第17話【入団試験10】
五対四。人数有利が生まれた。
このタイミングでウルトの展開が始まる。
【やっちゃいなさい。ジン!】
味方トリガーの持つ小銃から紫色に光る弾丸が放たれる。
弾丸は地面に着くと、そこを起点に魔法陣が展開されて青の巨漢が顕現した。
タンクキャラと同等かそれ以上に恰幅の良い青い男は、自分の背後から二つの魔法陣を出し、そこから無数の魔力弾が放たれる。
トリガーのウルト『魔人召喚』は青の巨漢『ジン』を召喚し、一定時間もしくはジン本体の耐久値がゼロになるまで機銃掃射をし続ける。
五対四の人数差が、六対四に変わった。
正面ではなく、敵の背後を陣取るように設置したそれは、タンクのシールドを潜り抜けて背中から射撃をし続ける。
それに対応しようと背後を見れば、正面からの圧力がなだれ込んでくる。
ここで敵のサポートであるホークアイはスキルの『スタンバレッド』をジンに命中させる。
命中させた対象を約五秒間の行動停止にするスキルだ。
これによって生まれた隙に、敵陣営のサポートとDPSは一斉にジンをフォーカスして耐久値をゼロに持っていった。
このゲームにおいてウルトは拮抗した状況をひっくり返す最強の切り札だ。
だが通常のスキルもこのゲームでは軽視することのできない、強力な能力を持つ。
だから本来は、相手のスキルがない状態を作り出して、均衡を壊すという手順を踏むことがセオリーだ。
せっかくのウルトもこうして簡単に返されてしまう。
ウォーカーはそれを見ていた。
「スタンバレッドない、ヒールグレネードない!」
先まで攻めあぐねていた原因の一つだ。
敵サポートのホークアイが持つ二つの強力なスキル『スタンバレッド』と『ヒールグレネード』。
スタンバレッドは先の説明の通り、一人分の役割を五秒間潰すことができる。
もう一つのヒールグレネードは炸裂した範囲の味方にはHP九〇の回復を与え、相手には三秒間の回復阻害と九〇ダメージを与える。
使いようによってはDPSよりも攻撃的なスキルだ。
その代わり、どちらもリキャスト時間が一〇秒以上とこのゲームの中では長めに設定されている。
トリガーのウルトが、敵のスキルを吐かせたのだ。
それをウォーカーは見ていた。
攻撃のチャンスを見逃さなかった。
「リッカーウルト!」
「オーケーイ!」
【すべて薙ぎ払う】
リッカーのアームズがウルト『プラズマバーナー』の展開をする。
背中に背負っていた巨大な武装を両手で握ると、身の丈の三倍近くの光の柱が立ち上る。
バリバリと空気の破裂する音をまといながら、光の柱が薙ぎ振るわれる。
【全ては虚無の中に消える】
次いでカースドがウルトを発動させる。自身を起点としたスリップダメージとHP吸収を行う絶対領域が生み出された。
紫色の呪力を孕んだ空間の歪みが、押し寄せてくる。
ここで試されるのはタンク同士の押し合いではなく、両陣営のサポートとDPSの戦い方だった。
広範囲ダメージとHP吸収を持つウルトは個よりも軍勢の方にこそ、その威力を発揮する。
カースドはタンク同士の当たり合いに乗ることは無く、その後ろに控えるバックライン達に狙いを定めて歩いていく。
リッカーも同じく。タンク同士の殴り合いにならないと判断すると、近くにいたDPSやサポートを殺しにかかる。
プラズマバーナーで焼かれた敵は身を翻して、サポートへ助けを求めようと下がる。
だが、一歩遅い。
合流したところをまとめて焼きながら、今度はヒールに全力を注ぐ敵サポートのホークアイへ視線を移して先にHPをこそぎ取る。
「ホークアイデッド!」
味方の退くタイミングに合わせるのだと少し遅い。陣形が崩れるのを事前に察知して動くくらいではないと、移動スキルのないサポートはすぐに殺されてしまうのだ。
【お前に託そう】
ホークアイは死ぬ間際、自身のウルトを発動させる。
味方に即時HP回復、数秒間の火力強化とダメージカット能力を与える『ブーストバレッド』。
DPSを死なせまいと放った、サポートの一矢がコマンダーに届く。
【――――逃げられると思うな】
コマンダーの持つアサルトライフルの照準器に自動照準のターゲットマーカーが浮かびあがる。
必中の弾丸がリッカーに襲いかかる。




