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第三百十五話 薩摩の戦い

 新政府軍は爺さんのいる町の方へ引き上げて行く。

 この町で線を引き停戦する気なのだろう。


「歳久様、見ての通りです」


 俺は、三人の前に戻りながら歳久殿に視線を合わせて言った。


「うむ、あの町を攻めれば新政府軍だけではなくアンナメーダーマンまで敵にまわすと言う事だな」


「はい。しかし、ずいぶんと豊前の奥まで攻め込まれていますね」


「ふむ、豊前の半分を支配していた城井家が新政府軍に降伏をしたのでこうなりもうした」


「そ、そうですか」


「降伏した城井家は悲惨なものです。一族の男は殺され、それ以外の男は織田家との前線へ。女は全て広島です。いったいどんな生活をしていることやら。そして子供達は放置です」


「ふむ、それが新政府軍だ」


「まあ、おかげで雄藩連合の中に降伏を言い出す者はいなくなりました」


「そうですか……」


 俺は城井家の人々の事を考え、唇をかみしめて爺さんのいる町を振り返った。


「よし! そろそろ我々も薩摩へ帰るとしよう」


「我々は、ここでお別れです」


 数十人の兵士が歳久殿と家久殿にあいさつに来た。


「うむ、国に帰ったら豊前の停戦の話を各当主殿に話しておいてくれ」


「はっ」


 どうやら雄藩連合の、他家の兵士のようだ。

 逃げ遅れて行動を共にしていたのか、自らの判断で島津軍にいたのかは不明だが、まあ不敵な面構えから後者のような気がするが。

 その兵士達が、歳久殿と家久殿にあいさつを済ますと島津隊と別れてそれぞれ帰路についた。

 それをしばらく見送ると、俺は口を開いた。


「歳久殿、家久殿。我々は飛行艇に乗って帰りましょう」


「飛行艇など見えませんが……」


 歳久殿が不思議そうな顔をする。


「くふっ」


 すると久美子さんがうれしそうに笑った。まあなんだ、さすがは鹿児島一の美女だ。とげが無くなると、無垢でかわいい。

 俺はなんとなく青く澄み渡る空を指さしていた。

 明るい青空には、所々に雲があるのだが、その雲がとてつもなく白い。まるで空だけ見ていると真夏を感じる。


「姿を見せろ!」


 俺は空にむかって言った。


「おおっ!!」


 島津隊から声が上がった。

 緑の大地の上に、輸送用UFOが青く輝く美しい姿を現した。


 ――しまった!


 俺の指は明後日の方向を向いている。

 いやあ意外と恥ずかしいものだなあ。これ。

 俺は他の奴らのように、なにくわぬ顔をして指の位置をズイッと下げた。その時、なぜか口をとがらせて吹けない口笛を吹いた感じにしている。


「ユ、UFOですか? すると、八兵衛殿は宇宙人でありますかな?」


「いやいや。あれはそういう形状にしてあるだけです。俺は豚に見えますが、日本人です。さあ、あれに乗って薩摩へ急ぎましょう」


「ふ、ふむ」


 兵士達と別れて俺達は歳久殿と家久殿、二人を乗せて鹿児島に向った。




「あっ、あれは?」


 島津邸にむかっている途中で、広い空き地のような場所から喚声が聞こえる。

 運動会か何かだろうか?

 いや、なにか戦いが起っているようだ。

 すでに鹿児島に入っている。何の戦いだろうか?


