第60話【VSペロリスト10 その一瞬を掴み取るために】
最近になって一話から一気読みしてくださる人もいるみたいで。マジにありがとうございます。
良かったら好きなfpsゲームでも教えてください
ここまでの試合運びを見て解説の梅木はチームの特色について振り返る。
『いやぁ本当に面白い戦いだ……』
と、言いますと? とすぐに実況のジャックナイフタムラは反応した。
ジャックナイフタムラは相槌を入れて会話のテンポを取ろうとする。だが梅木はその落ち着いた声のトーンとは裏腹にとても興奮をしていたようで、リズムなど気にせず話しを続ける。
『守るってのは攻撃以上に難しいんですよ。このゲームは基本的に自分の得意なことを押し付けるのが強いとされているから。その点、ペロリストのOTPはそこに忠実で、自分たちの好きなプレイイングを押し付けたい人達の集まりなんですよ』
『なるほど。相手に左右されず得意なキャラで戦うというのがペロリスト達の強みというわけですね』
『そうなんですよ。で、エイリアンズの強みっていうのはメインの戦い方とは別に、相手のやりたいことを予め潰すって感じのチームですね』
ゲームは選択肢の連続だ。
昔、アカリが夏海にそう言ったことがある。
付け加えるなら、この世の全ての出来事がそうだとも言っていた。
「あーわかる~。昔からあかりんはそういうタイプだよねー」
自分と相手は常に決まった資源の中で、使うか使わないか、攻めるか退くかを選択する。先に仕掛ければ先手、対応するように立ちまわれば後手、それの繰り返し。
ペロリスト達OTPはどのように戦いたいかの思想が明確だ。誰よりもそのキャラを使い込み、強さを理解し、苦手を理解している。そのためカウンターの用意もある。
「ちぇっ……ちょっとまたワンピック狙ってみるわ」
ペロリストの戦い方は至極シンプルだ。
討ち勝ち、切り開く。全員が同じ思考を持っている。
だからこそ全員が攻撃に参加し、チャンスを狙って行動し続ける攻めの選択肢のチーム。
エイリアンズはそれを否定する。
相手の得意分野で戦うな。
相手を気持ち良くさせるな。
選択するのは常に自分達だ。
アカリが口癖のように言っていたことを思い出して、梅木の言葉に夏海はくすりと笑った。
さて、ここでバジリコの考える『攻める選択肢』とはどのような意味を持つのか。
もちろん、本人のキルを取りたいという意識はあるだろう。
だがそれならまた門の前で鍔ぜり合うタンクのシールドの隙間を狙ってもいいだろう。
まず視覚的にフロッガーとブギーマンが地上にいたからだ。門の上は足場があり、そこに乗っていなかった。二人のスキルがあればこの高所を取ることは容易であることも理解している。だがそのために一つスキルを吐かせることが出来るのであれば、リソースや地上戦での攻防の均衡が崩れるかもしれない。
そう考えてフックガンを撃ちこみ、高台を取って後衛のホークアイを一枚落とせればラッキーという考えだった。
その選択が敗因を呼んだ。
アカリが選ばせた選択肢だからだ。
「……はぁ!? ニンジャ!?」
物陰の後ろに伏兵がいた。気づいた頃にはお手上げだ。
ニンジャが投げつける手裏剣の直撃を喰らい、次いで放たれる居合の剣劇がホワイトウィングの身体を切り裂いた。
(うそやろ!? だってブギーマンはウォーカーが使ってた! メイはガンマンしか使えないはずじゃ……)
急いでスコアボードを確認すると、ブギーマンの使用者はメイに変わっていた。
「くっそ、見てなかった! ブギーマンがメイに変わってる!」
『ハイドが決まったぁ! これは痛い!』
『行くのか? 行くのかこれ?』
今回の試合の際アカリはペロリスト側のことについて、キャラの構成や相性上の問題は危惧していなかった。最大の問題は一撃必殺のスナイパーの存在だ。ウルトやスキルを駆使してなんとか一キルを稼ぐこのゲームの中で異質な、エイム力による必殺の一撃とそれを実現させるプレイヤー自身の技術。
これが最大の脅威だった。
「ウィング倒した!」
「ナイスナイス!」
ウォーカーはすぐに次の攻撃を仕掛ける。次の標的はソーマのバジュラだった。
バジュラには逃げスキルがなく、遠距離で攻撃をし続けるサポートキャラだ。自衛スキルもなく、エイムとデバフ付与でなんとかしのぎ切る他ない。そのデメリットを理解しているソーマはここで倒し切る覚悟を決めていた。
これまでそういったシチュエーションは何度も目にしたことがある。
甘いな、と率直に思った。
本来ダイブ構成の戦い方はダイブスキルのあるタンクが敵陣営に降りかかり、それにDPSが参加しフォーカスを合わせて陣形を乱しキルを稼いでいく。
ヘイトを引き受けつつ継続火力を出すタンクと、瞬間火力のDPSのコンビネーションで行う戦い方だ。
今回リッカーのタンクは移動スキルのないアームズ、いわゆるベタ足タンクだ。
いきなり走って来てバックラインを潰しにかかることはできない。そうしようとすれば必ずもちなのタンクとぶつかり合うため、移動が遅れ、飛び込んできたニンジャはまるで飛んで火にいる虫のようになるだろう。フォーカスを合わせて撃てばただでは済まないし、相方のパルカが粘着すれば自陣に返る前にキルを取ることが出来るだろうと思ったからだ。
(フォーカスで殺すのが先か。それとも俺がやり切るのが先か……)
一瞬の逡巡はただの気まぐれのようなものだった。
味方に頼った考え方はしない。それがOTPの流儀だからだ。
「……いいぜ。一対一で俺とやり合おうってか!」
だが、エイリアンズは独りで戦わせない。
ニンジャのダイブに合わせるようにそれは、ロンドン市街の高い壁をスルスルと滑りながらやってきた。
「カバーするよウォーカー。フォーカス欲しいやつコールしろ」
「バジュラバジュラバジュラ!」
「オーケイ。じゃあ殺すか」
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