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第百六十二話 戦いの決意

「ミサ。俺は今日、子供達の番人をする。各地を回って、俺に面会したいという者がいれば、連れてきてくれないか」


「はいはい。わかりました」


 名古屋城に三つの勉強机を出し、あずさ、ヒマリ、愛美ちゃんの三人を勉強させている。木田家の小六トリオだ。

 家庭教師は、坂本さん、古賀さん、英語の先生にアメリさんに来てもらっている。

 床でアドが落書き中だ。

 その他には、シュラとクザン、連絡係のメイドが数名だ。


「アド! おまえ下手くそな絵だな」


 アドがまるで園児の落書きのような絵を描いている。

 その声を聞きつけて、坂本さんと古賀さんがのぞき込んだ。


「何を言うのですか。上手じゃないですか!」


「そうですよ!」


 いやいや、下手だ。

 俺はこれでも絵心はある。

 二十九歳の女性の描く絵ではない。


「これは何?」


 古賀さんが聞いた。

 指さす物は黒い丸い固まりだ。

 きっと、おはぎか何かだ。


「アンナメーダーマン!!」


 無表情だが、声は嬉しそうだ。

 ばっ、ばきゃーろー、全然違うわー。


「わーーっ! そっくり! デブなところがそっくりです」


 古賀さんと坂本さんの声がそろった。

 てっ、おい! それって俺をデブって言っているだけだよね。

 大体、手も足も描いてねーじゃねーか。


「手も足も描いていないところがそっくり」


 またしても声がそろった。

 ぐぬぬぬ。

 この二人、心が読めるのかー。




「ほう、素晴らしい評定の間ですな」


「なるほど、素晴らしい」


 柳川と上杉が来た。


「うむ、未来の日本をになう若者達だ。社会勉強として聞いて貰う。ところで、二人だけ?」


「はい。他の方は遠慮なされました」


「ふむ、そうか。で、話しが早いのはどちらだ」


「私ですね、たぶん……」


 上杉の言葉に、柳川がうなずいた。


「上杉か、何の用だ」


「大阪行きの件にございます」


「なるほど、皆に押しつけられましたか」


「はっ、あひ! いいえ。私の一存です」


「うん、そうか。だが、決定事項だ。変える気はない」


 だが、もう一押ししてくれれば変えるかも。

 だって、いまさらながらハルラがこえーんだもん。


「では、私の同行をお許し下さい」


 うーーん、止めてはくれないのね。

 もう一声だったのに。


「だめだ。ハルラはこの日本で、最強最悪の男だ。俺でも守ってやれる自信がねえ。情けねえ俺を許してくれ」


「しかし、盾ぐらいは持って行って下さい」


「盾ならアドがなるニャ」


 どうやら、上杉もアドも盾になって死ぬ気だ。

 ヤル気になればハルラなら、この二人では時間稼ぎにもならないだろう。

 まあ、俺やあずさでも時間が稼げるかどうか。

 異世界の魔王で同士討ちが限界なほどの男なのだ。


「だから、尚更連れて行けねえんだ。やばい時には逃げて帰ってくる。足手まといは、いらねえんだ」


「ふぐっ……」


 足手まといと言われて二人は黙ってしまった。


「で、柳川は何の話しだ」


「何の話しではないですよ」


「お風呂の話しか?」


「はっ? それこそ何の話しですか! 学校の話しですよ」


「が、学校だよね。そう思っていたんだ」


「高校、中学は寮で預かるにしても、小学生が……」


「さすがに,親元から引き離せないか」


「さすがですね。その通りです」


「それについては俺も考えた。名古屋駅前に用意した物を見て欲しい」


 ガタン


 小六トリオがキラキラした目で振り向いた。

 はーっ、やれやれだぜ。


「あずさ、全員を名古屋駅前に移動を頼む」


「ハーイ!!」


 すごく上機嫌だ。嫌になるぜ。




 名古屋駅のロータリの南隣、名鉄名古屋駅の前の道路に、こんなこともあろうかと、木田足軽隊を制作しておいたのだ。

 その数六千体のゴーレム、材料はオリハルコンとアダマンタイト、そして俺の魔力だ。

 全部の色が混じると、どす黒い汚い茶色だ。

 まるで地下に眠る蛾のさなぎのような色だ。

 大きさは、人より一回り大きくて、かなり肥満気味に作ってある。


「と、とうさん! すきーー!!!」


 あずさが、飛びついて抱きついて来た。

 幼少期に、欲しいものを買ってやった時の喜び方だ。

 いや、それ以上に喜んでいる。

 目に涙を一杯ためている。


「ど、どうしたんだ!?」


「この子達の名前はスザクにして下さい」


 どうやら、前世の記憶が少し戻ったようだ。

 折角木田足軽隊とつけたのに台無しだ。


「見た目だけじゃなくて、数まで一緒。スザク久しぶり」


 あずさの呼びかけに呼応するように、スザク達が飛び跳ねる。

 まるで何日も飼い主と離ればなれになっていた、子犬のようだ。


「うっううっ……」


 何故か、柳川以外の女性達がもらい泣きをしている。

 なんだか感動的だ。


「あずさ! 数は、たまたまだ。オリハルコンを使い切ったんだ。ミスリルとアダマンタイトは、まだ充分にあるのだけどね」


「じゃあ、補充します」


「いや、いい。それは、次世代にとっておいてほしい。これからは、あずさやヒマリ、愛美ちゃんの時代が来る。その時の為だ」


「無理です。嫌です。それに、加工ができません……うっうっうっ……」


 とうとう、あずさが泣き出した。

 俺が死ぬ気だと思っている様だ。


「あずさは、かしこいね。でも、むざむざ死ぬ気はないよ。ちゃんと生きる努力はするよ。こんなにかわいい、娘達を置いて死にたくは無いからね。でも、保険は残しておかないとね。保険だからさ。泣かないで」


 あずさは首を振って、泣き止まない。

 たった六年一緒に暮らしただけなのに、こんなに泣いてくれる人が出来た。

 俺は幸せで一杯だ。

 死ぬ気は、これっぽっちも無いが、死んでもいいと思った。


 ふふふ、俺は腐っているし加齢臭もするが日本人だ。

 娘を守る為なら、特攻でも何でも出来るぞ。

 待っていろ、ハルラ、娘を守る為たたかう事が、イコール日本人を守る事にもなる。こんな名誉な事は無い。

 ふふっ、さっきまでは行くのが嫌なぐらい恐かったが、ようやく戦う決心がついた。


 今の俺の目は、きっとメラメラと燃えていることだろう。

 ふふふ、正義の戦士アンナメーダーマンの誕生の瞬間だ。

 これで命を捨てて戦える。

 泣きじゃくる世界一愛おしいあずさを見ていると、俺はどんどん闘志が湧いてくる。


 ――不思議なもんだ。人間というのは。いっぽうが、死なないでと思うほど、死んでもいいと思えるのだから。

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