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第百五十三話 飛び入り

 その後は、柳川に学校へかける思いを語ってしまった。


「俺は、学校で大切なのは、国語や、数学を学ぶ事だとは思っていねえ。あれはついでだ。日本人を学んで欲しいのさ。第二次世界大戦てーのがあっただろう。最後は日本対世界だった。ボロボロになったんだよ。でもな、日本はどこにも真似できない速さで高度に立ち直ったのさ。今が、同じだと思わねえか。でもな、日本人は立ち上がれる。日本だからきっと立ち直れるのさ」


 しかも、足を引っ張る国もねえと言いたかったが、それはやめておいた。


「具体的にはどう考えているのですか」


「ふふふ、それはな、大勢の子供を集めれば、日本の子供は、皆素直で良い子なのさ。だから、そのよい子達に、中でも特によい子を真似できるような環境にして欲しいと思っているのさ。つまり、先生に生徒を良く見てもらって、良い行動をした人や優れた才能を褒めてもらいてえのさ。それだけだ」


「先生が大変ですねえ」


「そうだな。でもよう、俺には文章を書く才能や、絵を書く才能があったようなんだ。でもな、一度も学校で褒められなかったのさ。だから、いじけてゲームしか楽しめねえオタクが出来上がってしまった。どこかで誰かに褒められていたら違った人生があったんじゃねえのかな」


「そんな、後悔があったのですね」


「後悔かー、それを俺がするのはちがうな。それは、学校や先生がしてほしいなー。でも今は感謝していることもある。たとえば、泥棒や殺人をしてはいけない事を、ちゃんと学んでいるし、財布が落ちていれば警察に届けるのは当たり前だと思っている。きっと学校のおかげさ」


「なるほど、よく分かりました。だから、ロボとか武具とかが異常に芸術的なんですね」


 そんな会話をしながら、出店の食べ物を食べ歩いていると、コンサート会場に着いてしまった。


「おや、大名だけ行列かい」


「はるさんも、来ていたのですか」


 大名だけ行列とは言い得て妙だ。

 さすがは、はるさんだ。


「あたりまえだよー。ピーツインはうちの駐車場でデビューしたんじゃ無いか」


「あの、こちらの方は?」


 上杉が聞いて来た。


「ああ、この人は、大田大商店駿河本店のおかみ、はるさんです。こちらは越後の大名上杉さんです」


 はるさんの、大名と言う言葉を使わせてもらった。


「速くしないと午後の部が始まってしまうよ」


 はるさんにとって、ここにいるのが誰かなど、どうでもいいことのようだ。

 それよりピーツインが気になるらしい。

 さっさと、ホールへ行ってしまった。


「俺達も行きますか」


 ホールは、人で一杯だった。

 ここで、悪のボスなら、どけどけ、俺を誰だと思うのだーとやるのだろうけど、俺は違う。


「隅っこで、邪魔にならないように見ましょう」


「そうか、じゃあ俺達はいくわ」


 ゲンが言った。


「はぁーっ」


 俺は情けないため息が出た。

 全員ピラピラと紙を出して振っている。

 座席のチケットのようだ。

 持ってねえのは、俺とシュラだけのようだ。


「上杉殿も行きましょう」


 柳川が、上杉の手を引いて連れて行ってしまった。

 上杉は、何度もこっちを振り向きながら、引っ張って連れて行かれてしまった。


「やれやれだぜ!」


 俺みたいなデブが通路の真ん中では邪魔になるので、壁際に行きステージを見た。

 ステージでは、アンナメーダーマンショーが、丁度始まるところだった。

 マッチョで黄色いジャージに白いポケットの、かっこいい俳優が出て来た。


 まてまて、俺と同じ格好じゃねえかよう。

 何人かの客が振り返って俺の方を見た。


「見て見て、あの人、アンナメーダーマンのコスプレしている。全然違うねーー。クスクス」


 あたりから笑い声が広がった。

 やれやれ、どうやら俺を、アンナメーダーマンのコスプレと思ってくれたようだ。

 だが、少しもやもやする。


「俺が、本物なんだよーーー!!! 間違えるんじゃねーーー!!!!!」


 と、心の中で目一杯叫んだ。

 しばらくお芝居が続くと、会場の雰囲気が変わった。

 アンナメーダーマンと怪人が出て来てアクションを始めたからだ。


「全然違う」

「今朝見た、仙台駅のアクションの方がすごかった」

「全然アクションが貧弱」


 どうやら、俺とアイアンファングの戦いを見た人のようだ。

 それと比べてしまっている。


「とうさん、またなにか、やらかしたでしょう」


 俺の横に少女が二人立っている。

 二人とも髪で顔を半分隠して地味な服を着ているが、あずさとヒマリだ。


「にゃ、にゃにもやってないぞ」


「あやしい、あせって噛んでいるし、あやしい。でもまあ良いわ、急いでこっちに来て」


 あずさが俺の手を引っ張る。

 横でヒマリが嬉しそうに笑顔になってつぶやいた。


「うふふ、とうさんは絶対来てくれると思っていました。うれしい」


 すげーかわいい。

 連れて行かれたのは、舞台の袖だった。

 そうか、俺に特等席を用意していてくれたんだ。

 柳川の奴、さすがだ。


「何しているの速くアンナメーダーマンになって」


 あずさが、恐い。


「はい、はい」


 俺は言われるまま、アンナメーダーマンに変身した。

 まあ、変身したといっても、黒のジャージにヘルメットですけど。

 同時に怪人がこっちに来た。

 怪人は、顔を黒く塗った、リラだった。

 体もでかいし丁度良い。


「リラさん、とうさんだから、本気で攻撃してください」


「わかった」


 リラがニヤリと笑った。

 はぁーーっ! おいおい。

 アンナメーダーマンが袖に来ると、俺と入れ替わった。


「行くぞ!! アンナメーダーマン!!」


 リラがノリノリだ。

 だが、アンナメーダーマンは攻撃が出来ない。

 子供達が、人質に取られているからだ。

 んっ、あの子供達はリラの所の子供達だ。

 客席から見えない様に小さく手を振っている子供もいる。

 思わず俺まで手を振りそうになった。


「げぼっ」


 おいおい、リラの奴手加減無しの腹へのパンチだ。

 俺の体は、数メートル浮き上がり、吹飛ばされた。


「きゃあーーーーあああああーーーーー!!!」


 客席から悲鳴が上がった。

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