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第三百二話 総集編③ 鎧解説

「すげーー!!」

「ふぁああーー!!」

「ロボだーーかっけーー!!」


 体育館に入った生徒から歓声が上がりました。


「うふふ。先日、大殿がお忍びで来たときに用意してもらいました」


 教室の窓ガラスと天井をなおしに来たときだ。あの日に用意したようです。

 体育館に木田家の鎧の数々が整列しています。

 左から小さい物から大きい物の順に並べられています。

 ロボに見えますが、とうさんいわく鎧です。


「ええーーっ!? お、大殿がいらっしゃったのですか」


「ふふ、こっそりお忍びで来ています。これからも抜き打ちで来ると思います。いつ来るかわからないので皆さんは、はめを外しすぎないようにして下さいね」


 まあ、来ても赤いジャージで用務員と書いてあるので、絶対に気づけないと思います。


「ええっ!? 恐い、恐すぎます」


 皆が怖がっていますが、とうさんは子供がハメを外すぐらい、笑って許してくれますよ。そういう人です。


「では、こっちへ来て下さい。一つずつ見ていきましょう」


 古賀校長先生が、一番左の黒い忍者コスチュームのところへ移動しました。頭の上からつま先まで黒いビニールのようなコスチュームです。


「これが、古賀忍軍の忍者コスチュームです。可愛いミニスカートがついています」


 そう言うと古賀先生は、コスチュームのミニスカートをガバッと持ち上げました。

 スカートの中には大人なエッチな下着をつけていました。

 紫色の面積の少ないスケスケレースです。

 でもそれは、コスチュ-ムの上なので透けているのは黒いコスチュームです。


「うわーーすげーーっ」


 男子生徒が興奮しています。古賀先生が少し赤くなってもじもじしています。

 私の横でライちゃんと美代ちゃんが私の顔をジロジロ見ています。

 わ、私は女です。すげーとか興奮しませんよ。

 男子生徒は忍者服の前でしゃがんで、股間を見続けます。何でそんなに見たいのでしょうか?

 男って、おじさんもガキもみんなエッチですね。困ったものです。

 とうさんの狙い通りです


 とうさんは「このエッチな下着を見せれば、男なら隙が出来る。そのための仕様だ。俺は決して、それ以外のやましい事は考えていない」と言っていました。


「次はこちらです」


 古賀先生はスカートをもとにもどすと、次の鎧に移動しました。


「……」


 男子生徒は名残惜しそうに忍者コスチュームをまだ見ています。

 だいたい、それ服だけで誰も着ていませんよ。なんでそんなに見たいかなー。


「これは、尾張黒鋼深山胴丸具足です。尾張と美濃、伊勢と今川軍で使用されている当世具足です」


「すげーーっ!! かっこいい!!」


 真っ黒でピカピカ輝く鎧は、戦国時代の鎧そのままです。

 額の前立物は、みやまくわがたの角が付けられています。

 まるで芸術品ですね。


「機動性が高い代わりに防御力、攻撃力はひくくなっています」


「へーー」


「次が、真田家重装鎧です。赤くて高さは三メートル、分厚い装甲ですね。先日越中で、柴田軍八千をこの重装鎧を装備した三百の真田重装歩兵隊が撃破したのは、皆さんの知るところですよね」


「こ、これが、あの真田の重装歩兵隊の鎧なのかーー!! すげー!!」


 ここまで来ると、もうロボに見えます。

 忍者コスチュームの事を忘れて、男子達が重装鎧を囲んで見ています。


「次が、ゲン軍の機動偵察陸鎧です。サスリル製で高さ六メートルの鎧です」


 サスリルとは、サス(ステンレス)とミスリルの合金製という事です。


「銀色なのに角度を変えると青く反射するときがあるわ。綺麗ねー」


 美代ちゃんが頬を赤くして言いました。ひょっとして気に入ったのでしょうか。機動陸鎧の中では一番性能が低いのですけどね。


「次が、赤い機動戦闘陸鎧天夕改です。これは皆さんが乗れるようにしてもらいました。全部の説明が終ったら交替で試乗してみましょう」


 スリムな鎧で、機動性と攻撃性が高いです。

 機動陸鎧はすべて高さが六メートルで偵察型と同じです。


「えっ! 乗れるのですか?」


「はい。この天夕改だけは、大殿に動くようにしてもらいました。誰でも自由に乗れるようにしてあります。これはロボでは無く鎧なので操縦ではなく着る感じなので誰でもすぐに動かせますよ」


「うおーーっ! 早く動かしてーー!!」


 すぐ後ろで中川が大声を出しました。

 うるさいです。


「次が、緑の機動戦闘陸鎧です。伊達家では天竜、上杉家では天地と呼んでいますが全くおなじ鎧です。その横が紫の鎧で機動汎用陸鎧です。天夕改や天竜、天地より装甲が分厚くなっていますので機動性は落ちますが防御力に優れています。その横が青い機動防御陸鎧でさらに防御特化しています。少し太っちょに見えますね」


「おおーーっ」


 全ての機動陸鎧の説明が終ると歓声が起りました。


「せんせー!! 天夕改に俺が一番で乗ります」


 そう言うと一人の生徒が乗りました。


「て、てめーずるいぞ! 有田!!」


 中川が叫んでいます。

 私の耳元で言うのでうるさいです。

 どうやら、フライング気味に乗り込んだのは有田君という生徒のようですね。

 よっぽど乗りたかったのでしょう。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! 動いたーーーー!!!! すげー、回りが透明になった!!」


 有田君はおぼつかない足取りで歩きましたが、体育館の中央に近づく頃には普通に歩いています。


「おい、早く替れよーー!!」


 中川が、どうでもはやく乗りたいみたいです。


「ふふふふ、馬鹿な奴め。てめーらは皆殺しだ。全員仲良くここで死にゃあがれ!!」


 天夕改が体育館の中央で身構えました。

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