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第二百四十七話 金色の光

 風はおさまるどころか、どんどん強くなる。

 たまらず響子さんとカノンちゃんがスカートを押さえた。

 どうやら、風はどこかから吹いている訳ではなくて、ここで竜巻のごとく発生しているようだ。


「すごい、大殿以外金色に光り出しました」


 上杉が言った。

 その言葉を聞いて、全員を見たら本当に光っているように見える。

 これが、オオエのカンリ一族の力なのか。


「おおと、おとう、おやじ様。おやじ様! 何かされましたか?」


 オオエは俺をどう呼ぶか迷ったようだ。

 おやじ様か、悪くない。おっさん臭さがいい。


「えっ! 俺は知らないよ」


 本当の事だ、俺は力を吸い取られただけだ。


「お、遅くなりました。ぜーーっ、ぜーーっ」


 左近達が到着した。

 そうとう無理して走って来たのか、汗が次々あふれ出してあごからしたたり落ちている。


「はやかったな」


「な、な、な、なんですか。これはー!!」


 左近達全員の体まで金色に輝きだした。

 と、同時に呼吸まで整った。

 遅れて来た四十人程のカンリの精鋭達が驚いている。


「オオエ様! これは、あの時の光ではありませんか?」


「まさしくそうじゃ」


「んっ、何の話?」


「おやじ様、今からおよそ六年前のクリスマスの日にこれと同じ光が東の空に輝いたのです。時を同じくして、この地の力も増大しました。隕石が消えると同時に、ここの力は元に戻りましたが、あの光はおやじ様ではありませんか」


「い、いや。俺では無い」


 ほ、本当の事だ。

 恐らくそれは、あのヌチャッとした蜂蜜さんが原因だろう。


「俺では無い? ということは、誰かは知っているのですね」


 し、しまったー。

『俺知らないよ』って言わなければいけなかった。

 オオエの奴、頭が良いなー。

 くそー、まあ、こいつらなら話しても良いだろう。

 この場所を教えてくれた恩もあるしな。


「う、うむ。その日、俺の目の前に蜂蜜の様なヌチャっとした物が現れた」


「は、蜂蜜? そ、それで」


 さすがに、それを一口味見したとは言えない。

 かっこ悪すぎる。


「そいつが現れて、俺は気を失った。気が付いたら除夜の鐘が鳴っていた」


 嘘は言っていない。かっこ悪いところを省略しただけだ。


「恐らくそれは、全世界八十億人の中から大殿が選ばれたという事になりますな。そして、それは正解だった」


 上杉が、少女の様な顔をして言った。

 目がうるんで、キラキラ輝いて見える。

 おいおい、勝手に決めつけるんじゃねえよ。

 しかも何に選ばれたんだよ。

 神様にでも選ばれたと言うのかよ。

 俺は、その時底辺のおっさんだぜ。選ばれるわけがねえ。


 ちょっと、まて! おかしい。

 全員が少し若返っている。

 オオエも響子さんも小じわが消えている。

 一番わかりやすいのが、カノンちゃんだ。

 どう見てもヒマリと同じ位に見える。


 ふむ、馬鹿な俺でももう理解した。

 ここで吸い出された俺の力が、ここにいる奴らに分配されたんだ。


「オオエ、この場所はやはり危険だ。この後も一族で誰にも知られないように守ってくれ」


「うふふ、わかりました。おやじ様ならそうおっしゃると思いました」


 なんだか、オオエがかわいい。そして心の底から嬉しそうだ。

 言い方から考えると、俺はためされていたのかもしれないな。

 そして、合格だったようだ。


「すげー。一度に力が増大した気がする。いや、増大した」


 左近が、ぴょんぴょんその場でジャンプしている。

 軽く飛んでいるように見えるが、人の身長をはるかに超えている。


「公民館で宴を開く。左近! 全員に連絡をして、準備をさせよ」


「はっ!!」


「おやじ様、まいりましょう」


 どうやら、一族をあげて歓迎してくれるようだ。






「ひまりちゃーーーん!!!」


 あずさちゃんが呼んでいます。

 嫌な予感しかしません。


「なんですか?」


「私とヒマリちゃんは、とうさんの家族です」


「はい」


 あずさちゃんは、とうさんをお父さんとは決して呼びません。

 それは、私も同じなので何故なのかは意味がわかります。

 今回も家族と言いました。

 普通なら娘のはずです。


「今回はその立場を利用します。まずはゲンおじ様のところへ行きましょう」


「えっ!? なぜ?」


 突拍子がなさすぎて、私にはあずさちゃんの考えがわかりません。


「だってー、初めてとうさんからお仕事を任されたので、絶対に失敗出来ません。ゲンおじ様に報告と人手をお借りします」


「は、はぁ」


 初めてのお使いみたいに、和歌山の熊野衆攻略って……。


「古賀さん、行きましょう」


 私の後には生真面目に私の家庭教師兼世話係の古賀さんがいます。

 今回は三人で和歌山へ行き、現地の清水家の方と仕事をする予定です。


「まってー、私達も同行します」


「すごいですねー。本当に真っ黒いお城です。暗黒の魔王城です。和風なのがまた良いです」


 大阪城の天守閣の最上階に、ミサさんと坂本さんが来ました。


「坂本さんが何故ここに?」


 あずさちゃんが質問しました。

 坂本さんは愛美ちゃんの側衛官だったはずです。


「うふふ、愛美様が学校に行かれましたので、私は側衛官卒業です。新しい人が担当しています。今日より宮内庁から大阪担当官として派遣されました」


「じゃあ」


 あずさちゃんの顔が嬉しそうになりました。


「そうです。今日から旦那様とずっといっしょです。何をしているのですか。さー、行きましょう。の、前に。ヒマリ様何故ここに?」


「えっ!?」


「えっでは、ありません。今日から関東木田学園に行くはずではありませんか? 愛美様は再会を楽しみにしていらっしゃいましたよ」


「はい、そのつもりでしたが、急きょお仕事が出来ましたのでそちらが優先となりました」


「お仕事ですか?」


「そうです。私達は、今から和歌山へまいります。そこで、城に立てこもる熊野衆を助けないといけないのです」


「では、そこに旦那様が……」


 坂本さんが宙を見つめうっとりしています。


「いません!!」


 あずさちゃんがきっぱり言いました。


「えっ!?」


「とうさんは、別行動です。今頃は熊野の山の中だと思います」


「行き先はわからないのですか」


「はい」


「そうですか」


 私はこんなにわかりやすく、しょんぼりした人を初めて見ました。

 この人は、でも凄いです。きっと、とうさんを好きなのでしょうね。それをまるで隠していません。そうですよね。人を好きになるのは悪いことではありません。

 でも、私には出来ません、恥ずかしいですから。


「どうしますか。行きますか? それとも……」


「いきます。旦那様の役に立つのであれば、やりますとも」


 急に、姿勢を正し、き然とした態度になりました。

 その顔は、キリッとした出来る秘書のような美しさがあります。

 はーーっ。とうさんはモテモテですね。


 こうして、あずさちゃんと私、古賀さん、ミサさん、坂本さんで、仙台へ行く事になりました。

 なぜ、行くのかは今のところ謎です。私には見当もつきません。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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