「あれは、島津家最強の精鋭五百人。な、何ということだ。やられているではないか!!」


 歳久殿が目を見開いて驚いている。

 俺は、島津家が前線へ最強の精鋭を送らずに温存していた事に驚いていた。


「そうか、あれは真田か? しかし案内を待つように言ってあったのだが、誰と来たんだ?」


 戦っている者達から少し距離をおいて、機動陸鎧天夕改が二人ならんでいる。

 一つは、真田家指揮官用に仕様変更した物だ。

 といっても、肩に六文銭を浮き彫りにしてあるだけなのだが。


 俺達はUFOを天夕改の後ろに降ろして、UFOから降りた。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! お、お、おおとのーーー!!!!!!」


 豊久殿だ。

 天夕改から降りると、俺の前に一目散に走ってきた。

 そして、平伏した。

 あーあ、俺は隠していたのだけどなあ。

 一応、今は八兵衛さんなんですけどー。


 だが、それを見て、歳久殿と家久殿も俺の前で、慌てる事も無く平伏した。

 あーー、慌てないということは、うすうす感じていたのでしょうね。バレバレでしたか。


「な、なにーーー!!!! 大殿だとーー!!!!」


 二人のおっさんが慌てて走って来た。

 一人は、線の細い智将のような坊主頭のおじさんと、髭面で体格の良いおじさんだ。髭面のおじさんは見るからに恐そうで、俺の苦手なタイプだ。だってよーこえーんだもんよー。

 二人は俺の前で、平伏した。

 恐らく、義久殿と義弘殿だろう。


「あのー、すみません。ここは薩摩です。そして島津家は木田家とは対等です。平伏されては困ります」


「ふふふ、島津家はかつて豊臣秀吉様と徳川家康様にも同じように屈服しております」


「いやだなあ、俺は豊臣秀吉様や徳川家康様と比べられるほどの者ではありませんよ。まさに月とすっぽんです」


「はっ!?」


 声は後ろからした。

 十田一族と、久美子さんだ。

 なんだか、目が見開かれて恐ろしい。


「えっ? 何を驚いているんだ?」


「はあーっ、はっはっはーーー」


 遅れて笑いながら真田が歩いて来て、豊久殿の横でひざまずいた。


「大殿!! 俺は北海道国軍四万と戦った」


 豊久殿が我慢しきれずに口を開いた。


「う、うむ」


 三万数千人と聞いていたけど、まあ勝った側からは四万か。

 五万と言わなかっただけでも正直者ということか。


「たった、四人でだ」


「な、何ーー?! 四人だとー!!」


 島津四兄弟が、驚いている。


「そして圧勝した。撤退する四万の兵士の後ろ姿を見て、俺は感動した。広大な緑の大地を、撤退していく兵士の姿は圧巻で美しかった」


「あ、圧勝だとーー!!!!」


 また、四人が声を上げた。

 その目は少し飛び出している。

 義弘殿のどんぐり眼が、ポンッと音を立てて飛び出しそうだ。


「俺は決めた! 大殿に忠義を尽くすと!!」


「まてまて、豊久様は島津家の血族ではないか。忠義は島津家に尽くすものだ」


「さにあらず、男は自分の決めた者にこそ忠義を尽くすもの、それでこそ戦場で命をかけられるというものです」


 どうやら、興奮した豊久殿には何を言っても無駄なようだ。

 ここは当主義久殿に助けを求めよう。


「義久殿、何とか言ってやって下さい」


「よろしいのですか?」


「ええ。ガツーンと言ってやって下さい」


「わかりました。豊久ーー!!」


「ははっ!」


「よく言ったー!! それでこそ薩摩の男だ。その忠義、死ぬまで不変のものとせよ!! 大殿!! 島津家共々よろしくお頼み申し上げます」


「はっ!? いやいや。ちがうよーー!! 俺は対等でいいよ。いずれ、民主化するんだから。木田家など、小っちゃな産廃会社になるんだから」


「ふふふ、ならばそれまでの間で結構。島津は木田家の譜代として犬馬の労をいといません」


 はぁー、やれやれだぜ。

 豊久殿が、勝ち誇ってうれしそうにニヤニヤしている。


「と言う事だ!! 父上! 大殿に失礼があったら。父上といえども処すからな!」


「えーーーーーっ」


 家久殿の顔面が真っ青になって、汗が噴き出していた。

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