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第二百八十四話 美少女戦士圧勝

「さて、お待たせしましたね」


「な、なにっ!?」


 大殿は言いながら中庭に降り立ちました。

 たったそれだけなのに、一益も配下の兵士も飛び上がって驚きました。

 すでに滝川軍は全員が大殿のすごさに気が付いているようです。


「あー違いますよ。さっきから言っているように俺は手出しをいたしません」


 そう言うと中庭の地面の上に、抱きかかえているアド様を降ろしました。

 アド様は地面を嫌がって、振り向いて大殿に抱きつきます。

 これで、アド様の参加も無いと言うことになりますね。

 大殿はアド様の背中に両手を回すと、「やれやれだぜ」という表情になり、アド様を抱きかかえました。

 アド様かわいい。


「カノンちゃん、お待たせしました。もう良いでしょう」


 大殿はもう一度言い直しました。

 さっきのセリフもカノンちゃんに言っていたのですね。


「もーーっ!! 八兵衛さんおそいよーー! パンツ丸出しは、はずかしいのですからね!」


 カノンちゃんは両手で、スカートをギュッと引っ張るとお尻を隠します。

 どうやら、カノンちゃんもわたしと同じで、コスチュームの上からでも見られるのが恥ずかしいようです。


 ――えっ?!!


 驚きました。カノンちゃんは、一益の超能力に押さえつけられているはずですが、自由に手を動かしました。


「うふふ。でええーーーい!!」


 声と供にカノンちゃんは空中で、まるで押さえつけているものを振り払うようにきりもみ状態に回転しました。


「ぐわああああーーーーーっ!!!!!!」


 一益がヨロヨロとよろけて、断末魔のような大声を出しました。両手が雷に打たれた様にボロボロになっています。

 どうやら、超能力は諸刃の剣で、自分の超能力より圧倒的に大きな力を使われると、そのダメージを体に受けてしまうようです。

 立っていることもつらいのか両膝を地面につきました。


 パーーン!! パーーン!!


 大きな音が鳴り響きます。

 一益のほおが赤く腫れ上がります。


「ぐっ、ぬうっ」


 カノンちゃんが一益の前に立ち、いたずら小僧を叱りつけるように両ほおを平手で叩きました。

 最早、一益は立ち上がる事も手を動かす事も出来ないようです。

 座り込む一益の回りが赤く染まります。全身から血が出ているようです。

 カノンちゃんに叩かれて、口からも一筋血が出てきました。


「カノンちゃん! もう、良いでしょう。滝川の兵よ! まだ戦いますか?」


 滝川の兵はガチャガチャと武器を捨てるとひざまずきます。

 私を囲んでいた兵も槍を捨て、大殿の前で膝をつきました。


「うむ。皆さんお疲れ様です。ケガはありませんか?」


 大殿は、敵兵が全員戦意を失ったのを確認すると私達に聞きました。


「はっ!!」


 私達全員で大きな返事をします。

 大殿は、満足そうに大きくうなずきます。

 そして後ろの客間を見ました。


「ミサ、島津の姫君をこちらへ」


「はいはい」


 ミサ様に連れられて、久美子さんと永子さんが縁側にやって来ました。

 丁度兵士達より、一段高い所から見下ろす形になっています。


「織田軍、滝川家の兵よ。我々はこちらの島津家の姫君の配下だ。その島津家がお前達を撃退した以上、金沢は今より島津家の管理地とする。今後金沢に侵入するようなら明確な宣戦布告と見なす。帰って織田殿にそう伝えろ。そして、姫君の友人の住む金沢をこんなに荒らした罪で、滝川一益及びその弟の慶次郎は、こちらでその罪を裁かせてもらう。わかったら、武器は置いたまま金沢を出て行ってもらおうか」


