第55話【VSペロリスト5 その一瞬を掴み取るために】
バジリコはもともと『PieceOfWar』というゲームの動画投稿者兼配信者だ。POWは三〇対三〇で行われ、史実に基づいた武器や飛行機、戦車などを用いて戦う大規模戦争ゲームだ。
そのゲームは『勝敗』という概念よりも、『いかに楽しむか』というのが大切なゲームだった。
もとより見知らぬ人間達が三〇人も集まれば、連携もへったくれもあったものではない。一人一人の戦場での影響力が少ない分、戦犯という考え方も生まれづらく、勝敗にこだわる考え方自体存在しなかった。
白兵戦、中距離射程からの銃撃戦、戦車を使った砲撃や敵を轢き殺すこと、戦闘機を使った対地爆撃やドッグファイトなど。
勝利のためにというよりは戦場の名の無き兵士として、好き勝手に戦うことを楽しむ人が多かった。
バジリコもその内の一人で、今日はどんな風に遊ぼうかと考え、好き勝手に楽しむ一人の少年だ。
この頃すでに日本国内では動画を配信するという行為が広まり始めたころで、パソコンを持っていれば動画投稿サイトでゲームの攻略や情報を得ることも容易になっていた。彼はゲームのおもしろ動画などを見漁って、自分でも実践して楽しんでいた。
そんなある日、彼は一つの動画と出会ってしまった。
スナイパーライフルによるモンタージュ動画。俗に言う、キル集だ。
軽快な音楽に合わせて、スコープを覗き込み敵の脳天を貫く。
連続で五人を粉砕していくものもあれば、遠く五〇〇メートル離れた敵を撃ち抜くものもあった。
高速で走る車両を運転する敵を撃ち抜くものや、ヘリコプターの操縦席をガラスごと撃ち抜く場面。
中には一直線に並んだ敵の頭を、まとめて一発の弾丸でマルチキルするものもあった。
なんだこれは?
なんてカッコイイんだ!
こんな景色は自分の目で見たことがない!
遠く離れた敵が、スコープを覗いた次の瞬間画面に大きく映ったと思えば、また次の瞬間には倒れて地に伏している。
フルオートの銃を目いっぱい横に振って、当たればいいなと思いながら撃つのとは全く違う。
たった一撃。たったの一撃だ。
必ず殺す、とその思いを一発の弾丸に込めて撃ち出す技術は、この世で最も美しい光景だと思えた。
まるで魂を掴み取られたかの如く、その動画を食らいつくように、何度も何度も再生した。
その日から彼は、全ての戦場でスナイパーライフルを握りしめ参加した。
発射レートが遅いスナイパーライフルは、中距離から近距離の敵に対して不利が多い。一発外したらその瞬間、敵のサブマシンガンやアサルトライフルによっていとも簡単に殺されてしまう。集団戦なんて論外だ。一発の弾丸で複数の敵の銃弾を捌くことなんてできやしないから、抵抗もできずにリンチされることだって何度もあった。
それでも彼がスナイパーライフルを手放すことは決してなかった。
思うようにできず楽しくないと思う瞬間が何度もあった。それでもまた戦場に参加した。
その日感じた、胸の高鳴りを自分自身の手で再現するために。
何度でも、その一瞬と出会うがために。
彼はまたスコープを覗き込んだ。




