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第六十一話 聖地巡礼

「うふふ」


 あずさの機嫌が良い。

 俺とあずさは、激豚君に乗り国道1号線上空を低空で進んでいる。

 向うは、沼津!!

 あの、ラブライ○の聖地だ。

 そう、俺とあずさはあのアニメのファンなのだ。


 芦ノ湖を右手に見て山を越えると、後は直進するのみ。

 時速三百キロの低速で飛んでも、十分程度で付いてしまう。


「みろーー! あずさーー!! うみだーーー!!!」


 沼津の海が見えてきた。


「ほほう、とう氏、沼津ですぞ」


「ふむふむ、アズサ氏、どこから行きますかな」


「まずは、ちかちゃんの実家ですな」


「では、その後はあの学校へ行きますぞ」


 こうして、お宅モード全開で、無人の沼津の聖地巡礼を堪能した。

 その晩は淡島で一泊して翌朝、激豚君を沼津港に沈めて駿府へ歩きだした。

 俺は、キノコのようなカツラをかぶり、黄色いジャージを着ている。

 まるで、ジャッキーチャンの友達のサモハンケンポーが、ブルースリューのコスプレをしている様な感じだ。


「あずさ、その制服はどこで用意したんだ」


 ミニスカートのセーラー服を着ている。


「ふふふ、中学の制服よ。もうじき中学生だから、お古をもらっておいたの、うちって貧乏でしょ」


 そう言って、くるっと回った。

 いつも通り、水色のスライムが付いた、白い物が丸見えになった。


「スカート、短いんじゃ無いか」


「文句を言ってはいけません。頂き物ですから」


 そういって、腕につかまってきた。

 車が走らないから、気持ちよく1号線の真ん中を歩いた。

 やがて富士川の橋が見えてくる。

 すると橋の手前に人影がある。


「あずさ人がいるぞ」


 俺は感動した。


「うん!」


 あずさの返事も弾んでいる。




「とまれーーーー!!!!」


 どうやら、駿府の清水連合の検問のようだ。

 迷彩服を着た銃で武装した数人の男達が、橋の手前で道をふさいでいる。


「あやしい奴め、お前達はどこから来た」


「私達はあやしくありません。小田原から命からがら避難してきたのです」


 あずさが、検問の兵士を上目遣いで見つめると、顔が赤くなり鼻の下がのびた。

 すげーー。美少女パワーすげーー。


「昨日も小田原から、逃げてきた奴らがいた」


「ああ、木田軍が攻めてきたと言っていた」


 兵士達が話し合っている。


「まず、荷物を見せてみろ」


 俺もあずさも手ぶらではおかしいだろうと、カバンを一つ持っている。


「な、何だこれは? 黒いジャージだけだ」


「こっちは、メイド服だけだ」


「あんた達、本当に命からがらだったんだな」


 良い感じで勘違いしてくれた。


「嬢ちゃん、この男にさらわれたのじゃ無いだろうな」


 髭面の兵士が俺に銃を突きつけてきた。


「いいえ、とうさんです」


「そう言えと言われたのではないか。今なら正直に言って良いぞ。助けてやる」


「違います。心から愛する優しいとうさんです」


 俺にギュッとしがみついた。

 そして、ウルウルした目で兵士全員を見回した。

 全員の体が揺れている。

 まじかよー。魅惑の魔法でも使えるみたいだ。


「ふむ、本当みたいだな。おい、お前達、この子をこのまま行かせては可哀想だカンパしろ」


 髭面の兵士がヘルメットを脱いで、自分のポケットから一万円札を数枚入れた。

 それに習って他の兵士達がお金を入れる。

 この世界でお金なんか価値ないだろうに、何をしているんだ。

 髭面の兵士が、お金をそろえると、俺の胸の前にさしだした。


「こ、これは……?」


「これは、今川通貨だ!!」


 見ると、一万円札の中央に、今川義虎と朱印が押されている。


「今川通貨?」


「ここいら、一帯で通用する通貨だ。額面の十分の一の価値がある」


 なるほど、一万円が千円になるのか。

 見た感じ十枚以上あるが、これで一万数千円ということか。


「あの……」


「持って行け、お前にではない。その嬢ちゃんにあげるのだ。その姿にはその価値があった」


 それを聞くとあずさは、とても言い表せないような、とろけるような笑顔でくるりと回った。

 当然白い物が丸出しだ。サービスのつもりなのか。

 兵士達の顔が上下に動いている。


 ふむ、あずさの顔と、白い物の両方を一生懸命見ているようだ。

 正直すぎるだろー。

 でも残念、それ水着ですからーーー!!


「……」


 俺があきれて無言で兵士の顔を見つめていると、しばらくして兵士達がそれに気付いた。


「おおっ、しっ、失礼。今日は橋を渡った先で泊まった方がいいな。その先は清水まで何も無い。通って良いぞ、気をつけてな」


「何から何まで、ありがとうございます」


 俺とあずさは深々と頭を下げた。

 こんな所の兵士の対応がこれなら、駿府の治安も良さそうだ。

 俺たちは、頭を上げると橋に向った。


「ちょっとまてーい!!」


 俺たちが行こうとすると、髭面の兵士が大声をだした。

 やべーー、俺たちの正体がばれたかな。


「な、なんでしょうか」


 俺たちは恐る恐る振り返った。


「喉が渇いているだろう。水を持って行け」


 富士の湧水と書いてあるペットボトルを渡してくれた。

 何ていい人達だ。

 まあ、俺一人なら通しても、もらえなかっただろうけど。

 美少女パワーすげーー。


 俺は、すかさずペットボトルの蓋を開けてゴクゴク喉をならして水を飲んだ。


「すごーーい、おいしい」


 あずさが嬉しそうな顔をした。

 髭面の兵士の顔まであずさと同じような表情になった。

 兵士からもらった富士の湧水は最高にうまかった。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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