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第百七十九話 おぶたさんごっこ

「御豚さん、パカパカーー」


 おーい、無理に御豚さんにしなくても、御馬さんでいいんじゃないかなー。

 どうしても、御豚さんと言いたいなら、御豚さんブヒブヒぐらいにしてくれよなー。

 俺は今、食事の終った小さい子を背に乗せてお馬さんごっこだ。

 ようやくおむつが取れたくらいの子から、小学校高学年までくらいの子供がいる。


 背中に乗るのがどうしてそんなに面白いのか、順番待ちの行列が出来た。

 子供達の前を、一周交替で乗せている。


「お馬さん……」


 おっ、この子はお馬さんと言ってくれた。


「……ぶた、ぶたー」


 おーい、お馬さんぶたぶたーってなんだよー。

 いい加減豚から離れてくれよなーー。


「動くな!!」


 なっ! しまった。

 背後の暗がりから、男の声がした。

 どうやら拳銃を構えているようだ。


 子供達と遊ぶのが楽しくて警戒を忘れていた。

 俺は、子供と遊ぶのはそんなに好きじゃなかったはずだよな。

 なのに、警戒を忘れるほど遊んでしまうとは、

 この子達は、可哀想なんだ、親が居なくて食べる物も、頼る者さえ何も無くて頑張って生きてきたんだ。


 今ぐらい少し楽しんだっていいじゃねえか。なんで邪魔するかなー。

 とは言え何とかしないと、ひとまず時間稼ぎだ。子供だけは助けなくちゃあいけねえ。


「まっ、待ってくれ。俺はどうなってもいい。百回いや、二百回殺されてもいい。子供だけは助けてくれないだろうか」


 俺は、恥も外聞も無く男に尻を向けたまま、土下座して床に頭を擦りつけた。


「兄ちゃん、この豚、悪い豚じゃないよ」


 なに! 口の悪いガキの兄ちゃんかよ。


「シュ、シュウさんじゃねえか」


「なにーっ! シュウさんなんて奴までいるのか」


「何を言っているんだ。シュウさん! 俺だ、俺だよ!」


 少し窓際に寄って、姿を見せてくれた。

 その男は。柴井班長だった。


「あっ!!」


 思わず声が出た。

 そうだ、シュウさんは俺だった。


「兄ちゃん、殺さないであげてーー」


 子供達が、俺のまわりに集ってかばってくれた。

 口の悪い、くそがきは先頭になって、銃口の前に立ってくれた。

 ボロボロの黒っぽい服を着て、髪はボサボサ顔も垢で真っ黒だ。

 おかげで、暗いショッピングセンターでは、見つかりにくいだろう。


「あーはっはっはっ! すげー人気だなー。こいつらは、人一倍警戒心が強いのに、こんなになつかれるとは」


「兄ちゃん! 駄目だから!!」


「エマ、わかっているよ。シュウさんを殺したりしないさ」


「なにーー、エマだって! 女の子なのかよ。口が悪すぎだろう」


「はーあっはっはっはっ。この子は目の前で親が惨殺された。そのショックでしばらく前まで、口がきけなかったんだ。やっとしゃべられるようになったばかりなんだ。許してやってくれ」


「そ、そうなのか」


 俺をかばう為、両手を広げて立っている少女のわきの下に手を入れて、抱き上げ、ギュッと抱きしめた。


「やめろーー、この、くそぶたーー」


 ふふふ、柴井班長の言葉を聞いた後だと、この口の悪さも心地いい。


「なあ、班長あんたは、この子の兄さんなのか」


「ふふ、違う。違う。おじさん、おじさん、うるせーから、兄ちゃんと呼べって言ってやったんだ。ほら皆、飯だ」


 班長は、袋を子供達に差し出した。

 袋には、かじった握り飯など、残飯が入っていた。

 こ、こんなもんを食っていたのか。

 いや、食えるだけでもましか。


 俺が、エマを降ろすと、他の子供達が抱っこをせがんできた。

 二人ずつ交代で抱っこしてやった。

 スキンシップに飢えているのだろうか。

 皆嬉しそうだ。


「なあ、班長、一人で面倒を見ていたのか」


「ああ、誰かに話すと、どこから隊にバレるか、わからないからな。バレたら、この子達はどうなることになるか」


 俺と班長が座り込むと、俺達のヒザの上に子供達が乗ってきた。

 驚いた事に、俺のヒザにエマが乗っている。

 体に触れると「触るな豚」と、言われそうなので触れないように気を使った。


「大変だったでしょう」


「いや、大変なのはこの子達のほうさ」


「そうですね」


「シュウさん、大和は、大和の人達は今苦しんでいる。新政府を名乗る賊が襲いかかり、女は全部大阪に連れて行かれた。男は戦場だ。京都の最前線では大和の人間が戦わされている……。そして、子供達は見捨てられた……」


「班長は、大和の人間なんですか?」


「ふふふ、爺さん、ひい爺さんそれ以前からの、大和っ子だ。だからか、人一倍思い入れがある」


「でしょうね。俺もこの子達が好きになってしまった。何とかしてやりたい」


「シュウさん、ありがとう。その言葉だけでも嬉しい」


 班長は涙ぐんでいる。

 俺は、本当に何とかしてやりたくなった。

 でも、ただ助けるだけでは、いけない気がする。


「班長、新政府軍と戦う気持ちはあるかい。そして、大和の為に戦う大和人を集められるかい」


「ほ、蜂起しろというのかい? シュウさんあんたはいったい……」


「ふふふ、どうですか。戦う気はありますか?」


「……」


 班長は、返事が出来ないでいた。

 それはそうだ、蜂起するのはいいがすぐに殺されたら、この子達はどうするんだ。

 色々考える事があるのだろう。


「俺は、一人助っ人のあてがあります。力強い助っ人です」


「!?」


「名前はアンナメーダーマンシールド」


 俺は、そう言うとアダマンタイト製の黒いゴーレムをフードコートの中央に出した。左手に巨大なミスリルの盾を装備している。

 暗い為にそのシルエットしか見えない。

 シルエットは、手配書に似た感じにした。

 ミスリルの盾はゴーレムで、収納と風魔法を付与した。


「アンナメーダーマンシールド?」


「そうです。こっちへ来いアンナメーダーマンシールド」


 俺がそう言うと、黒い影が近づいてきた。


「すげーー、ロボだーー」


 子供達が大喜びだ。


「これは、いったい……」


「ふふふ、手配書のアンナメーダーマンですよ。大和の守護神になります。班長の命令通りに動くロボットと考えて下さい。ただし普通のロボと違って、ちゃんと自分で考えて行動も出来ます。話す事は出来ませんが普通の人間ぐらいの知能があります」


「明日、十一番隊の宿営地を襲わせましょう。食糧や物資を子供達の為に根こそぎ奪いましょう。その成果をみて、決断して下さい」


 柴井班長は、アンナメーダーマンシールドを見つめ、動かなかった。

 俺はアンナメーダーマンと言う疑いを、このゴーレムを使って晴らすことも考えていた。

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