第65話【VSペロリスト15 エゴイズム】
護送車はロンドン街の門を越えることはできている。あとはプレイヤー達が通り抜けられるかどうかだった。
先のファイトの反省を生かして、バジリコはまず門の上を丁寧にクリアリングすることから始めた。この場所は自分たちにとっても、敵にとっても、高台からの射撃ができる強いポジションだ。取られればこちらが不利に働くが、確保できたらバジリコが狙撃をしやすくなる。そこからキルが発生すれば優位を作ることもできるからだ。
「デジ、門上にボール入れてくれ」
その指示に従って、デジ男はスキルのアノマリーボールを攻撃状態で投げ込んだ。これによって、ダメージが発生すれば敵がいることが分かる。アノマリーボールは数秒経過すると消えてしまうのだが、それまでの間は壁などに当たるとピンボールのように跳ね返りながら移動を続ける。
角度も十分で投げ込まれたアノマリーボールがダメージを出すことは無かった。
「上いない!」
「わかった」
クリアリングが済むとバジリコはスキルのフックガンでエリアを確保した。
視界の先はS字の通路。右側には裏道ルートと、正面には高低差のある高台。高台にはフロッガーが一人で射撃をしていた。すぐさまスコープを覗き込んで、フルチャージした一撃で沈めてやろうとしたが、こちらの姿が見えるとフロッガーは足早に建物壁の向こう側に消えてしまった。
左にはリッカーのアームズを中心に本隊がいた。
リッカーのアームズはシールド展開する。バジリコの射線と、ペロリスト本隊の射線を同時に切れる斜めに浮かばせた絶妙な張り方だ。
「突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい」
「もちなお前どんだけ凸りたいねん。今日ずっとそればっかやん」
「なんかあのフロッガー見てるとスッッッッゴイイライラする。てかあのキャラキモくない? ヒーラーのクセに攻撃してくるしめっちゃ走って来るし環境キルできるし。壁登りも上手く使ってくる感じが、この前ランクで戦ったトキシックフロッガーを思い出させる……ッ!」
エイリアンズはS字の二角目で構えて待っていた。バジリコの待つ高台からの一方的な狙撃を嫌ったためだ。加えてアカリの好む戦い方が純粋な殴り合いよりも、綿密な作戦の上に成り立つセットアップからのファイトによるものだからだ。
一角目に入った瞬間、デジ男はパルカのウルトを発動した。
【恐れろ】
パルカのウルト『リアライズ』の発声が響き渡り、右手から白黒のレーザーが噴出される。
轟々と伸びる光の柱は、直線方向にいる敵の体力を吸収する効果がある。
これは通常攻撃と同じくシールドを貫通するため、分が悪いと判断したエイリアンズは即後退を始めた。
『パルカのウルト切ってきましたアツシ!』
『そうですね、でもエイリアンズすぐに下がっていきました。判断が早いですね。この早吐きはどちらかというとゾーニングのためですかね』
護送車を運びながら、ペロリストの後衛組は本隊の右後方に展開をした。敵からの射線を切りながらヒールを送るバジュラと、必殺の一撃を決めようとホワイトウィングが別射線を得るためだ。
(この裏道を抑えることが出来れば、今一番前のリッカーを撃てるかもな)
フックガンを使いながら移動するバジリコ。数秒後、パルカのウルトが切れてからエイリアンズの反撃が始まっていた。
まだペロリスト全体の意識が正面に向いている間だった。
壁をスルスルと走りながらやってくるフロッガーと、並走してくるニンジャがバジリコの目の前までやって来ていた。
すぐさま武器を構えるが、フロッガーは既に懐までもぐりこんでいた。
ブオーン! という音と共に下から突き上げるように発生する衝撃波。次の瞬間には体は空中に弾き飛ばされ見動きが自由にできなかった。
そこへフロッガーの音波攻撃、ニンジャの手裏剣が直撃し、体力はゼロになっていた。
『おぉおおおおおおお! 裏からのダイブが決まったーーーー!』
「うわクソ! タイミング……っ!」
そのままニンジャとフロッガーは次の獲物へと攻撃を仕掛ける。
急な味方のキルに、反応の遅れたソーマのバジュラもつむじ風に攫われるかのようにひき殺される。
「後ろ! ニンジャ来てるニンジャ!」
「えぇっ⁉ マジで!」
その声を聞いてアツシは後ろを振り返る。
すぐさま攻撃を仕掛けるが、この時すでにエイリアンズの包囲は完成していた。
正面でパルカのウルトを対処するリッカー達の本隊と、射線を取ろうとしてくるペロリストに対応をしようとするウォーカー達の奇襲隊。もとより側面を取れる『裏道』を確保されればエリアが狭まることを理解していたため、アカリはウォーカーと共に進行していた。
裏道から逆に侵入してくる奇襲隊と、本隊からの挟み撃ち。
なんとか意地を見せようとするデジ男はアツシと共に後方の対応に回る。
飛び跳ねながら進行してくるフロッガー。
偶然にもアツシの乱射するグレネードランチャーの一発が直撃し大ダメージを与えることに成功する。
デジオは逃げようとするフロッガーにいち早く飛びつき、残り少ないHPを削り取る。
次にニンジャへの対応に動こうとするが、ニンジャは本体に向かうように移動を開始すると、背中ががら空きになっているもちなに対して攻撃を仕掛けていた。
着実にダメージを重ねていく。タンクが倒れてしまえば、時間を稼ぐこともできないと踏んだデジ男はもちなに全力で回復を回すように動きを切り替えた。
「もちな! なんとか耐えろ!」
「無理無理無理無理! 死ぬ死ぬ死んじゃうーーーーーー!」
背中からの攻撃に対してシールドを向けた瞬間、エイリアンズ本隊のスナイパーから攻撃が飛んでくる。
スタンバレットが直撃し行動が不能となる。シールドがなくなったタンクが一枚とウルトを使い切ったサポート、エイムの脅威がないDPSが一か所に集まっていた。
「サポとDPS一枚づつ死んでるよ! 勝てる勝てる絶対勝てる!」
そこへ目掛けてネコプライドのホークアイはスキルのヒールグレネードを投げつける。
攻撃は直撃し、三人はダメージと共に回復阻害のデバフを受けた。
「Big nade! Big nade! Big nade!」
「おォ! やるじゃんネコ!」
「パラディンパラディンパラディン! めっちゃロー!」
雑に撃ちながら走って来るブギーマンの近距離ショットガンが全弾身体に叩き込まれる。反撃しようにも高い体力を持つアームズが、戦車のごとく味方の盾となりながら堂々と前進する。そして削られようものならすぐにホークアイが回復して、ダメージトレードは成立しない。
逃げ場はなく、ただ圧殺するように、エイリアンズの攻撃に囲まれる。
スキルを使って距離を取るが、その背後にはぴったりとニンジャが追撃をしていた。
ペロリストのチームキル。
試合終了まで、残り五分四七秒。




