反転攻勢
「これは酷い……。」
誰かがそう呟く。
辺りに暗い雰囲気が広がる。
ただ3人を除いて……。
「ジーク、とりあえず他の手がかり探す?それとも別の村行く?」
「とりあえず村の被害状況を事細かに記録する事が優先的だ。その後付近の村々を回って行こう。」
「私は斥候の継続でいいですか?」
「次から焼き払いはしないように……。」
「はい……。」
ガイアが提案しジークが補正しヘルエスは注意された。
王国軍はその光景を目の当たりにし司書への畏怖を募らせる事となる。
「何をしてるお前たち。こうなってしまった以上は被害報告書はどのみち提出せねばならんのだ。
村に戻るぞ。」
「「「はっ!」」」
停滞気味の王国軍に激を飛ばし一行は村へ戻ることにした。
建物を出ると結界魔法は魔力切れを起こして破れかけていた。
込めた魔力、時間、防いだ威力、それらを考慮すると張られたのは……。
「6時間前……くらいですね。この結界……。」
「分かった……。」
強い怒り、憤りを感じさせる口調でジークは報告を飲み込んだ。
お昼ごろ、ようやく被害確認が完了し皆でお昼を取る。
といってもヘルエスが斥候ついでに捕まえた猪に塩振って焼いた物と携行食である。
サクッと済ませて近隣の村々を回る。といっても既に被害を受けた村ばかりなので選択肢は3つほどしかない。
そのうちの1つ、サガルデ村へと向かうことになった。
このまま向かえばアガルデ村での犯行時間と綺麗に被さるはずである。
一縷の望みを賭けて向かった先に奴らはいた。
フルアーマーの小隊、目算12、見えた直後に叫ぶジーク。
「ガイア!先行!足止めしろ!」
有無を言わずに飛び降りて影に入るガイア。
(やっぱり身体全身を魔力で覆ってる。何かしら特異的な身体的特性でもあるのかしら?)
そうこう思案していると前方の小隊の動きに変化が見られた。
悶える様な踠くようなそんな仕草を見せ始めたのだ。
だがガイアの姿は一度も現れていなかった。
ジークが腕を掲げそこに巻かれたブレスレットが魔力光を放つ。
「ロク・エレメト・フォル・グラウド・ゼノ・フィルド!」
ジークが残り300メートル手前で速やかに詠唱をこなして土系統の魔法を発動させた。
上級魔法・アースフォール
横並びになっていた小隊丸ごと覆うように大きな音を立てて地面がぱっくりと割れて小隊全員が落ちていく。
そして再度音を立てながら裂けた地面が元へ戻っていく。
だがそれは戻り切らずに止まった。
途中で魔力を引き抜いたのだろう。
奴らの元へ辿り着くと挟まって動けなくなっていた。
1人1人救出し拘束していく。
拘束し終えたら私物を押収し所属先等の確認に入る。
ヘルエスはまた1人斥候役となったのだ。
(魔法使いらしき奴はざっと見た感じ居ない。となると禁書持ちは村人が連行されるのを待ってるはずだ。
前例を見れば森の中になのだがさっきの村より範囲広いし今無理矢理に潜伏場所を探し出しても逃げられるのが落ち。できる事なら捕らえたい。)
脳裏には鏖殺したリカントの顔と村人の血痕の血溜まりが浮かぶ。
助けることの出来なかった悔しさからかヘルエスは必死に頭を巡らせた。
「絶対に見つけ出す……。」
決意の籠った一言を吐いて杖を掲げた。
索敵、それはヘルエスにとってはあまり得意とは言えなかった。
魔法で言えば系統は土、だがヘルエスには適正がなく使えてもせいぜい中級魔法。
広範囲索敵となるとそれは上級魔法である。
当然伸ばして無い系統のため知識不足で即実践は不可能であった。
次に索敵の系統と言えば水、だがそれは水を伸ばし膜を張る。それによって探る魔法だ。だがそんなの使えば1発で即撤退選択される。
残された選択肢……風しかない。
しかしヘルエスには風の索敵用魔法に心辺りは無かった。
思い詰めて空を見上げる。揺れる木々の間から綺麗な星々が顔を覗かせていた。
夜風が吹き抜ける。それは木々を縫うように……言い換えれば木々を避けるように避けるたびに音を鳴らしながら……。
(音か……もうやるしか無い。)
初級魔法・烈風波・30連!
縦3個、横10個の烈風波の小さな球体を同時に出現させ村側から3列順番に発砲。
それはさながら夜風の強風版、木々のざわざわが伝播するように……。
(聞き逃すな。おそらく土魔法か何かで建物構えてる。)
一通り方角に何も無いことを確認し終えると移動を開始して方角を変えて再度行う。
運良く3回目、村から北東方面に1つ、建物を見つけるに至ったのである。
(見つけた。やはり結界が張られている。結界を大きく避けたから案外わかりやすかった。)
見つけた瞬間に館から距離を取る。村から3キロ離れていた。急を要するため500メートルほど距離を取ったら魔法を使う。
初級魔法・烈風波・2連!
両足裏に発動させ瞬発力に合わせて跳躍、木々を抜けた途端に新たな魔法を発動させた。
上級魔法・エアムーブ
風系列の上級魔法、魔法使いの憧れであり目標として名高い飛行魔法である。
身体全身を纏う風と押し出す風で推進力を生み出し飛ぶ。
風切音が少し鳴る……。
1キロほど離れた瞬間に推進力ブーストさせるため新たに魔法を発動。
中級魔法・竜巻風・4連!
竜巻が常に体の後ろに発生して風を送り出しそれにより加速度を増していく。
約2キロを2分ほどで到着することができた。
ヒューーーズドン!地面に剣を突き立て着地しながら声を張り上げて報告する。
「ジーク!アガルデの時と同じ館が1つ!北東方向約3キロ先にありました!」
取り調べ中だったジークは目を見開きそして……。
「取り調べ、防衛を王国軍に一任する!司書の3人で向かえ撃つぞ!」
今ここに反転攻勢が始まる。




