第26話【地雷系元プロゲーマー7】
あぁ、また怒られる。
指示は出ているはずなのに、その通りに体を動かせない。
今この瞬間は高台を取らなきゃ。
リッカーが敵を削った。ワンピック取った。
今ならもう少し前に出られるかも。
前線が動かなくなった。今のうちに射線広げて撃てるかも。
あ、二枚いた。まずい……あぁ、死んだ……。
せっかくのチャンスなのに攻撃に参加できなかった。
今一緒に撃ててればこのウェーブ勝てたのかな……。
思うように上手くいかない。わかってるのに実行できない。
メイはだんだんと自信をなくしていた。
昔もそうだった。
バーテックスのプロになった時もそうだった。
配信をしながらゲームをやっていると、上手いプレイヤーと一緒に戦う機会があった。
そこから火力を出せる人がいるということでいろんな人から誘われることがあった。
その延長戦で、プロの試合に出る機会がやってきた。
最初はプロの試合とはどんなものかと思ったが、一人で二人倒すことができれば大体なんとかなった。
チームメンバーは火力が高く、一対一の勝負なら負けない人達の集まりだった。
だが、それも途中までだった。
G一スクリムに入った頃から、雰囲気が変わっていった。
目の前の敵に集中していると、周囲の敵から攻撃を受けて死ぬようになった。
たとえ二人敵を倒せても、順位が伸びないとバトルロワイヤル系のゲームではポイントが伸びなかった。
だから全部倒せるだけの力を手に入れようと必死にやっていたが、ある時から味方との連携も取れなくなっていた。
その頃から、メンバーやチームを変更することが多くなった。
最初から一緒だったメンバーとは三つチームを移動した頃には解散することになった。
一人になっていろいろなチームを渡ってみたが、IGLや味方と上手く連携ができなくなっていた。
反省会もたくさん行った。
それでも改善しきることはできなかった。
もっと強くなれば……。
一人で全てを倒せるくらい、もっと強くなれば……。
みんなを守れるくらい強くなれば……。
そう思って自分なりに努力をしてきたつもりなのに、現実はそうは上手くいかない。
「……あのさ、メイ」
……あぁ、また怒られる…………。
「ーーーあの、アカリさん。メイを少し後ろで戦わせるってのはどうですかね?」
ウォーカーはアカリの言葉を遮るようにそう言った。
「……。て言うと?」
「斜線を広げるのは俺がメインでやって、それ以外はサポートとセットで移動するとか。そうすればメイも正面の敵に集中出来るかなぁ〜なんて……思ったんですけど、どう、ですかね……?」
少しアカリは考えると、「それは『有り』だなぁ……」と呟いた。
「試しにやってみますか。ダメだったらまた考えようか」
「じゃあメイはアカリさんとネコさんと同じくらいのラインで戦うのがいいですかね?」
「それがいいかな。そうすれば俺達のカバーもすぐできるからダイブしてきた奴も返しやすいだろうからね」
話は淡々と進んで行き、無事に着地することができた。
位置を変えるだけでそこまで影響が変わるだろうか、とメイは半信半疑だった。
確かにこのキャラは中距離において火力の高いキャラだということは理解していた。
ならばこそ、火力役である自分が前に出なくてはいけないじゃないかと思っている。
だが、ウォーカーは自信をもって言うのだ。
「崩すのは俺に任せて、メイは正面に見えた敵に集中して撃ってみて」
少し意外だった。
新入りであるウォーカーの分も自分が先輩として頑張らなければと意気込んでいたからだ。
助けてあげなきゃいけないと思っていた存在に、逆に守られる形になったのだ。
そして実践が始まる。
チームの前衛をリッカーとウォーカー、時折アカリが参加して敵の陣形を破壊していく。
そのチャンスがやってくるまでメイは敵と距離を取って継続的に射撃を当てていく。
少し後ろに立って、俯瞰して見るとチームの動きが見えるようなっていた。
リッカーがチームの道を決めて、ウォーカーが射線を増やしたり敵に揺さぶりをかけていく。ネコプライドは淡々と味方にヒールを送り続けて、アカリはラッシュの号令と撤退を決めてスキルを回していく。
メイは正面に見える敵へ射撃を続けてダメージを稼ぐ。ダイブしてきた敵をサポートと共に退ける。
(そっか、私はもっと……)
ずっと前だけを見ていた。
道を切り開くために、敵をずっと追いかけていた。
誰よりも強くなれば、結果もついてくると信じた。
必ず倒して、前進する。
誰よりも早く、敵を倒す。
それだけが自分のできることだと決めて、ひたすら前を見ていた。
そうすることで、プロとして結果を残し続けてきた。
だけど今は違う。
自分をサポートしてくれる仲間や、自分より前で敵を引き付けてくれる仲間や、一緒に攻撃を合わせてくれる仲間がいる。
(敵のことだけじゃなくて、もっと、みんなのことを見て戦うべきだったんだ……)




