第57話【VSペロリスト7 その一瞬を掴み取るために】
ロンドン第一チェックポイントが攻略されると、護送車が出現し第二チェックポイントまでの移動ルートを指し示す光の線が道路に浮かび上がる。
護送車の上にもちなが鎮座し、巨大なシールドを構えながら味方を守るようにしながら護送車に運ばれていた。
一方、エイリアンズは全員が復帰を果たす前の数十秒の間。現在の状況確認をしているところだった。
「マジか。一分二〇? やばいねコレ」
「いやァオレもびっくり! ウルトもまだ半分くらいだよー」
「ごめん! ワンピック取られちゃった! 本当にごめん!」
「すいませんリッカーさん! カバーしきれなかったっす」
「あーしょうがないしょうがない。気にしないで次だよォ!」
互いに反省をしながら声をかけ合っている。それは次のプレーを改善するために必要な事だった。
毎日、毎回、完璧な状態で試合に臨めるわけではない。日によって注意力が落ちてしまっているポイントがあることは普通のことで、今日はどんなところにより一層注意が必要か、を振り返り次の勝負への改善をする。
スクリム二周目が終わった頃から、自主的に改善するべきだったことを口にするのがエイリアンズの習慣となっていた。
そう、なるだけの理由があった。
「……………………、」
一人だけ、ウェーブの負けに関する反省を口にしていない人物がいる。IGLのアカリだ。
(頼むからなんか喋ってくれ! トキシックぶちまけてる時より無言の状態の方が空気重いんですけどぉおおお!)
冷や汗をかきながらアカリの機嫌を気にかけていた。
スクリム時からアカリは負けたウェーブについての解説や修正についてをすぐに話す、もとい説教するかのように言っていたのが意外とメンタルに応えていた。そのためウォーカーは「言われる前に謝ろう」と考え始めるようになり、メイがそれに便乗してくるような形となった。
以来、先に反省を行うことでアカリからの強い説教を受けることは無くなった。
始めてから気づいたところだが、リッカーやネコプライドは自然とこれをやっていた。悪かったプレーに関してはさらっと反省点を述べるようにしていたので、おそらくアカリもそこから強く言及することは無かったのだと思う。
ただ、無言はダメだ。
この状態になった時のアカリは最高に不機嫌なケースが多い。
スクリムが始まる前の顔合わせランクの際、メイの突癖が目立っていた時のアカリがまさしくこれだ。言っても全然意味がないからどうするべきだろうか、と考えているときの空気感を出し始めると、その後何試合もずっと静かになってることが多かった。
ゲーム内の指示役がだんまりはマズイ。
脳みそが活動しなくなるのは連携の崩壊を意味するからだ。
「……はぁああああ…………?」
ようやく喋ったかと思うと、大きなため息に似た声を吐き出し始めた。
「分断できたからファイト勝ったのはわかるけどよぉ……無理やり突っ込んできてスタンバレッド当てられてフォーカスされてそのまま死んだらどうすんだよ完璧トロールじゃねえか。選択肢にないわけじゃないけどそれは一〇〇回やって何回成功するんだよリスクリターンに見合わねえっての。サポートどももそうだよ、アノマリーボールは回復用に自分たちの周りに設置して、確実にダメージ取りに行くべきだしバジュラはポークキャラなのにめちゃくちゃインファイトしやがって……」
ぐちぐちぶちぶちと、まるで呼吸をしていないかのように高速で言葉をまくし立てていく。
アカリにはいくつかの状態が存在することを、ウォーカーはここ二週間を通して理解した。
まずは『通常モード』。平坦な状態で心理的に余裕があり、言葉のチョイスがかなり優しい上に褒めてくれることも多い。プレイイングが特に問題ないときは常にこの状態だ。
次に『イライラモード』。トキシックなときがこれだ。自分、敵味方構わず悪いプレイングが増えていくとこの状態に入る。修正をかけようとし始めてるのが根底にあるのだと思っている。
次に『無言モード』。どうしようもない、お手上げだ、という時は明らかにしゃべらなくなる。まるで駄々をこねる子供のようだが、この状態になると逆にしゃべらせようとエイリアンズメンバーが積極的にコールをし始めたり意見を聞こうとし始めるようになる。
「怒髪天ってやつだぜ。圧倒的にぶっ潰してやる」
そして今は無言モードのさらに上。アカリのパフォーマンスが最高潮に高まる『ブチギレモード』に突入した。




