第11話【入団試験4】
このゲームには恒常スキルの他に『アルティメット』という上位のスキルが存在する。
こちらは時間が経過するか、敵にダメージを与える事か、味方をヒールすることでチャージされていく。
第一ポイントから現在の状況まで、優位にウルトをチャージできていたのは、防衛側だった。
「そろそろウルトが来るかなァ」
「タンクはもうそろそろじゃないかな。一応こっちもあと少しで溜まるよ」
「オーケイ。ウォーカーはウルト何パーセント?」
「六〇です」
「じゃあ守り気味に行くか」
最初に仕掛けてきたのは敵側のタンクだ。
敵タンクのキャラは『カースド』。ごつごつとした装甲に幾本もの管が髪のように付き、悪霊のような、落ち武者のような見た目をしているキャラだ。
スキルはタンク特有の指定方向へ障壁を作り出す『シールド』、指定した位置に侵入した敵にスロー効果とスリップダメージを与える『ミステリーサークル』、遠距離攻撃と近距離攻撃のモード切替をする『シフトチェンジ』。
遠距離モードでは呪力で形成した弾丸を掌から機関銃のように飛ばし、近距離モードでは呪力を両腕に宿らせて殴りかかる。
「タンクウルト来るよォ」
【全ては虚無の中に消える】
ウルトの発動時ボイスが響き渡り、カースドの攻撃が始まった。
カースドのウルトは『ドメイン』。
近接モードに切り替え、半径一〇メートルに及ぶ自身を起点とした『ミステリーサークル』の展開。
さらに追加効果として、『ドメイン』の範囲内にいるスリップダメージを受けた相手HPの吸収も行う。
そのため、護送車が敵の間近まで接近したこのタイミングがベストだった。
カースドはドメインを展開させたまま、リッカー達本隊の方に寄って行き、リッカーとその後ろにいるサポートとDPSに狙いを定めた。
その後続からくる敵のDPS達はウォーカーを落とそうと走ってくる。
「ウォーカーくん下がるよ。来た道戻って合流しに行こう」
「はい!」
今度はこちらが退く番となった。
アカリの『エンジェルビート』が移動速度と回復バフを交互に高速で入れ替えながら自チームの本隊へと、下がりながら後退していく。
【逃げられると思うな】
さらに敵のDPSのウルト発声が聞こえた。
敵のDPS『コマンダー』のウルトは一定時間、自身に自動照準の効果をもたらし、視界内に映る敵に通常攻撃が必中するというものだ。
二つのウルトが展開されて、リッカー達は大きくダメージをくらっていた。
このままでは押し切られ、前線が瓦解しながらチームキルを取られてしまう。
味方のサポートは全員が死なないようにと懸命にヒールを回して行くが、カバーしきることができない。
相手へ与えるダメージが急に増える事で、敵サポートもここぞとばかりにヒールする手を止めて、攻撃に参加していた。
五人で攻撃してくる部隊に対して、二人で三人を守らなければいけない。
均衡を保ちやすいこのゲームにおいて、ウルトは均衡を壊すことのできる切り札だ。
そんなこと、ウォーカーは十分に理解している。
だから、やるならこのタイミングだと確信していた。
【Don’t Stop Beat!】
アカリのフロッガーがウルトを展開させる。




