第三百六十二話 轟く悲鳴
二人は横に並び同じ速さで進んで来ます。
ミズ隊長の手には長い剣、ロングソードでしょうか。ただ普通の長さでは無く異常に長い。佐々木小次郎の物干し竿のような感じでしょうか。まあ、佐々木小次郎の物干し竿は見た事がありませんけどね。
マボリ隊長は織田家からの押収品でしょうか、あれは三間槍です。
一人で持っているだけでも、その腕力が飛び抜けている事が分かります。
「貴様は、余程運がねえらしいな。個の強さでは俺達は五番隊の隊長仲旧とたいして変わらねえが、二人で戦ったら、その比じゃねえんだよ。ひゃーはっはっーー!!」
武器が、軽いので余裕があるのか、ミズ隊長が言いました。
「ひぃーーひっひっひっひっ」
後ろにいる兵士達の中からも笑いが起きています。
きっと二人の隊長の実力を知っているのでしょう。
既に勝ちを確信し、人を蔑むような嫌な笑いです。
「おりゃああーーー!!!!」
マボリ隊長が自分の間合いに入ったからか、槍を頭上から振り降ろしました。
こころなしか、槍が少し湾曲して見えます。
風を切る音がここまで聞こえます。おっ、恐ろしい腕力です。
ですが、そんな大ぶり当たるわけがありません。
とはいえ、受ける事も無理でしょうね。
アンナメーダーマンは右前に弧を描くように進みかわしました。
「きえぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!!」
ミズ隊長が待ってましたとばかりに、そこに斬撃を加えます。
アンナメーダーマンは加速して、そのまま弧を描き前に進むと、大きく後ろへ飛びました。
ミズ隊長の攻撃は、空振りに終わりました……いいえ、そう見えましたがアンナメーダーマンのジャージが少し切れているようです。
アンナメーダーマンはジャージをつまんで、それを確認しました。
「あぶねえ、あぶねえ。なるほどなあ、てめー達は、1+1が3にも4にもなるタイプって事か。こりゃあピンチじゃねえか」
でました。アンナメーダーマンのピンチ発言。
こういうことを言う人は、たいてい何か奥の手を持っていてピンチじゃないですよね。
「ひゃぁぁーーはっはっはっはっーーーーーー!!!!」
二人の隊長が、うれしそうに笑います。
「いまさら、分かったのか。手加減はしめえだ。次でぶち殺す! しねぇぇーー!!!!」
どうやら、この二人も本気では無かったみたいです。
ちょっと待ってください。それじゃあ本当にピンチじゃ無いですかーー!!
マボリ隊長が目にも止まらぬ速さで、前に出ると槍をアンナメーダーマンの肩の辺りをめがけて横に払います。
鋭い槍の穂先がギラリと輝きます。
そして、ミズ隊長が体をかがめて槍の下に入り、槍の反対から剣で払います。
横移動する剣がキラリと輝き、その光が剣先にむかっていどうします。
「ふふふ、地獄で自慢するんだな。マボリとミズの連係攻撃を一度はかわした事があるってなあ!」
もう、こうなっては、よける選択肢は後ろに下がるの一択です。
でも、それは、相手に取ってはとどめの一撃を出すチャンスに変わるだけです。
恐らく後ろに下がった瞬間、腕力で強引に止めて、突いてくるに違いありません。
しかも槍と剣の二段攻撃、恐らく上下にわかれて攻撃してくるはずです。
危うしアンナメーダーマン!!
フォハァァーーンン
ザリュッ
二つの音が同時に聞こえました。
「!!!!????…………」
あたりに、静寂が訪れました。
でも、戦いを見つめる全員が驚いた顔をしています。
目の前には思いがけない光景が広がっているからです。
空気をまとい、恐ろしい勢いで横移動する槍が、アンナメーダーマンに片手で下から握られてピタリと止まっています。
握られた時にカンという金属音が出たのでしょうけど、その音は槍のまわりにまとっている空気に邪魔をされてこもってしまったのでしょう。槍から出た音はそんな風に聞こえました。
ピタリと止まった槍とは裏腹に、まるで台風のような風がまわりに吹きすさびます。
もう一つの音は、剣を踏みつけた音です。
アンナメーダーマンは、これも片足でミズ隊長の剣を上から踏みつけピタリと止めています。
二人の隊長の顔は険しく、武器を握る手には血管が浮き上がり、全力で武器を動かそうとしているのが、ここから見ている私にも分かります。
「ほいっ!!」
気の抜けた声をアンナメーダーマンが出しました。
下からつかんでいる槍を上に持ち上げました。
軽く持ち上げたように見えますが、恐らく想像を絶する力だと思います。
「うわあああああああぁぁーーーーーーーー!!!!!!」
マボリ隊長が空高く浮かび上がりました。
「!!」
それを見てミズ隊長は驚きの表情になり、剣から手を離します。
「ほいっ!!」
剣から手を離し、硬直しているミズ隊長に近づくと、その胸を優しく足の甲を平らにして当てて、その足を上に持ちあげました
「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」
ミズ隊長はマボリ隊長より少し低く上がっています。
おかげで、落ちるタイミングが同じになりました。
皆の視線が上空に持ち上がりました。
「きゃあああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
後ろから、大きな女性の悲鳴が上がりました。
私は、上を見ていた視線を、その声の方に向けました。
いったい何があったというのでしょうか!?
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