第18話【入団試験11】
(くそっ……なんで届かねえ……っ!)
カースドの『ドメイン』はウォーカー達にダメージを十分に与えられていなかった。
(あのフロッガー。あいつのせいだ……!)
フロッガーは敵のウルトが展開されるとすぐに、回復ではなく移動バフを発動させていた。
『ドメイン』発動中は移動速度が低下することもあり、フロッガーの移動速度を上げるスキルは、そもそも殴り合いを成立させないという方法で味方を支援していた。
リキャスト時間で追いつかれ、『ドメイン』の範囲に掠ることもあったが、範囲ヒール効果を持つフロッガーの回復は全員を即座に回復して、再度距離を取っていく。
「はーいバックオーライ後衛は大丈夫。撃ちながら下がろう距離取って殺してこう」
とはいえ味方のタンクと離れすぎれば、リッカーは孤立して死んでしまう。
だからカースドの『ドメイン』が発動終了したタイミングですぐに勝負を仕掛ける。
リズムは再度移動支援に切り替わる。今度は前に進むためだ。
「次は前ね。どんどん歩いて撃って行こう~」
全員の集中砲火を浴びるカースドは『ミステリーサークル』を使ってフィールドの制限をかけるが、壁を走るフロッガーの足は止められない。
下がっていた陣形を再び敵タンクの元まで送り届けると、今度は自分たちのタンクの元へと駆けつけた。
コマンダーの自動照準をもろに食らっていたリッカーのもとに、回復力が届いた。
「あっぶねェ~! 死ぬかと思った~!」
「ナーイス耐え! 撃たれないように一旦顔出さないでね~」
【Don't stop beat】
フロッガーの『ラジカルハート』がフロア一帯に伝播する。
緑の波動を受け取った味方に、追加HPが付与され、攻撃開始の合図となる。
リッカーのウルトは消えてしまったが、敵のDPSはキャラ変更をして復帰したばかりのガンマンとコマンダー。サポートがバジュラ一枚。
後ろではウォーカーとトリガーが射撃でタンクを削って、進軍を続けている。
「タンクデッド!」
最後の一撃をウォーカーは決めるとすぐさま前衛の攻撃に参加する。
「コマンダーコマンダーコマンダー!」
リッカーのフォーカスコールに合わせてコマンダーの射撃をしていく。
地面には自動回復のスキルを展開しているようだったが、DPSとタンク二枚の攻撃をしのぐことはできない。
なんとか一枚持っていこうとするも、リッカーのシールドがそれを許さない。
そして全軍がなだれ込むようにして最終地点まで護送車が運ばれていく。
【全ては輪廻の中に還る】
バジュラが黄金色に輝き、ウルトを展開させる。
少し遅れたが展開しないよりはマシだと、自身を無敵化させて護送車に張り付くことで時間稼ぎを行ったものだった。
実際、その稼がれた時間でタンク、DPS、もう一枚のサポートが戻ってきた。
バジュラはウルトが切れると集中砲火をくらいそのまま死んでしまったが、そのチャンスは味方へと引き継がれる。
だからこそ、もう一度撃ち合いが必要になると予想していたウォーカーは最後まで切り札を残していた。
【俺の鉛玉にキスをしな】
リボルバーに六発の弾丸が装填され、シリンダーが重たく回転をする。
ガンマンの瞳に炎のエフェクトが灯され、必ず仕留めるという決意が込められていた。
(ここで決める……!)
四度の空気が破裂する音が響く。
それはリスポーンしたばかりの敵の額に吸い込まれるように走っていくと、それらの命を貫いた。
遅れて四つのキルログが流れる。
残すタンクをアカリが『バーンアウト』で護送車から引き離し、リッカーがシールドで味方を守り、ウォーカーが追撃を加えていく。
あと少し。
ほんの一五メートル。
ゴールは目の前だ。
リスポーンまで時間があるとはいえ、最終目標はリスポーン地点と五メートルも離れていない。
復活したらまたすぐに敵と戦えるだけの距離だ。
ここまでくると、敵が際限なく沸いて出てくるようにさえ感じる。
残り時間は一分と一〇数秒。
時間にはまだ余裕がある。
だが、それは敵も同じこと。
時間をかければ逆転のチャンスを与えてしまうことにもなる。
「押せ押せ押せ押せ! 相手にチャンスを渡すな。殺せ殺せ!」
「ホークアイホークアイホークアイ! いや、コマンダーコマンダーコマンダー!」
アカリとリッカーのコールにも熱が入る。
敵も焦り、必死になって食らいつく。
なんとか命をつなごうと、一人一人が護送車に張り付くが数秒も持たない。
ウォーカーはただ的を射抜くだけだった。
一人ずつ、よく見て射抜くだけだった。
全員でかかって来たらここまで対処は楽ではなかっただろう。
人数、スキル管理、回復量、火力、その全てが有利な状態でゲームが進んでいく。
だから、ただウォーカーは攻撃に集中するだけだ。
一つずつ流れてくる『頭』達を、ベルトコンベアでの作業のように淡々と潰していく。
数歩ずつ、着実に前へと進んでいき、敵の抵抗も虚しく、護送車は最終地点まで届いた。
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