第13話【入団試験6】
護送車は第二チェックポイントの半ばまでやってきていた。
「ウルト向こうは何残ってるかな」
アカリは状況の確認をしようとする。
「タンクはウルト使ってたよォ」
「あとコマンダーも使ってましたね」
「オーケイ。こっちはフロッガーウルト一枚で返せたからかなりデカいな」
ウォーカーはTabキーを押して全体のスコアを確認する。
ウルトは時間の経過かダメージ、ヒールによって蓄積されていくため、スコアボードからある程度予想をすることができるのだ。
(俺のウルトはたまってるし、敵のガンマンも俺と同じくらいのダメージを出してるから多分ウルトたまってるだろ)
ついでに確認すると、味方のもう一方のヒールはおそらくもうひと踏ん張りという所だろう。
敵のサポートもウルトを撃った後のアカリと同じくらいのヒール量があったため、そろそろ頃合いだと踏んでいた。
「ウォーカーくんウルトは?」
「行けます」
「わかったー」と返事をするアカリ。そのまま何か話そうとしていた様子だったが、
「次来るよー。準備してェ~」
リスポーン地点狩りをしようとしていたリッカーが下がってきて、第二幕が始まった。
五人そろってのフォーカスを食らえば、いくらエリア有利が取れているとはいえ退かざるを得なかった。
リッカーのHPが回復するころには敵もまた展開を終えて、高台とS字に曲がる道路の端と端で両チームは射撃を開始した。
「あと五秒くらいでバリアできるからそれに合わせていこう」
「リッカー次どうする? 回り道して高台側から落とすか直進か」
「前にサポートが固まってるみたいだし、ウルトがあるからそれに合わせて前を押したいかなァ」
「オーケイ。一応敵のサポートもウルトあるから、深追いしないくらいがいいかもね」
ウルトは均衡を崩すキッカケ作りをしてくれるが、それは両者同じことだ。
現にウルトを二つ消費した敵の攻撃に、こちらはウルト一つでカウンターが成功したのだ。
慢心した行動をすると窘められる。それがこのゲームの特徴だ。
「じゃあ行くよォ」
【すべて薙ぎ払う】
合図に合わせて、リッカーの使用キャラ『アームズ』のウルトが発動する。
背中に背負っていた重火器を取り出すとアームズは両の手で深く握り込み構えた。
銃口から青白い光をスパークさせながら、身の丈の三倍近いバーナーが柱のように噴出する。
高出力のプラズマ砲だ。
断続的に空気が炸裂する音が鳴り響かせて、リッカーは敵陣へ詰めていった。
敵と自分の間にバリアを張って、被弾をなるべく抑えながら直進するタンクの動きに合わせて、再度アカリは『エンジェルビート』を移動速度強化に変えてチームを誘導する。
触れればじりじりとHPを削っていくそれは、接触後もスリップダメージが加算されていくため、短時間の被弾も許されない。
リッカーのプラズマ砲から逃れるように、敵は左右に移動をして、なるべく被弾を抑えようと動くが、速度のバフが乗っているリッカーの手から免れることは難しい。
だから、敵も同じくウルトを返す。
【全ては輪廻の中に還る】
敵サポート『バジュラ』のウルト『イノセンス』が発動する。
修行僧のような風体の男が手印を結ぶと、金色の光が周囲を照らし出す。
一定時間、範囲内の味方のHPを急速回復させ、瀕死の味方もHPが一〇を下回らない無敵効果を付与する絶対領域が展開された。
リッカーのウルトに対する完璧な返しだ。
両者のウルトの展開時間は一〇秒もなく終了する。
それぞれ一人をピック出来れば十分な価値を持っていたが、いなし合いが上手くかみ合いあと一歩が取れない。 だが、それで終わる両チームではなかった。
「あ、これ敵ガンマンウルト来るかも」
アカリの予想は少し遅れて的中することになる。
【俺の鉛弾にキスをしな】
『ガンマン』のウルト『シックスセンス』は六秒の間、自身の銃弾の威力を三倍にする。
基礎火力七〇の三倍で二一〇、ヘッドショットで二八〇。
ほとんどのDPSとサポートの㏋は二五〇であり、胴撃ちで二発、ヘッドショットなら一発で落とすことができる。
圧倒的な火力を誇るウルトだ。
敵ガンマンもそれなりにこのゲームをやっているプレイヤーだった。
ウルトの重要性も理解をしており、チームメンバーの考えと、相手チームの手札を数えていた。
ウルトは先吐きが得であるのはこのゲームの常識だった。
サポートはそれに対してカウンターを撃つようにウルトを使う。
それを理解していた。
敵のタンクかDPSがウルトを使えば、自分たちのサポートが後出しをする。
それに合わせてこちらもウルトを発動させようと考えた。
絶対的な火力の一撃であろうと、フォーカスをされたら一瞬で消えてしまう。
それは先のコマンダーが実践してみせたように、このゲームは一人で動かせない。
サポートが無敵時間を作るこの瞬間で、全ての敵を駆逐しようと待っていた。




