやすく言うなら壁越しで見える状態を味方全員に付与させる。
起動時間は長くないが、その脅威は明白だった。ホワイトウィングのコンセプトである一撃必殺を体現できる凄腕のスナイパーに位置が全てバレているため、迂闊な顔出しをすることが出来ない。
またウォーカーとアカリが移動しようとすれば、全ての視線が二人を負うため奇襲を封じていた。
両者互いにゆっくりとした交戦を続けて、S字のカーブを護送車が渡り切った。第二チェックポイントまで五〇メートルを切ったころ。ホワイトウィングのウルトが切れたタイミングで、エイリアンズは攻撃を仕掛けることにした。
「メイ。サイドにTPしてちょっかいかけてみよう。バックラインに仕掛けて、バジュラのウルトを吐かせたい」
「おーけー」
「左のほう。俺とウォーカーがさっき使ったルートの方からな」
アカリのコールに合わせて、メイはブギーマンのスキル『シャドウブリンク』を発動させる。
移動距離はそう遠くないが、T字路の壁から壁へと移る分には問題ない。移動が完了すると、丁度エイリアンズの本隊と挟み込むような形になった。交戦するための機会を待つことにしたのだった。
(このままパラディンがリッカーの方に進んだら、後ろから撃てばいいだけ。こんなのちょーカンタンなんだけど♪ 万が一があっても無敵化で帰ってくれば楽勝!)
アカリの作戦の意図を瞬時に理解できたメイだったのだが、ここで一つの油断が生まれた。
移動先のクリアリングを怠ったことだった。
「うわ!? 誰コイツなんかいる!」
「えぇ!? ボマーがなんでこんなところにいんのよ!」
アツシとメイ。慎重さの欠けた者同士の邂逅であった。
「とりあえずトラップおいておくか」
ガチン! と鉄がぶつかり合う音がメイの足元でなった。
錆ついた、ギザギザとした歯の形をしたそれは、狩りなどにも使われる仕掛け罠のトラバサミだった。ボマーのスキル『スクラップトラップ』だ。
「ぎゃー! 捕まったー!! ……けど~? 残念でした~ゴスフェで帰りま~すぷふぅ!」
もともと奇襲が失敗したら無敵化スキルの『ゴーストフェイス』で本隊に返ってくる予定だったため、なんの問題もなかった。ゴーストフェイスの発動中は、いかなる攻撃からもダメージを受けることがないため、メイのようなベータリンクスの初心者でも簡単にできる戦法だった。
発動できれば、の話だ。
「えっ……? あれ……? なんかスキルが出ないんだけど……?」
問題なのはボマーのスキルの方だ。スクラップトラップは罠にかかった相手に一〇〇ダメージを与えるだけでなく、数秒だけ相手の移動を阻害する効果が存在する。
もちろんトラバサミの罠なのだから当たり前だと思うだろうが、この移動の阻害という効果は、移動するスキル自体も対象に含まれている。
「それでぇ、ここに爆弾一つを置いといてー……あれ二つだっけ? まあいいや両方置いといてサービスサービスぅ~」
「ちょ、ちょっとヤバイかも……? ね、ネコ……! アカリ~!」
「それじゃあ皆さんいきますよ! 着火まで三秒……はダメだスキル消えちゃうからやるなら今しかねえポチっとな!」
空気を割くような爆発音が聞こえると、メイのHPはゼロとなっていた。
「……俺たしかボマーのトラバサミにかかるとゴスフェできねぇって、この前言ったと思うんだけどなぁ……」
小さなため息と呆れたような声がチームボイスの中に流れた。