 大殿の言葉を聞くと、織田兵は、倒れている兵を助け上げ、それぞれ撤退を開始しました。

 一益の事を心配する兵士は一人もいませんでした。

 これだけで、一益が配下からどれだけ嫌われていたのかがわかります。


「スケさん、この拘束具で二人を拘束してくれ」


「はっ!」


 スケさんが拘束を終らせると、二人のケガが回復しました。

 大殿が治癒を施したのでしょう。

 ケガが治ると、一益は恐ろしい形相で大殿をにらみ付けます。

 滅茶苦茶恐ろしいです。

 でも、大殿はまるで動じていない様子で話しかけました。


「ふふふ。お前達は、ハルラという奴を知らないか?」


「!?」


 二人が驚いた表情をしました。

 大殿はその表情だけで全てがわかったようです。


「なるほどなあ、ハルラの野郎! 俺を直接狙うのをやめて、俺のもっとも嫌がる事を始めたのか? それとも何か違う目的があるのか? なあ、一益お前は、今まさに苦しんでいる底辺を生きる人々と、寄り添う生き方というのをする気にはならねえのか」


「それだけは絶対にないな。俺はもともと政治家の息子だ。あの騒ぎが無ければ、おやじの地盤を引き継ぎ政治家になる予定だったのさ。政治家の仕事は、大企業とその経営者、一部の大金持ちが望む事を実現するのが仕事だ。底辺の人間なんぞがどうなろうと、もともと知ったこっちゃねえのさ。どうせ選挙でもそいつらは投票をしねえしな」


 何をいうのでしょうか。投票しないのは、する先が無いからでしょ。

 多くの国民の生活を良くしてくれると思って、期待を込めて投票した政党はもっとも悪らつな消費税を八パーセントから十パーセントに上げただけでした。本当にガッカリしました。この恨みは一生忘れませんよ。


 選挙に出ている人は、皆供託金を払い選挙活動のお金が出せるほどのお金持ちばかり、底辺からは立候補できない仕組みじゃ無いですか。

 立候補している人間に政治なんかしてもらいたくないと言うのが本音と、何故わからないのでしょうか。

 私には、一益の考え方が崩壊前の日本の政治家の全体の考え方に思えてきました。

 まあ、個人の意見なのですけどね。


「はーがっかりだぜ。よくわかった。底辺で必死に我慢して生きている人達が馬鹿にしか見えないのだな」


「全くその通り。よく考えたら良い世界になったもんだぜ。底辺の糞共をいくら殺しても、罪にすらならないのだからなあ。ぎゃあーーはっはっは」


「はーーーーーーーーーっ! やれやれだぜ!」


 大殿は長いため息をつきました。

 そして、何かを考えているようです。

 私なら、死刑です。

 絶対こんな奴死刑です。


「ヨシ!!」


 大殿は考えが決まったようです。

 大きな太ももをパシンと叩きました。

 そして、ニヤリと暗黒の笑みを浮かべました。


「お前達は、柴田の所へ行ってもらう。そして、柴田の元で働け。それがお前達の犯した罪への罰だ」


 なーーっ。罰が軽すぎます。

 大殿は、こんな奴らでも許してしまうのですね。

 優しすぎます。でもそれが素敵です。


「だが、こいつらは無駄に強いからなー。柴田はまだしも前田は負けそうだなー。そうだ柴田と前田に鎧を作ってやろう」


 大殿は独り言を言うと、昔の中国風の鎧を出しました。

 真っ黒な鎧には、段差や窪み、綺麗な装飾が施されています。

 あたりは、すでに暗くなっています。

 さっきまでは、血のように真っ赤だった月が小さく白くなっています。

 その月の光に照らされた二体の鎧が光を反射して、とても幻想的で美しいです。


「こ、これは!?」


 そう言うとスケさんとカクさんが近づいて見ています。


「気が付いたかい。ふふっ」


 大殿がご機嫌です。まるで子供のようです。

 一つの鎧には、長い二本の触覚のような物がついています。


「これは、いにしえの飛将軍呂布奉先殿の鎧ですか? 良く出来ていますなあ」


「さすがは、スケさん」


 大殿はうれしそうに言うと、今度は鎧にむかって言いました。


「さあ、人化してくれ」


 鎧が、人の形になりました。

 まるで漆黒のアンドロイドメイドのようです。


「お前達の名前は影のようだからシャドウだ。柴田と前田の専用だ。俺以外は主人以外に装備させないようにな」


 シャドウの二人はこくりとうなずきました。


「ミサ、この二人とシャドウ二人を廣瀬さんの所へ運び、柴田の所へ運んでくれ。ふふふ、一益と慶次郎の面倒を見るのも罰の内だ。くっくっくっ」


 きっと、柴田様の驚く顔でも想像したのでしょう。

 大殿はとてもうれしそうに笑っています。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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