第46話【侵略開始12】
ここまでついてきてくださりありがとうございます。
スクラム編は次くらいで終わります。
もう少々お付き合いください
動きだしたリッカーはまっすぐにこちらへと走ってきた。なるべく被弾を減らすためにシールドを前方に張って向かってくる。
キルトレードを行った結果、互いにタンク一枚、DPS一枚、サポート一枚という拮抗状態になっていた。
(クソッ……! ドッゴさんを落とされたのが痛すぎる……! ウルトが溜まってるのを予想して、先に倒しに来やがったか!)
この先の流れとしては欠けたHP分を犬飼ドッゴの操るホークアイのウルトで回復、及びダメージカットと火力付与で最後まで取り切る予定だった。だが、それはニンジャの強襲によって破綻してしまう。
後方からはリッカーが、占領地の近くには敵DPSとサポートがいる。
なんの支援もなしに一対一でリッカーには勝てない。全員でポイントから離れてリッカーを倒しに行けば勝てるだろうが、その瞬間敵チームの誰かが占領権を奪取し数秒のうち一〇〇%まで達してゲームセット。
不利な条件を積み上げられた。
「すいません! 死んじゃったっす!」
「ドンマイドンマイ! ビーフさん! シラカバ! このままポイント近くの奴ら全部倒そう!」
「はぁい!」
「うす!」
だが彼は揺るがない。
挫折して、一番大好きだったゲームをアンインストールまでした。
それともう一度向き合い、解説動画を作ったりしている。
敵として二度と会いたくないトラウマとも対峙している。
その全てはたった一つの理由に帰結する。
勝ちたい。
仲間とともにまた始めたゲームは、昔の負けず嫌いだったころの自分を思い出させた。
立場や状況が違うとはいえ、あの時勝てなかった相手に、勝ちたい。
ただそれだけだった。
「フロッガーフロッガーフロッガー!」
当初の目的の通り、先に敵戦力を削れるだけ削って、リッカーを倒す。
そのためにはまずこのサポートを落として回復手段を断つべきだ。
敵のフロッガーはかなり好戦的なプレイヤーで、射撃を重視しており前衛に参加してくることが多かった。それが強みであるが、同時に弱点になる。
味方の危機を感じカバーで飛んでくるニンジャだったが、フロッガーの持つパッシブスキル『バーティカル』に追いつくことはできなかった。
フロッガーの『バーティカル』はベータリンクスにおける全キャラクター中でトップの機動力を持つ。ニンジャも同じ壁登り系統のパッシブを有するキャラだが、フロッガーは壁を登っているのではなく滑っているのだ。
直線上での機動力だけのニンジャは、フロッガー達の影を踏むことさえできなかった。
逃げるアカリのフロッガーと、それを追うビーフのフロッガー。
三人からの包囲を受けたアカリは、壁から壁へと飛び移る瞬間を狙われ、コマンダーの追いエイムに屈することになる。
「やったやったぁ! フロッガーやったぁ!」
「ナイス! 次次!」
「マッコイ。リッカーきてる」
「いやぁああああ来ないでぇえええ!」
そして最強の怪物がやってきた。
マッコイは先までの戦闘で傷ついたHPが回復するまでの数秒間、耐えるためにダメージカットのスキル『オーバーアームズ』を発動させる。
二対三の不利状況だといううのに、リッカーの足取りに躊躇いは感じられなかった。
タンク同士の正面ファイトが始まる。
リッカーのカバーをするように、ニンジャはコマンダーに勝負を仕掛ける。
弾数が多く、パッシブスキル『スプリント』を持つコマンダーはエリアを取るのが得意なキャラだ。持ち前の足の速さを生かして移動を繰り返し、強いポジションから圧力をかけていく。
また『応急フィールド』という設置型の回復スキルを有し、フィールド内の自身含む味方を回復する。
突出した能力はないが、バランスの良い性能で一対一にも対応可能なキャラだ。
初撃はニンジャの手裏剣がヒットする。
ヘッドに入れられたダメージで次の攻撃を受けられない状況。迷わずシラカバは自身の足元に応急フィールドを展開させて回復をしながら射撃を開始する。
ニンジャはパッシブスキル『二段ジャンプ』を使いながら、ぴょんぴょんと跳ね回りながらコマンダーのエイムを乱す。リキャストが完了すると、移動兼攻撃スキル『影法師』で剣を構え刺突をするが、寸でのところで躱すことに成功する。
今がチャンスと射撃をするが、防御スキル『矢切』で防がれてしまう。
ニンジャは攻撃を躱し続けてダメージを与えること、コマンダーはスキルの回転を維持し続けることが互いの勝利条件となっていた。




