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第百九十一話 荒野の大阪城

 冴子に気をつけながら移動し、高い建物を探した。


「きゃははは……」


 冴子の狂気を帯びた笑い声がだんだん小さくなる。

 おしいなー、あいつ、かわいいのになー。まあ、うちの超美人と比べると可哀想だが、普通にかわいい顔をしている。

 冴子から離れるように走りながら、良さそうなビルを見つけ登ってみる事にした。


「おおおーーっ!!」


 すごい光景が広がっている。

 漫画ならドーーンと大きな描き文字が入り、見開きになっているだろう。

 ポツンと大阪城と北側の高層ビル群が残されているだけで、後は三キロメートル四方ぐらいが荒野になっている。

 だが、ハルラは冴子を使ってまだまだ建物の破壊を続けている。

 どれだけ広げるつもりだよ。


 大阪城の北側の高層ビル群が不夜城、遊郭ということか。


「巨大すぎるだろう。いったい何人の女性が遊女になっているんだよ」


 大阪冬の陣、恐らくハルラは意識しているだろう。

 敵を、大阪城に引きつけ殲滅する気だ。間違いない!

 堀が完成すれば、まさに難攻不落だ。

 徳川家康でさえ落とせなかった、冬の大阪城だ。

 大阪城が不気味に笑ったように見えた。


 大坂冬の陣の頃は、大砲も弓も武器も鎧も騎馬もあった。そして、両軍合せて三十万の武士がいた。

 今は、そのほとんどが無い。

 特に兵士の数が圧倒的に少ない。


「ふふふ、木田の兵力じゃあ包囲することも出来やしない。堀の完成前に攻め込まないと付け入る隙は無いな」


 幸いなことに、堀の工事はあまり進んでいない。

 溝を掘り、水を入れる前に石垣かそれともコンクリートか、整備が必要だ。

 そもそも材料はあるのか。

 あの規模の堀なら、年単位でかかりそうだ。

 まあ、今の状態でも、籠城されれば勝てる気はしない。


「はー、見に来ておいてよかった。これだけでもハルラの考えが良くわかった。しかも、あいつ、かなり大阪城を研究している。それとも部下の軍師の提案か? どちらにしてもやっかいだ」


 あの城のまわりを、十二の部隊と桜木の親衛隊が守る姿が目に浮かんだ。

 総兵力は六万以上か。

 対する木田の総兵力は、かき集めて三万五千位だろうか。

 準備を済ませて守りを固めた敵に、兵士数が少なくて勝てる見込みなどない。


 ――結局はそうなるのか。


 俺は、大きなため息が出た。


「いつまで、見ていてもしょうが無い、行くとするか」


 俺は全速力で、大和のショッピングセンターに向った。

 直線で四十キロほど、俺なら三十分はかからないだろう。

 道中、新政府軍の動向を見たが大和へは兵を入れていないようだ。

 まあ、そんな余裕もないのだろう。


「おーーい」


 ショッピングセンターで大声を出した。

 当然、出しても問題ないと判断したからだ。


「とーさーん!!」


 嬉しそうに子供達が走って来た。

 子供達は無邪気でいいな。

 この瞬間だけは、嫌な事を全部忘れられる。

 俺は、子供達にお菓子を配った。

 大昔の米兵の様に。


 きっと、あの米兵達もこんな気持ちだったのだろう。

 まあ、聞いたことがあるだけの話しで、見た事はないのだけれどもね。


「何しに来たの?」


 エマとライが、近寄ってきて上目づかいで聞いて来た。


「ここに連れてきたい子供がいるのさ。柴井班長はいるか?」


「兄ちゃんは平城宮跡」


 お姉さんのエマが教えてくれた。


「平城宮跡?」


「そうだよ。解放軍の本部」


 今度は、ライが教えてくれた。

 どうやら、大和解放軍は平城宮跡に本部を置いたようだ。

 子供達は、桜井のショッピングセンターに残し、万が一の時には名張に逃がすつもりなのだろう。


「案内は出来るか?」


「うん!!」


 二人が同時に返事をした。


「じゃあ、変身だ」


「オイサスト! シュヴァイン!」


 二人が、かわいいアンナメーダーマンになった。

 ジェニファーとライファだ。


「全速力で頼む」


「えっ!?」


「大丈夫だ。ちゃんとついて行ける」


 二人はかわいい。

 俺がついて行けないと思ったらしい。


「じゃあ、行きます!!」


 言うと間髪を入れず走り出した。

 って、おい!

 不意打ちは卑怯だ。

 少しだけ引き離されたが、すぐに追いついてやった。


「とうさんは、すごいです。全速力なのに全然引き離せません」


 おいおい、引き離すつもりなのかよー。

 それじゃあ、道案内にならないだろうがー。俺以外ならついて行けないぞ。

 ジェニファーとライファは速い、チーターより速い、いやカウンタックよりも速いはずだ。

 平城宮跡へは、十分とかからずに着いた。


 平城宮跡の本部につくと二人は変身を解除し、両腕につかまった。

 俺はまた、両腕にエマとライをぶら下げて歩くはめになった。


「兄ちゃーん!!」


「!? ここには子供は来るなと……」


「やあ、柴井班長。怒らないでやってくれ、俺が道案内を頼んだんだ」


「おおっ、シュウさん! で、ご用件はなんですか?」


「子供達を保護して欲しい。ただ、大和じゃなくて大阪の子供なんだ」


「ははは、子供でも大人でも歓迎ですよ。まあ、間者はお断りですけどね」


「じゃあ、お願いします」


「わかりました。ふふふ、しかし、あのふくれっ面のエマとライがこんなに笑顔になるとは」


「えっ、何かあったんですか」


「この二人、結婚したい人が同じで、どちらがその人のお嫁さんになるのかで大げんかをしましてね」


「しーーっ!!」


 エマとライが、人差し指を口に当てて真っ赤になっている。


「あーははは。そんなことかー。今は法律がない、何人とでも結婚が出来るぞ。そんなになりたいなら、二人ともその人のお嫁さんになればいいじゃないか。俺からそうするように言ってやる。二人は大きくなったら超美人さんになる。断られはしないだろうさ。これで、仲直り出来るよな! 二人が喧嘩をしていると悲しい。俺を悲しませないでくれ」


「はーーい!!」


 二人が上機嫌になった。

 捕まる手が少し強くなったように感じる。

 柴井班長の顔から少し血の気がひいて、青い顔になった。

 なんだかよくわからんが、二人が仲直りしたのなら良いじゃないか。


「じゃあ、UFOを借ります。誰か同行してくれる……」


「はーい、私が行きまーす!」


 エマとライの声が完璧に同調した。

 もはや一人で言ったようにしか聞こえなかった。

 どうやら、二人は仲直り出来た様だ。よかった。よかった。


「うむ、よし、二人に任せた。では、私はまだ仕事がありますので失礼します」


 なんだか柴井班長が、そそくさと急用を思い出したようで行ってしまった。


「じゃあ、行こうか」


「はーーい!」


 んっ、なんだかこういう返事を聞くと嫌な予感しかしない。

 気のせいだろうか?

最後までお読み頂きありがとうございます。


「面白かった!」

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