第31話【アンチ】
オルガはため息をついた。
「……ずっとポークし続ければ問題ないんよ」
今日はスクリム三回目の金曜日。フリークダンスとエイリアンズの試合中だ。
あともう一周あるということもあり、各チームは一部を除いて様々なキャラや構成を試し始めていた。
「うぉおおリッカーさんヤベェ! 圧がハンパねぇ!」
「……カイ。こっちは防衛側だから攻めに行く必要がないんよ」
エイリアンズの構成はラッシュ構成。集団で固まって移動し攻撃を仕掛け、各個撃破していくのが基本的な戦術だ。その構成の強みは接敵時の瞬間火力。サポートのヒールを上回るダメージを叩き込んで、着実にキルを重ねていくことができる。
対して、フリークダンスの構成は遠距離からダメージを蓄積させ続けるポーク構成。要するに、近づかれる前に殺すという戦い方だ。
明らかに相性が悪い。
だが対応策が無いわけではない。
「……なんで向こうはキャラ変えないんだ?」
ベータリンクスというゲームは試合中に何度もキャラの変更を行うことができる。
キャラ相性が悪い場合は、相手に対して相性の良いキャラを後出しで入れることで有利を作ることだってできる。
そういったジャンケン要素もこのゲームが好まれている理由の一つだ。
「さぁ? 向こうのピックプールが狭いんじゃない?」
そう答えるのはフリークダンスの古株、ゼンだった。
「向こうってプロ枠リッカーだけでしょ? 他のメンバーもBLがメインってわけじゃないし」
「……? 別に、スキルとキャラ相性を覚えればいいだけじゃないすか」
「そんな簡単にできるかっ! キャラだけで二〇人はいるんだぞ。プロとかならまだしも、一般人にそこまで求めんなって」
「……俺はできますけど?」
「お前みたいなFPS星人と一緒にするなって」
オルガは小さくため息をつく。
エイリアンズの全員のキルを完了させると、くるくるとマウスホイールを回した。FPSゲームにおいて武器の切り替えをここで行うことが多いが、オルカのキャラはそういった機能はない。ただの遊びだ。
(……新しく入った新人のことは知らんけど、リッカーさんがそれを言わないとは思えないんよ)
リッカーはベータリンクスに改修される前のゲーム、『アルファリンクス』で世界三位を獲得したことのあるプレイヤーということをオルガは理解していた。フリークダンスカップに出場するメンバーが決まった際にゼンから聞かされ、自分でもその経歴を調べていた。
だからこそ、この意味のない時間を理解できずにいたのだ。
「……ねぇ。アカリがいてこのままなはずがないと思うんけどどう思う?」
ゼンはその質問に答えられなかった。というよりも、その質問が意味するところをくみ取ることができなかった。それは、アカリという人間がエイリアンズの裏方を主に請け負っている存在としてしか知らないからだ。
「さぁ? でも、アカリは絶対諦めないと思うよ」
その質問に答えたのは一人だけだった。
エイリアンズ所属兼フリークダンス・バーテックス部門のプロゲーマー『クレハ』は自信をもってそう言った。




