第22話【地雷系元プロゲーマー3】
その後も何度か繰り返していくと、どういうわけか勝率が悪くなっていった。
敵が上手いわけではない。どうにもチームの動きが悪くなっていったのだ。
理由はウォーカーの視点から見るとより不明だった。
(ラッシュ自体は成功してるけど、敵のキルが発生しない……。ダメージが足りていないのか?)
だが自分自身のスタッツを確認してみても足りていないことは無いと思う。
敵との差も多く広がっていないが、違いがあればこちらのデス数が増えていること。
デスしている回数が多いということは、攻撃や回復などそれぞれの持ち場を回すことができない時間が増えるため、必然と不利な状況になっていくことを示している。
それでもメンバーそれぞれが相手と同じスタッツを出せていることは、地力の高さがあるのだと感じている。
ただ、一人を除いての話である。
数分後、試合は負けた。
完敗だったと言わざるを得ない。
正直、リッカーほどの元プロを入れてここまで負けるとは思ってもいなかった。
それくらい規格外にリッカーは強い。
だが、このゲームはそれぞれのロールが責任を全うしなければならないというのを改めて実感させられた。
アカリは特に荒ぶる様子もなく淡々と言う。
「ま。初回だしこんなもんでしょ。じゃあまた明日、二一時くらいから回し始めようか」
「オーケイ~」「りょーかい」「はーい」とメンバーは答えていった。ウォーカーもそれとなく返事をしていた。
(あれ、今日は反省会とかないんだ。初回だからか……?)
先日の反省会に対するアカリの熱意を思い出して、ウォーカーは身震いをする。
二時間拘束された。
嬉々として話しながら試合の良かった点、悪かった点、敵味方のそれぞれの最善手を予想外だった点などを長々と語るアカリの目は、モニターの向こうで見えないとしてもキラキラ輝いていたに違いないというテンションで話し続けていた。
さすがに反省会だけで二時間は予想していなかったから、翌日寝坊しかけた。
(でも今回の方が話したいこといっぱいあるだろうに。あんなに負けてて何もしないなんて……)
ウォーカーの勝手な予想だが、トキシックなアカリのことだから「この程度の試合も勝てないとか恥ずかしいと思わないの? 言う通りに動くこともできないならなんて指示すればいいの?」などいうかもしれないと覚悟を決めていたのだが、現実はそうならなかった。
全員がバズコードのグループチャンネルから離れた後。
軽い一六ビットの着信音と共に個人通話がウォーカーのもとにかかってきた。
相手はメイだった。
どうしたのだろうとウォーカーは、マウスを操作して着信を受け付ける。
「ウォーカーくん? さっきは本当ゴメン!」
開口一番に謝罪が飛んできた。
少し遅れてなんのことだろうと思い返すと、アカリと話していた時のことかと思い当たる。
「あーいや大丈夫ですよ! 全然! 大丈夫です!」
「いやいやいや本当にゴメン! さっきはさ、アカリが本気で切れたんじゃないかと思って怖くて、つい言っちゃったんだけど。試合中もずっと、私なんであんなことしちゃったんだろうって気にしちゃて。絶対謝らなきゃって思ってて……」
「気にしてないですよ大丈夫です。それに自分でももうちょっと優しくてもいいかなぁって言ってましたし?」
「……本当? 気にしてない?」
「大丈夫ですって」
「よかった~」と安堵したような声を上げるメイ。
ウォーカーはちゃんと謝れるタイプの人は良い人だと思っていた。
自分の非を認められるのは立派な証拠だと信じている。
「試合中ずっと、謝らなきゃって思ってて。初めて会ったばかりの人によくなかったなぁって気にしてたの」
(それでパフォーマンス悪かったのか?)
他に思う所がないわけでもないが、ウォーカーは無駄口をたたくことをしなかった。
「それにしても本当、アカリってばひどくない? さっきまでの試合もあっち行けとかここ立てとか言って。私はロボットじゃないっての!」
言わんとしていることは理解していた。
このゲームはタクティカルシューティング系やバトルロワイヤル系と違い、接敵回数が多い。
面と向かって撃ち合い続ける時間が長く、状況が常に変化し続ける。
ましてやキルスピードの遅いこともあり、わずかなチャンスを見逃さないために報告が飛び交う。
アカリが吠えるようにずっと声を出し続けるのも当然のことだった。
(でもアカリさんにしては今日、コール少なかったような……)
それでもゲームに慣れていない人には酷なのかもしれない。
「それにしてもウォーカーくん……あ、ウォーカーって呼んでいい? 私のこともメイって呼んでいいし敬語じゃなくていいからさ」
「どうぞどうぞ」
「ほら敬語やめよう。仲良くしよう? チームなんだし」
「って言ってもメイさんの方が年上ですし」
「敬語の方が気になるの」
「そうっすか……いや、そうか……」
そいうことなら、とフランクに接することにした。
相手が人気配信者の一人であることもあって、敬遠していたというか場違いな感じをしていた。
「ウォーカーはランクダイヤなんだっけ? すごいな~私なんてゴールドだよ」
「いやいや、リッカーさんと比べたらまだまだですし」
「遠慮しないの。十分すごいって」
おそらく謙遜しないでよと言おうとしたのである。
「同じダイヤなのにアカリと違ってウォーカーは優しいね。あいつももっと人の心を理解しろっての」
「まぁ、苦手な人はいるタイプではあるかな」
「私は超苦手」
「そんな気はしてた」
ウォーカーとメイは話し込んでいた。




