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第二百七十五話 強かったロリババア 

「はい。大殿! 柴田軍の事を報告にまいりました」


 私は、ギュッと歯を噛みしめて一歩前に出てから一呼吸おいて言いました。


「丁度良かった。俺の横に来てくれ」


「キャーー!!!」


 ――ばっ、馬鹿なのでしょうか


 姿を消している部下から黄色い歓声が上がりました。

 あんた達、バレてしまうでしょ。

 本当に何を考えているのでしょうか。

 あの子達に知られたのは一生の不覚でした。


 大殿に近づくとフォリスさんが一歩横にずれてくれました。

 本当に大殿のすぐ横に行けるみたいです。


「コホン」


 後ろでミサ様が咳払いをしました。


 ――うわああーー!!


 し、失敗しました。

 思わず、大殿に触りそうなくらい近づいています。

 危うく手を握りそうになっていました。

 好きすぎて無意識でこんなことをしそうになるなんて、とんでも無い女です。


「くっくくっ」


 部下達が笑うのを我慢しています。ほぼ聞こえていますけどね。

 大殿は、私の事を全然見ないで、優しい笑顔で来ているお客様を見つめています。バレていないようです、よかった。

 誰なのでしょうか?


「この方達は、柴田軍のご婦人の代表者です。心配して来ています。真ん中の美しい二人が、柴田殿と前田殿の奥方です。見てきた事を教えてあげて下さい」


 私は、大殿の優しい笑顔の意味がわかりました。

 旦那様を心配する奥方様達の心がうれしかったのだと思います。そういうお方です。

 でも、どうやって説明しましょうか。

 ゾンビのことは言わない方がいいですよね。


「は、はい。あの……」


 私は口ごもり大殿の顔をみました。

 大殿はこちらに顔を向けると、にこりと笑いました。

 はぁー素敵な笑顔です。


「柴田軍は大陸につながる島に欠員無く降りました。島には生きている人は誰もいませんでした」


「ふふ、ゾンビはいませんでしたか?」


 はわわ!

 せっかく言わなかったのに、大殿の方から言いました。


「島中の人がゾンビになっていました。それを全て海中に落とし、大陸からのゾンビも橋の上から海中に落としました。近くにいるゾンビの駆逐は全て終了しました。柴田軍に欠員は出ていません」


 私はけが人が出たことは、あえて言いませんでした。

 言うと、ゾンビがうつったと思う人が出るかもしれないと考えたからです。


「ゾ、ゾンビ……」


 ご婦人達がザワザワしました。


「そうですか。ご苦労様でした」


「は、はい。いいえ。柴田軍が退治をしましたので、私達は見ているだけでした。大したことはしていません」


 大殿はすべてわかっているという表情でうなずきました。

 きっと、私達がしたことを、見てきたように理解してくれていると感じました。うれしすぎて涙が出そうです。


「どうでしょう。ご婦人達に行ってもらったら危険すぎるでしょうか?」


「危険すぎることはありませんが、柴田軍が留守の時には護衛が必要だと思います」


「それを廣瀬さんに頼んでもよろしいでしょうか」


「大殿から直接の依頼なら、断れる訳がありません」


「ああ、そうですね。古賀さんに頼んでからで無いといけないですね。でも、古賀さんには名古屋の学校の校長を頼んでいるし……」


「いやニャ」


 大殿のひざの上から声がしました。アドちゃんの声です。


「鋭いですね。アドは。では、アドに木田家の特殊部隊の全権長官になってもらいましょう」


「馬鹿ニャのか! だから、いやニャ!!」


「今から、古賀忍軍とカンリ一族は、アドを頭にして、その下に入ってもらいます。ついでに、古賀さんの後任の校長が決まるまでは、アドが古賀忍軍の首領も兼任して下さい」


「ご主人様の耳は、腐っているのかー。いやだと言っているニャーー!!」


「ご婦人方、希望者には大陸へ行くことを許可します。護衛には古賀忍軍ろ組が付いてくれますので安心して下さい」


「は、はい。ありがとうございます。大殿の事は信頼していますが、それでも心配です。一度視察をさせて下さい」


 柴田様の奥様でしょうか、一番綺麗な人が言いました。


「当然です。廣瀬さんもう一度お手数ですが、奥方達の代表団と島へ行ってください」


「はい」


 奥方様達は、視察が決まると納得したのか体育館を出て行きました。


「大殿!!」


 桃井さんが少し怒った表情で近づいてきました。

 でも、表情はそのままですが、大殿に近づけば近づくほど顔が赤くなります。

 何があるのでしょうか。


「私も、廣瀬も納得出来ていません」


 ――へっ?


 な、な、なななな、何の話。


「ニャンだお前は!!」


 アドちゃんが姿を現しました。

 すげーかわいいです。

 猫耳に尻尾までついた、メイド幼女です。

 そのアドちゃんが、子猫のような顔をして威嚇しています。


「か、かわいい!!」


 桃井さんがアドちゃんに抱きついて、なでなでしています。

 ず、ずっる!!

 私も我慢が出来なくて、なでなでしました。

 本当に可愛らしい子猫ちゃんです。


「はわわ。お前達は、な、何をするニャ」


「大殿、こんなにかわいい子猫のような幼女が、長官とは私も廣瀬も納得出来ません」


 おーーい!

 私を巻き込まないでください。

 私は、大殿の言うことなら何でも納得していますよ。


「はっ、馬鹿!!」


 見えないところから声がしました。

 カンリ一族でしょうか?


「良い度胸ニャ!! アドをニャめる奴は許さないニャ!」


 アドちゃんから、かわいさが消えて恐ろしい猛獣のような気配がしました。

 思わず、私はアドちゃんから離れました。

 桃井さんも同じ事を感じた様です。私より一メートル位遠くへ離れています。


「ふふふ、こう見えてアドは三十歳です。ロリババアです。強さも……。体験した方がいいでしょうね。桃井さん廣瀬さん、全力でアドをたたきのめしてください。手加減はいりませんよ」


「アドは二十九歳ニャ! かかって来るニャ!!! 小娘共!」


 これほど小娘共が似合わない三十歳はいません。

 桃井さんはやる気満々です。忍者フル装備になりました。

 やれやれですねえ。


「オイサスト! シュヴァイン!」


 私もフル装備になりました。

 これでも私は古賀忍軍では、桃井様に次ぐ実力者です。

 年上なら幼女でも全力でいけます。

 覚悟して下さい。


 私は桃井様の顔を見ました。

 こくりとうなずきます。


「りゃああああーーーーー!!!」


 二人で息を合わせて、アドちゃんめがけて全力で飛びかかりました。


「……」


 体育館の天井が見えます。

 体が全然動きません。


「ふん、小娘共め! 実力の差を思い知ったか! お前達は今からアドの手下ニャ!! 逆らうことは許さないニャ! わかったニャ! はっはっはーー! ……し、しまったーー!! また、はめられたニャーー!!」


「ぶひいいぃぃぃーーーーー!!!」


 何だか豚の鳴き声のような笑い声が体育館中に響きました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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