表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/428

第三十話 現れた化け物

 一週間が過ぎた。俺は、生き残りの人達が心配で、もう一度差し入れに行く事にした。

 ミサとあずさと一緒に近くまで移動して、二人には物陰で隠れてもらい、一人で警備兵の前に両手をあげて歩いた。


「止まれー! 何者だー!!」


「俺です! アンナメーダーマンです」


「そっ、そうですか。アンナメーダーマンは、通すように言われています。ですが証拠を見せていただけませんか」


「えっ!?」


 いきなりの銃撃は無くなったが証拠を見せろという。

 まあ、フルフェイスのヘルメットに、黒のジャージに裸足じゃあ、ただの不審者だ。証拠も必要だわな。

 仕方なくジャージのズボンを下ろして、海パンのお尻の「激豚」を見せた。


「おお、まさしくアンナメーダーマン!!」


 おーい、これから、ここでの身分証明は、毎回ジャージを脱いで尻を見せないといかんのかー。

 あずさとミサを手招きして呼び寄せた。するとあずさが俺のヘルメットを見つめながら。


「とうさん、何故ヘルメットを外さなかったんですか?」


 と、聞いて来た。

 し、しまったー。その手があったのかー。

 き、気が付かなかったー。俺が固まっていると。


「どうぞこちらへ」


 警備兵が声をかけてくれた。ありがたい。ありがたい。

 ふふふ、これで無かった事になったはずだ。

 そう考えていると、ミサが呆れた顔をして見つめている。

 あーばれているのですよね。はい、わかりました。


 少し歩くと、立派なテントに案内された。


「私は寺倉一等陸佐です。先週は食料を分けていただき感謝致します」


 中に入るなり、敬礼とあいさつをしてもらった。


「今日も、差し入れを持ってきました。今回はキャベツと、玉子、カップ麺を持ってきました。ただし、カップ麺は賞味期限がきれていますけど、不要なら持ち帰ります」


 俺は、一つ意地悪をした。

 賞味期限切れの物を持ってきて、いらないと言うかどうか試したのだ。

 俺は、底辺所得者だ。

 カップ麺などは、賞味期限ギリギリで投げ売りされている物を沢山買い込む。当然食べる時は、賞味期限切れだ。時には二年以上たった物でも平気で食べる。


 こんな非常時に、貴重な食料を賞味期限が過ぎているからと、断る様なら仲良くは出来ないし、したくない。

 そういう意味で試したのだ。


「ふふふ、カップ麺の賞味期限など一年過ぎていても、十分食べられます。喜んでいただきます」


 うむ、半分合格だ。ここは二年でもと言って欲しかった。


「あずさ、頼む」


 あずさはうなずき、テントの外にでて食料を出した。


「うおおおーーーすげーー!!」


 テントの外で歓声があがった。


「アンナメーダーマン。少し頼みたい事があるのだが良いかね」


「なんでしょうか、出来る事なら何でも致します。丁度俺も頼みたい事がありましたし……」


「そうですか。何を頼まれるか不安を感じますが、まずはこちらの頼みから、飲み水を分けていただきたい」


 俺は、食料品を出し終わって戻って来たあずさを見た。

 あずさは、笑顔でうなずいた。

 あずさが兵士に案内されるところを、テントの入り口から見ていると、給水車が十数台並んでいる。いっぱい集めたなー。


 あずさは一台ずつ水魔法で、水を補給していった。


「あずさ、あそこの入浴セットにお湯を張ってあげなさい」


 水が不足しているのなら、お風呂にも入っていないだろうと思い「湯」とのれんが掛かっている施設を指さした。


「はーい」


 あずさが元気に返事した。


「おお、重ね重ね、ご配慮ありがとうございます。それでアンナメーダーマン殿の頼みとは何でしょうか?」


「俺の頼みは、子供の保護です。子供を見つけたら、家族共々保護して欲しい。その後はこちらで安心して暮らせる様にします。是非協力してもらえないでしょうか」


 俺は、こんな世界になった事に少なからず責任を感じている。

 そして、子供が泣いている姿が思い浮かんで、心安らかでいられない。

 もし、親にはぐれ一人で泣いている子供がいたら一秒でも早く助けたい。

 そしてあずさの様に、腹を空かせ泣いている子供の手を取り、腹一杯にしてとびきりの笑顔が見て見たいと、心からそう思っている。


 一週間ずっと飛び回ったが、情けない事に俺は一人も見つけてあげられなかった。きっと俺の姿を見て隠れたのだろう。あやしすぎるもんな。

 だからここは、組織の力を借りて手分けして探してやりたい。


「そ、そうですか。我々はここを、命を捨てて守る事ばかりを考えていました。……そうですね、忘れていました。元々我々も国民の生命と財産を守るのが仕事です」


「えっ!? ちょっと待って下さい死守していたという事? ここってそんなに大事なところなのですか?」


「はーーっ!」


 ミサが呆れている。


「えっ!?」


 益々わからねえ、いったいここはどこなんだよー。


「ここは、旧江戸城です。わかりやすく言えば皇居です」


 寺倉さんが笑っている。


「こ、皇居!! ぐわーーっ、恐れ多いー。俺の様な豚が来て良いところじゃねえー!! 直ちに帰ります。あずさ、ミサすぐに帰るぞー!!」


 ダダダダダダ

 パーーン、パーーン


 俺が帰ろうとした瞬間、銃声が聞こえた。


「バケもんだー、ぎゃーーーっ!!!」


 悲鳴も聞こえる。


「うろたえるなー。いったいどうした。報告をしろ!!」


 さすがは寺倉さんだ、貫禄が違う。


「俺の出番のようですね」


「行ってくれるのか? アンナメーダーマン」


 俺は寺倉さんにうなずいて見せると、あずさとミサの方を見た。


「あずさはじっとしていてくれ。ミサ行くぞ!!」


 ミサはお尻をクイっと少し出し、お姫様抱っこをしやすくした。

 はーーっ、やれやれだぜ。ため息をつきながらご希望に応えた。

 いったいどんな化け物が出たのだろうか。

最後までお読み頂きありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「頑張って!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本日も頑張るアンナダーメーマン!! 木田さんの怪しい行動にツッコミを入れるあずさが可愛いです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