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第四百二十七話 台無し

 駅にまた列車が到着したようだ。

 大勢の人が降りてきた。

 やはり、焼きそばの屋台は素通りのようだ。

 遅れて体の大きな男達が降りてきた。

 どうやら、一般客に気を使って、最後に降りてきたようだ。


「いやあ、思ったより小さな駅ですねぇ」


 祭り会場までの屋台は、白山駅の南口からイベント会場まで続いている。

 駅のロータリーは北口にあり、南口はいわば裏口のようなものだ。

 少し出入りしやすく改造したが、ひなびている。

 だが、駅の南口の前は駐車場が広場のように広がっていて、屋台と客席のセッティングがしやすく、都合が良かったのだ。


「豊久、ここは、新潟駅の一個手前のローカル駅だ。九州の駅もこんなもんだろう」


「まあ、そうですね」


 どうやら、九州島津家の家久、豊久親子のようだ。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! おおとのーー!!!!」


 うわあ、安東常久だ。暑苦しい。


「ち、違いますよ。私は八兵衛、焼きそば屋のおやじです」


「おお、そうでございましたな。八兵衛殿」


「気を付けてくださいね」


 俺は鋭い目つきでにらんでおいた。


「うおっ!!」


 ふふふ、体の大きな九州の猛将が少しひるんだ。


「ところで、八兵衛さんが焼きそば屋なのですか? すぐ先にはステーキの屋台があります。今降りたお客さんは全員素通りですが」


 だよなあ、屋台の焼きそばなど、目もくれないよなあ。

 そんな俺を豊久が心配してくれている。


「ええ、人気がありません。自信作なんですが、なかなか食べてもらえません」


「は、は、八兵衛さん!! お替わり、お替わりをくださーーい!!」


 信さんと、土方さん、総さんが空の皿を頭の上に上げている。


「し、信さん、おなかは大丈夫ですか? 三杯目ですよ?」


「か、かまいません。もう、今日は焼きそばだけを死ぬ程食べまくります」


「あの、こちらのお方は?」


 常久が、質問してきた。


「こちらは、北海道の土方さんと沖田さんです」


 信さんは面識があるので、紹介は省いておいた。


「おお、お噂は聞いております。我々は、九州の安東常久と、島津家久、豊久にございます」


「出来ましたよ」


 俺が信さん達に焼きそばを渡すと、三人の九州人が焼きそばをのぞき込んでいる。


「こ、これは……!?」


 九州の三人の鼻の穴がヒクヒク動いている。


「仕方がないですねえ」


 そんな大男三人を見て、信さんと土方さんと総さんが、自分たちの焼きそばを笑顔で渡した。


「ぐおおぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!!」


 九州の三人が、一口食べるとうなり声を上げた。


「さ、さすがは大殿ですなあ。うまい!!!!」


「常久ーー!! 俺は八兵衛だーー!!」


「ははーーっ!! 大殿、申し訳ありません!!!!」


「駄目だ! こりゃあ!!」


「うわあーはっはっはっーーーーー!!!!」


 おっさんが全員大声で笑っている。

 俺は、新たに三人分を焼いて、信さん達に焼きたてを渡した。

 六人のおっさんが、うまそうに焼きそばを食べていると後ろから声がした。


「おやじーー!! 俺達にもやきそばだーーーー!!!!」


 この声は……!?

 三人の少年が屋台の横に立っている。

 帽子で、顔が見え無いようにかくしている。


「どうぞ!!」


 俺は三人の少年に、出来たての焼きそばを渡した。


「ぐわああーーー!!!! このくそおやじーー!!!!」


 一人の少年が、怒鳴っている。


「どうかしましたか??」


「うめーーんだよ!! ばかやろーー!! 屋台の焼きそばは、まずくなくちゃあいけねーんだ!! こんなにうまくてどうするんだよーー!!!!」


「おい、あずさ!! 全国の屋台の焼きそば屋さんに謝りなさい」


「うふふっ」

「ぎゃはははははは」


 ヒマリとイルナとあずさが大声で笑っている。


「でも、本当に美味しい」


 ヒマリが上品に言った。

 でも、その後モリモリ口に運んで、あずさと同じように食べはじめた。

 それは、美少女の食べ方じゃないよ。

 おっさんの食べ方だからね。まあいいか。


「よお、兄弟!!」

「八兵衛さん!!」


 ゲンと真田が来た。


「言われたように、そこの学校の校庭に置いてきたぜ!!」


「ああ、ありがとう」


 駐車場の横に学校が有り、その校庭に木田家のロボ各種と、真田の重装歩兵を並べてもらったのだ。

 名古屋の学校で失敗したので、今回の試乗は無しで見るだけにした。


「食べて行くか?」


「いや、いらねえ。これだけうまそうな屋台が並んでいるんだ。俺は、焼きそばなんかくわねえ」


「そ、そうか。だよなあ。真田もいらねえのか」


「そうですね」


「ゲンおじさまあーーーー!!!! だめです。これは食べないといけません!! 食べないと後悔をする焼きそばです!!」


 ヒマリが大声でゲンを止めてくれた。


「そ、そうか!? じゃあ兄弟、真田と二人分頼む」


 ふふふ、ゲンは、あずさとヒマリには甘いからなあ。


「待ってください。俺達もお願いします」


 見ると柳川と、ダーとポンがいる。


「急に忙しくなったなあ。はいよ!! どうぞ!!」


 この焼きそばは、素早さが命なので出来上がりも早い、屋台にはもってこいなのだ。


「しかしよう、焼きそばなんてよう、こんなもんどこで食ってもたいしてかわらんだろう…………」


 ゲンが、つまらなそうに無表情で言った。


「うめーーーーーーっ!!!!!!」


 五人が大声を出した。


「すごいですねえ。新潟の新名物、八兵衛黄金焼きそばが爆誕ですねえ」


 柳川が上品に食べながら言った。

 これだから、インテリヤローは嫌なんだよなー。

 その後、列車が来る度に体のでかい人相の悪い奴が、俺の屋台の前に集ってくる。

 おかげで、一般客が近づけない。

 商売あがったりだよ。


「皆さん、これを一切れずつ食べてみてください」


 ステーキ屋台のおやじ、スケさんがカットステーキを持ってやって来た。


「なんですか、これは……?」


 総さんが最初に関心をしめし、一口食べた。


「うわあーー、うまい」


「どれどれ!?」


 皆が一つずつ口に運んだ。


「うめーーっ!!!!」


 全員から「うめーっ」の声があがった。


「スケさん、なんですかそれは……????」


「ええ、ステーキにシャインマスカット入りのソースをかけてみたのですが。すごく美味しくなったんですよ。おそらくこのソースをかければ、たいていのものがおいしくなりますねえ」


「ぐはっ!!!! スケさーーん!!!! それをいっちゃあ台無しだよーーーー!!!!」


「ぎゃはははははーーーーーーー!!!!」


 全員が大声で笑った。

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